[2024.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊸】 Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre 『Live at Grasshaus』
文:中原 仁
現在、ファースト・アルバム『SIM SIM SIM』のサイクルを終える国内ツアー中のバーラ・デゼージョ。“活動停止”、“解散” とは名言していないが、これがファイナル・ツアーで、4人のメンバーはソロやバンドの活動に戻るのだろう。そうなることは漠然と予期していたので、メンバーの一人(ルーカス・ヌネス)を欠いた編成ながら昨年、初来日が実現し、FESTIVAL FRUEZINHO2023で繰り広げた素晴らしいライヴ・パフォーマンスを生体験できたことは大きな喜びだった。
『SIM SIM SIM』は、2022年の第23回ラテン・グラミーで「Best Portugues Language Contemporary Pop Album」を受賞。2023年のPrêmio da Música Brasileira(ブラジル音楽賞)でMPBベスト・グループに選出された。日本でも「2022年ブラジル・ディスク大賞」一般投票第1位、音楽関係者投票では1位と1点差の2位に選ばれた。
2022年11月、ラテン・グラミーの授賞式に出席した2日後、ルーカスを除く3人(ゼー・イバーハ、ドラ・モレレンバウム、ジュリア・メストリ)が、ニューヨーク・ブルックリンで行なったアコースティック・ライヴが2023年11月にデジタル・リリースされ、LPも限定盤で発売された。
ルーカス不参加の理由はバーラ・デゼージョの日本公演と同じで、彼が共同プロデューサーをつとめバンド・メンバーとなったカエターノ・ヴェローゾの『MEU COCO』コンサートのスケジュールが先に入っていたからだろう。このライヴ・アルバムは3人の共同名義だが、実質的にバーラ・デゼージョ・マイナスワン。曲も過半数が『SIM SIM SIM』収録曲だ。
ここから先は
世界の音楽情報誌「ラティーナ」
「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…