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Web版 2023年2月

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#宮沢和史

[2023.2] 【島々百景 第80回】 ブエノスアイレス② アルゼンチン

文と写真:宮沢和史  南米の国土の広い国々の地図を見ていると、長年培った日本的な “縮尺感覚” が当てはまらずに自分自身のサイズを見失うような感覚によく落ち入る。例えば、川沿いにいくつか集落があったとして、経験値から川幅を参考に集落間の距離を推測してみようとするものの、実際はその何倍もの距離だったなんてことがよくある。  アルゼンチンのブエノスアイレス市は海に面しているように見えるがそうではなくてラ・プラタ川の河口に位置している。そこから海水浴をするために有名なビーチであ

[2023.2] 【書評】 大石 始 『南洋のソングライン―幻の屋久島古謡を追って』

文●今福龍太(文化人類学者)  屋久島に伝わる古謡の幽かな響き。その、南の海の島々を結ぶか細い音の糸の謎めいた曲がりくねりを丹念にたどりながら、人々よって守られてきた伝承の、無数のささやき声に静かに聞き耳をたてる旅人。そんな著者の「旅人」としての真摯さと謙虚さにまず印象づけられる。  旅はたしかに現代人にとってはかけがえなき自己探求の手段だ。だがその探求は、自分が何者であるかを知るだけでなく、何者でないのかを知り、さらには自分のなかに潜む得体の知れない他者を見出すことでも