[2021.03]連載 レオナルド・ブラーボ【リズムで旅するアルゼンチン音楽 タンゴ編
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[2021.03]連載 レオナルド・ブラーボ【リズムで旅するアルゼンチン音楽 タンゴ編

文:レオナルド・ブラーボ

Text By Leonardo Bravo

タンゴ: 歴史

1880年: 始まり

1900年: グアルディア・ビエハ / 最初のタンゴ

1920年: オルケスタ・ティピカ / カルロス・ガルデル

1940年: グアルディア・ヌエバ/ アニバル・トロリロ

1960年: 革命 /アストル・ピアソラ

現在: タンゴブーム/ 発展

 本シリーズで6回においてアルゼンチンポピュラー音楽を紹介してきた。一地域の音楽ではなく、ブエノスアイレスというひとつの街の音楽であるにも関わらず、世界で最も知られているのがタンゴであることは確実である。

 タンゴの歴史は古くなく、他のアルゼンチン音楽とは誕生から発展までが異なるため、研究は長く、特殊になりがちである。今回は歴史的瞬間やギターがタンゴの発展に寄与してきた役割に焦点を当てながら紹介したい。


●1880年代

 歴史家の意見ではタンゴがブエノスアイレスやコルドバ、ロサリオ郊外において音楽が混淆し始めたのが1880年頃であることで一致している。スペインの雰囲気を保ちながらメロディーはクリオージョ、また黒人音楽の影響を受けて自らの色を形成していくようになった。その後主にイタリアのカンツォーネやオペラ・アリアのメロディーを中心とするヨーロッパからの影響も受けて一つとジャンルとして確立するようになる。

 都市部の場末ではデュオやトリオ編成が主で、フルート、バイオリン、クラリネットに常にギター伴奏がついていた。その後クアルテート、キンテート、セステートという編成へと拡大されていく。

●1900: グアルディア・ビエハ / 初期のタンゴ

 この頃から1920年まではグアルディア・ビエハと呼ばれている。この頃の特徴としては非常にシンプルで徐々に構造、色彩、楽器編成が豊かになっていく。

アンヘル・ビジョルド

ビセンテ・グレコ・オルケスタ・ティピカ・クリオージャ

 1917年頃までは楽器編成はギター、フルート、バイオリンであり、その後バンドネオンがドイツからブエノスアイレスの港に持ち込まれることとなった。この年は大きな変革の年であり、ピアニストのロベルト・フィルポがハーモニー楽器からコントラバスがギターと代わってオルケスタ・ティピカ・クリオージャ楽団を編成した。ギタリストの多くは職を失い、コントラバス奏者へと転職するようになった。

 一方でギタリストたちは現在の独特なコントラバス奏法を生み出した。楽器の共鳴部分を用いるパーカッシブな「カンジェンゲ」や弓で弦を叩く「エストラパタ」奏法も当時の名残である。

 ギタリストは歌手の伴奏で重要な役割を担うようになった。この頃からギターのデュオ、トリオ、クアルテート編成も現れるようになる。

フアン・マグリオ・パチョ・オルケスタ・ティピカ

 タンゴにおけるギターは歌手の伴奏としての顔を長年持つこととなり、受け入れられていく。珍しい例外を除いてほとんどのギタリスト達が直感を元に技術を磨いていった。

主なアーティスト:アンヘル・ビジョルド、ビセンテ・グレコ、ロベルト・フィルポ、カルロス・ガルデル

●1920 (グアルディア・ヌエバ)

1924年にフリオ・デ・カロがセステート・フリオ・デ・カロを結成。この時期は音楽家の第二世代にあたり音楽的素養によりタンゴを音楽的により高いレベルへと引き上げる。セステート(六重奏)の時代とも呼ばれ、音楽的なクオリティーとオリジナリティを競いあっていた。

 1935年にはリスナーよりもダンサー向けに制作されるようになり、やや音楽としての勢いが失われる。1937年にはフアン・ダリエンソが現れ、リズミカルな楽団がダンサーにとって魅力となり、タンゴは人気を博していく。

カルロス・ガルデルとギター

アグスティン・マガルディとギター

フリオ・デ・カロ・セステート

フアン・ダリエンソ楽団

エルビノ・バルダロ・セステート

この時代の主なアーティスト:フリオ・デ・カロ、フランシスコ・デ・カロ、オスバルド・フレセド。この頃のギターは歌手の伴奏だった。

●1940 -50 (黄金時代)

 この時代は楽器奏者だけでなくソロ歌手、歌詞が最盛期を迎える。30年代末から器楽的な成長を遂げる必要性が叫ばれ始め、演奏される場所の発展に伴い、ヴィジュアルにも訴え、サウンドも豊かな音楽が求められるようになる。バンドネオン4つ、バイオリン4つ、ピアノ、コントラバスというオルケスタ・ティピカ編成もこの頃生まれた。ギターは場所が限られた場所で歌手の伴奏を務め続けた。

ネリー・オマール

オルケスタ・デ・オスバルド・プグリエーセ

 ロベルト・グレラによりタンゴギターは頂点を極めた。伴奏からメロディー楽器としてグレラはタンゴにおける新たな奏法を生み出し、楽器演奏に光を当てた。新しいハーモニー、*フラセオ、ジャズのハーモニーを用いて新たな奏法を生み出していった。グレラはギターによるインストグループを結成し、低音部は*ギタロン・クリオージョに委ねた。

*フラセオ:タンゴに特徴的な音楽的くずし

*ギタロン・クリオージョ:ギターと同じ6弦だが低音が特徴的な楽器。

この時代の主なアーティスト:アニバル・トロイロ、オスバルド・プグリエーセ、ロベルト・ゴジェネチェ、エドムンド・リベーロ

●1960: 革命 /アストル・ピアソラ

 タンゴにおける新たな奏法が研究され、新たな時代が築かれてきた。この時代、最も傑出しているのがオラシオ・サルガン、エドゥアルド・ロビーラ、アストル・ピアソラだ。

 エレキギターは1955年からタンゴにも導入され始め、ピアソラ率いるオクテート・デ・ブエノスアイレスでジャズギタリストだったオラシオ・マルビシーノが使用した。

ロベルト・グレラ&アニバル・トロイロ

ロベルト・グレラ『ラ・ギターラ・デル・タンゴ』クアルテート・デ・ギターラス・イ・ギタロン・クリオージョ

アストル・ピアソラ・オクテート・ブエノスアイレス

オラシオ・サルガン&ウバルド・デ・リオ

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