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[2021.1]連載 レオナルド・ブラーボ【リズムで旅するアルゼンチン音楽⑤クージョ地方編】

文●レオナルド・ブラーボ

Text By Leonardo Bravo

 クージョ地方はアルゼンチン西部サンフアン州、メンドーサ州、サンルイス州を含む。地理的には南米大陸最高峰アコンカグア(6960メートル)など、アンデス山脈から荒野まで多様性に富む。ワインの産地としても知られ、クージョ地方の多くの歌詞がブドウ畑やワインをとりまく世界に捧げられているのも特徴となっている。

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南米大陸最高峰アコンカグア山(6960メートル)

 クージョ地方の音楽のルーツはスペインにあり、原住民の影響は接するボリビアとチリ、アルゼンチン北部を除いてほとんど残っていない。

 1560年に最初に入植してきたスペイン人達はビウエラを片手にロマンセ・エスパニョールを歌い、現在のクージョ地方の歌の基礎を築いていった。歴史家が描いたこの地方の土着の音楽は常にスペイン音楽であった。富裕層はその伝統を維持し、中流層はヨーロッパ人が残した記憶に固有の味を加えてオリジナルの音楽を構築していった。

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 クージョの音楽は日々の生活と密接な関係があり、1日中流れているのが常で、この地方でトナーダとクエカが持つ重要性は注目に値する。

 これらの音楽はビウエラから直接的な影響を受け、ギター、レキント、ギタロンのみの編成で演奏され、深みや音色の多彩さが生み出される。ソロギターにおける驚異的なヴィルトゥオーゾぶり(常にピックを使用)、デュオ、トリオ、クアルテートでのハーモニーの編曲も特徴となっている。クージョ地方の音楽の持つ編成の色彩やハーモニーは独創的で他のアルゼンチン音楽と一線を画している。


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