マガジンのカバー画像

世界の音楽情報誌「ラティーナ」

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活を世界中の多様な音楽で彩るために、これか… もっと読む
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てア… もっと詳しく
¥900 / 月
運営しているクリエイター

#沖縄県立芸術大学

[2021.12]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑰】 真珠採りダイバーと癒しの音楽 ―トレス海峡・木曜島―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  「健康、長寿、富、無垢」といった意味が込められた真珠は、フォーマルな場での定番アイテムですよね。太平洋の島々の美しさも、しばしばその輝きにたとえられます(2021年3月号参照)。  真珠の存在は、紀元前3200年頃エジプトで知られていたらしく、クレオパトラが世界最大の真珠を酢に溶かして飲んでみせたとか。王権を象徴する宝石として、大航海時代から帝国主義時代にかけて、中東のバハレーン島、南インドのマンナール湾、セイロン島、ベネズエラか

スキ
3

[2021.11]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑯】 移動・移住・観光―ヴァヌアツの記憶―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  「島の人たちって、身軽に移動するんだなぁ」―さまざまな島を回って、感じることの1つです。こちらは、身勝手な調査者。そのときに会いたいと思う方を訪ねると、「〇〇さんは、××(別の島や外国)に行っている」とよく返ってきます。で、「いつお戻りですか?」と聞くと、大抵は「さぁ、知らない」と。日本に住んでいても、東京出張とか京都へ旅行など、ご不在のことはあるでしょう。しかし、帰る日も知らせないまま出ていくとは。フラッと島を出て、フラッと戻って

スキ
6

[2021.10]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑮】 ローカルとグローバルの結節点―幸せの国・ヴァヌアツのストリング・バンド―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  日本語で「バンド」と聞いたら、まずロックバンドをイメージするでしょうか。他にも、ジャズバンド、ハワイアンバンド、ブラスバンドなどがありますよね。ロックバンド、ジャズバンド、ハワイアンバンドは、音楽ジャンル名+バンド。それに対して、ブラスバンドは、編成楽器+バンドからなります。  「ストリング・バンド string band」も、編成楽器+バンド。ストリングは、弦楽器のことですが、バンドとセットになると西洋クラシックの弦楽四重奏などは

スキ
4

[2021.09]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑭】 カナク、カルドッシュ、日系人 ―複雑な感情渦巻く「メラネシアのフランス」の先住民の踊りと音楽―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  皆さんにとって、「天国にいちばん近い島」は、どこでしょうか? 思えば、私がハワイ以外の太平洋の島を最初に認識したのは、森村桂さん(1940-2003)の同著でした!中学生の時、友人に勧められて読んだのです。1964年、森村さんが一人旅に出た先は、ニューカレドニア。1853年フランスの植民地となり、現在もフランスの特別共同体です。ニューカレドニアという地名が「天国にいちばん近い島」と共に日本中に広まったのは、皆にとって海外旅行が夢だっ

スキ
5

[2021.08]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑬】 ソロモン諸島のパンパイプ・アウ ’au の現代的合奏 ―「呪術性」の継承―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  「あのパンパイプ合奏をもう一度聴きたい」― 期待を胸に、私は2012年ソロモン諸島国ホニアラ空港に降り立ちました。目的は、オリンピックと同年に太平洋諸島各地持ち回りで開催される、第11回太平洋芸術祭 The Festival of Pacific Artsに参加するため。事の発端は、さらにその4年前。第10回太平洋芸術祭主催国のアメリカ領サモアには、次期開催をアピールするためにソロモン諸島国代表団111人が参加し、若い男性グループが

スキ
5

[2021.07]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑫】 アウ ’au が鳴く―ソロモン諸島アレアレ地域のパンパイプのサウンドスケープ―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  ソロモン諸島国って、聞いたことがあるでしょうか? 1978年イギリスから独立した島嶼国で、日本から南に約6,000㎞、パプアニューギニアの東にある約2,500の島々からなります。ソロモン諸島という名称は、1568年お宝を求めてやってきたスペイン人探検家のアルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラ Alvaro de Mendagna de Neira(1542-1595)が、古代イスラエル王に因んで名付けたもの。ソロモン王は知恵者で、神

スキ
5

[2021.06]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑪】前景の音、後景の音 ―パプアニューギニア in 1993 その3―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  私たちが第1日目に泊まった村は、ウォンブン Wonbunだったと後で村人に聞きました。東セピック州に点在する精霊の家(haus tambaran)は、成人男性の神聖な場所。薄暗い中で、男性たちは指孔のない太い竹笛で、高音と低音を交互に吹いて合奏します。その音で森の精霊が呼び込まれ、竹笛に憑依して男性たちに語りかけるそうです。外国人訪問者の私が精霊の家に入ったせいで、怒った精霊が昨晩暗闇の中で騒ぎたてたのだろうか…。  そんな私の思

スキ
5

[2021.05]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑩】暗闇のなかのサウンドスケープ ―パプアニューギニア in 1993 その2―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授) 前回の記事はこちら↓  ポートモレスビー1泊目のリゾートホテルで、オーストラリア人のヴィヴィアン、ドイツ人のブリギッテとディーターの4人で夕食を共にし、1杯のグラスワインに酔って寝入った私は、夜明け前、これまで聞いたことのない不思議な鳥の声で目覚めました。  その日は、国立博物館見学の後、空路1時間でニューギニア島パプアニューギニア領中央部のマウント・ハーゲンに到着予定でした。ポートモレスビーからは、直線距離にして470km少々。

スキ
7

[2021.04]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑨】こうして、ミステリーツアーが始まりました ―パプアニューギニア in 1993―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  本エントリーは、5/5(水)からは、有料定期購読会員の方が読める記事になります。定期購読はこちらから。   パプアニューギニアと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?テレビ番組で紹介される「不思議の国」?それとも、ギニア共和国と名前が似ているのでアフリカ??―パプアニューギニアは、地理的にはインドネシアの東、オーストラリアの北、ニューギニア島の東半分と周辺の島々からなる島嶼国で、文化的にはメラネシアです。  1980年代半ば前後

スキ
8

[2021.03]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑧】太平洋に浮かぶ真珠の首飾りと2つの太陽 ―マーシャル諸島共和国の終わらない戦―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  200万平方キロの広大な海域に、南北に平行するラタック Ratak(日の出)、ラリック Ralik (日の入り)の2つの列島からなるマーシャル諸島共和国。5つの独立した島々と29の環礁に浮かぶ1,200以上の珊瑚島は、「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」と言われる美しさです(写真1)。かつて人々は、独自の海図(スティックチャート、写真2)や星、雲、波、潮、風、鳥、海の色を目印に、西はポーンペイ(2021年2月号)、東はハワイ、南はキリバス

スキ
4

[2021.02]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑦】レモングラスとレモン ―甘い香りを思い出してポーンペイ島で待ち続けた女性のうた―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  前号(2021年1月号)では、チューク環礁の高校生が20年くらい前に作った ≪Cry≫(別称≪50 plus 1≫)という歌をご紹介しました。さわやかな長調のメロディ、C-A-F-Gのコード(I-Ⅵ-Ⅳ-Ⅴ)をレゲエのリズムで刻んだ曲です。素朴な歌詞をよく読むと、クラスメート51人の1人が夏休みを境に去ったというニュースを知って、「僕は赤ん坊を亡くした母のように、彼女を失った男の子のように泣き叫び始めた」「何で君はさよならって言った

スキ
6

[2021.01]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑥】チューク環礁の恋の歌、青春の歌 ―その甘くてエモい、日常のサウンドスケープ―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  チューク(旧トラック)環礁の人々は、ミクロネシアでは「歌や踊りが上手い」と評判。今ではあまりなじみがないかも知れませんが、1922年に現・パラオ共和国のコロール(2020年12月号で紹介)に南洋庁が設置される前、1914年日本海軍が司令部を置いたのがチューク環礁の Dublon島(Tonoas または夏島)でした。さらにそれに先立つ1892年2月、Weno島(Moenまたは春島)に上陸して単独で貿易を始め、首長Manuppisの長女

スキ
9

[2020.12]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑤】パラオ共和国における人と歌の命 ―うたうことで蘇る、財産としての歌―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  歌が上手い人って羨ましいなぁ、といつも思います…どんな島に行っても、みんなとすぐに仲良くなれるんじゃないかなぁって。これまでご紹介したミクロネシア北西部の島々では、グアムのビリンバオトゥーザンなど一部を除いて器楽はあまり発達せず、歌がさまざまな社会的な場面で重要な役割を果たしてきました。  今回取りあげるパラオ共和国では、かつては、村の集会に先立って年長の男性が相応しいジャンルの歌をうたい、参加者全員が唱和するしきたりがありました

スキ
4

[2020.11]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ④】アンガウル島から消えたサウンドスケープ ―リン鉱石採掘場での異文化接触と行進踊りの拡散―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  本連載のキーワード「サウンドスケープ」は、カナダ人作曲家M.シェーファー(1933〜)による造語で、「音の風景」を意味します。「春はあけぼの…」で始まる清少納言の『枕草子』に、「秋は夕暮れ…日入りはてて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず」と、自然の音を愛でる一節がありますよね。古くから音を愛でる文化が育まれた日本だからこそ、1980年代半ば以降、サウンドスケープの考え方が受け入れられたのでしょう。  1960年代北米のエコ

スキ
8