映画『カリプソ・ローズ』を配給するseletor HEMO氏に訊く
文●花田勝暁(編集部)
今年4月27日に81才の誕生日を迎えた。80才を迎えてもなお第一線に立ち続ける女性カリプソ・シンガーのカリプソ・ローズ。近年の活躍もめざましく、2019年には世界最大級のアメリカの野外音楽フェスティバル、コーチェラ(COACHELLA)に出演を果たし、同フェスティバル史上最年長でパフォーマンス。パワフルなステージに異国の若者たちを驚かせ熱狂させた。
女性の権利の活動家でもあるカリプソ・ローズ。同フェスティバルでは、自身が受けてきた女性差別の経験から、「世界中のすべての女性のために立ち上がり、一緒に戦い続ける」とも語った。
そんな彼女の70才を記念して制作された貴重なドキュメンタリー『カリプソ・ローズ』が、現在公開中だ(渋谷ユーロスペースでの上映は5月14日まで。以降、名古屋、京都、大阪、神戸、横浜、沖縄を巡回予定。詳しくはこちらから確認ください)。原題は「Calypso Rose: Lioness of the Jungle」で、監督はカメルーン出身のパスカル・オボロ(Pascale Obolo)。カリプソやファミニズムをテーマに短編映画を撮って評価されてきたパスカル・オボロが、満を持して制作した初の長編ドキュメンタリーが本作『カリプソ・ローズ』だ。
今回、同作は日本で配給するLIME recordsのselector HEMO 氏に、今作の上映に関して話をうかがった。
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── 映画配給の仕事をすることになった経緯と、配給した作品について教えてもらえますか?
HEMO 元々CISCO REGGAE SHOP で働いていたこともあり、カリブ海の英語圏、ジャマイカやトリニダード・トバゴの音楽を日本に紹介するレコード会社を営んでおります。昔からの取引先が映画の製作をはじめたということでご縁をいただきました。
最初に映画の配給をした作品が楽器スティールパンの創世記と今を描いたドキュメンタリードラマ映画『スティールパンの惑星』になります。
── 本作、映画『カリプソ・ローズ』との出会いは?
HEMO カリプソ・ローズさんとマネージャーさんよりお話を聞き、映画を知りました。
── カリプソ及び、カリプソ・ローズの音楽との出会いについて教えてもらえますか?
HEMO カリプソはレゲエのセレクターをしていた流れで知りましたが、そこまで詳しくはありませんでした。カリプソ・ローズさんは「Fire In Your Wire」という曲を多くのレゲエアーティストがカバーしていたこともあり
知りましたが、トリニダード・ドバゴへ行くようになり多く耳にするようになり、ファンとなり、コンサートは毎年行くようになりました。
selector HEMO 氏(前列左)とカリプソ・ローズ(前列中央)
── この映画のどんなところに惹かれましたか?
HEMO どんな時も自分がやりたいことのために苦難を乗り越えてきたローズさんの姿勢、「生きているうちにやりたいことはやりなさい!」というメッセージです。
── この映画を配給するにあたって、力を入れたところはありますか?
HEMO カリブ海にご縁のない方など多くの人に見ていただけるようにするにはどうしたら良いかということを考え、行動することです。
カリブ音楽関係者だけでなく、以前お世話になったミュージシャンの方々などに連絡してコメントをいただいたり、飛び込みで新聞社や雑誌にコンタクトしたり、とにかくなるだけ広く届けられるよう行動しました。まだまだ足りませんが......。
── 映画『カリプソ・ローズ』の字幕翻訳における苦労はありましたか?
HEMO 字幕は専門家にお願いしたのですが、パトアや現地のなまりやカーニバルの専門用語など、その方々でもなかなか難しい部分がありました。
── 配給作品の会場には極力いるようにしている印象を受けますが、どうしてでしょうか。
HEMO 会場にいて、来場いただける方とお話して、貴重な感想や意見をいただいたり、可能な限り質問などに答えられたらと思っています。また映画のオリジナルグッズ販売にも力を入れています。
── このような社会状況での上映になっていることに関して、どのようにお考えですか? 率直に思っていることを教えていただけませんか。
HEMO 映画、音楽、芸術は生活の一部であるので、コロナ対策をきっちり行い、上映を続けていきたいと思っています。本来はライヴ、写真展などのイベントやトリニダードのラム酒、カクテルを飲みながら映画を楽しんでいただけるよう企画をしていましたが、そちらは残念ながら中止となりましたが、また再開できるようになれば行いたいと思います。
本誌のプロデューサー、宮沢和史も本作にコメントを寄せています。
この作品を観た者は気づくはずだ 太陽はすべてのものに光を与えるために 身も心も燃やし続けているということを… 宮沢和史(シンガーソングライター)
(ラティーナ2021年5月)
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