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最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2020年9月|20位→1位まで【無料記事 聴きながら読めるよ!】

 ワールドミュージックの最前線へ! e-magazine LATINAの編集長がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。

 今回は、20位から1位まで一気に紹介します。

文●花田勝暁

※この記事は、登録なしで全て読める無料記事です。

※レーベル名の後の()は、先月の順位です。

 「Transglobal World Music Chart」は、世界各地のワールドミュージック専門家の投票で決まっているワールドミュージックのチャートです。主な拠点がヨーロッパなので、ヨーロッパに入り込んだワールドミュージックが上位にランクインする傾向があります。


20位 Black Umfolosi · Washabalal’ Umhlaba / Earth Song

レーベル:ARC Music (27)

 ブラック・ウムフォロジ(Black Umfolosi)は、1982年3月に学校の同級生で結成されたジンバブエのコーラス・グループ。祖国南部アフリカの伝統的な歌と踊りにインスパイアされた音楽を披露してきた。南部アフリカのングニ語を話す人々の伝統的な「インブーブ ‘Imbube’」というスタイルのコーラス作法に則ってアカペラで歌っている。南アフリカ共和国の Black Umfolozi 川に由来し、この川がこの素晴らしい風景の永久的な特徴であるように、永久的な遺産として彼らの歌が世代から世代へと歌い継がれていくようにという願いが込められている。
 このアルバムは15枚目のアルバム。6人の歌声が結晶のようなハーモニーを奏で、世界にポジティヴなメッセージを発信する。人生の喜びを歌い、生活を祝福し、自分たちが持っているものに感謝し、それを大事にするようにという優しい愛のメッセージが込められたアルバム。

 少し古いけれど、ライヴ映像は↓の映像で。清らかな精神性と、南部アフリカの伝統的なダンスがミックスされたエネルギーに満ちたステージ。


19位 Las Áñez · Reflexión

レーベル:Las Áñez (36)

 ラス・アニェス(Las Áñez)は、コロンビアのボゴタ出身の双子によるヴォーカル・デュオ。伝統的なフォルクローレと、電子楽器を、半ばアバンギャルドな自分たちの独自のやり方でミックスし、ラテンアメリカとヨーロッパで支持されてきた。ミニマルなパーカッションや、効果的に取り入れられる様々な小型な楽器、ループの使用が彼女たちの音楽の特徴。彼女たちの3rdアルバムとなる本作では、Kevin Johansenや、El Tuyero Ilustradoをゲストに迎た。楽曲は、より内省的に。アコースティックな音と電子音のバランスの良いサウンドで、聴くものを様々な文化や様々な土地へ運んでくれる。


18位 Alhousseini Anivolla & Girum Mezmur · Afropentatonism

レーベル:Piranha (23)

 日常を切り取ったような平和なジャケットだが、中身は、アフリカを代表するアーティストが集結した強力なアルバム。
 ニジェール出身のギタリストのアルフーセイニ・アニヴォラ(Alhousseini Anivolla、 “砂漠のブルース” の流れを汲むバンド、エトラン・フィナタワなど)と、エチオピアのジャズ・ギタリストのジラム・メズムール(Girum Mezmur 、エチオピアの首都アディスアベバの音楽シーンの大スターのマフムード・アーメドのプロデュースなど)が、2005年にフェスティバルで意気投合。このプロジェクトがスタート。
 バンドは、6人編成で、上記の2人以外のメンバーは、ミザーレ・レジェッセ(パーカッション)、ハブタム・イエスハンベル(エチオピアのヴァイオリン=マシンコ)、アンテネ・テクレマリアン(リラのような 5 弦ベース=クラ)、アイエル・マモ(マンドリン、メンバー最年長の 78 歳)というメンバー。
 タイトルの「Afropentatonism」の通り、5 音階のペンタトニックをテーマに、ナイロビでのコンサートをライヴ・レコーディグした音源が本作。


17位 BraAgas · Bestiále

レーベル:Indies Scope (-)

 チェコの女性中心のトラッドバンド。当初は女性4人のグループとしてスタートしたが、途中からベース担当で男性が加わり、よりパワフルなサウンドになった。それぞれが演奏も担当する(演奏には多くの伝統楽器を含む)女性メンバー4人による美しく強力なハーモニーが特徴のグループで、東欧フォークを中心とした欧州各地のトラッドを、時にダイナミックに、時にノスタルジックに奏でる。本作は、ベストアルバムで、全編をリミックスし、年代順に収録。キャッチーでパワフルな楽曲の連続に圧倒される。


16位 La Banda Morisca · Gitana Mora

レーベル:La Banda Morisca (30)

 スペインのバンド、ラ・バンダ・モリスカ。アンダルシアのカディスが活動拠点。現在の編成では、ウード、サックス、ヴァイオリン奏者もバンドメンバーにいる独特の編成。
 バンド名の「モリスコ(モリスカ)」は、キリスト教徒化してイベリア半島に残留したモーロ人(北西アフリカのイスラム教教徒)のことだ。アンダルシアと南地中海からの影響(特に、セビージャのフラメンコ、アンダルシアのロック、マグレブ[北西アフリカ諸国]の音楽)を融合した音楽を創造している。


15位 Brader Mûsikî · Herim Kuda

レーベル:Terp (-)

※アルバムの試聴リンクは見つけられませんでした。

 トルコのアヴジラ(Avcılar)出身、1958年生まれ(現在62才)のクルド人シンガーソングライター。映画への出演も多い。
日本語だけでなく英語でもあまり情報がないが、イラクで10万人のためのコンサートや、トルコのテレビでの大オーケストラのリーダーとして出演しているらしい。自作自演のシンガーだが、その詞は非常に詩的で、抑圧に対する深い感情、残酷な不正に向かうメッセージを歌い、クルド人たちに希望と力を与えているという。


14位 Matthieu Saglio · El Camino de los Vientos

レーベル:ACT Music (10)

 ドイツに本拠を置くヨーロッパを代表する重要ジャズレーベル「ACT」からのリリース。フランス生まれで、2002年よりバルセロナに拠点に活動するチェリストのマチュー・サグリオ(Matthieu Saglio)のソロ作は、コロナ禍の中、製作が進めたれたアルバムだ。マチューが録音したチェロの音源を、世界中の名手たちのところへ最低限の指示だけを添えて送り、様々な音楽家が演奏を重ねた。アルバム・タイトルの「風の道」が象徴するように、世界各地の風のそよぐ風景が立ち上がる。まるで、マチューがチェロ1つ持って旅をし、世界の音楽家と共演して録音したかのようだ。ゲスト一覧は下記に。

El Camino de los vientos With :
Nguyên Lê (guitar)
Nils Petter Molvaer (trumpet)
Carles Benavent (bass)
Vincent Peirani (accordion)
Steve Shehan (percussions, piano, bass)
Bijan Chemirani (percussions)
Léo Ullmann (violin)
Camille Saglio (voice)
Ricardo Esteve ( flamenco guitar)
Isabel Julve (voice)
Abdoulaye N'Diaye (voice)
Teo, Marco, Gael Saglio Pérez (vocals) 

 ↓musica-terraさんが、本作に関する詳細なレビュー記事を書かれています!


13位 Sidi Bemol · Chouf!

レーベル:CSB Productions (-)

 在仏カビール系アルジェリアンのシンガーソングライターで、風刺画家でもあるシディ・ベモル。本名はオシーヌ・ブーケラ。ORCHESTRE NATIONAL DE BARBES(ONB)のリーダーであるユセフ・ブーケラの兄だ。
 本作は、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスというシンプルな4ピースのバンド・スタイルが基本で、グナワ的ニュアンスを帯びるアルジェリアン・ロックで攻める。ビデオ・クリップからも、当地でのカリスマぶりがうかがえる。本作には、ゲストとしてマルセイユのマンドーラ名人、ハキム・ハマドゥーシュ(ラシッド・タハ、ムース&ハキム他)が参加している。

↓国内盤あります。


12位 Ghalia Benali & Romina Lischka · Call to Prayer

レーベル:Fuga Libera (6)

 チュニジア出身の女性シンガーソングライターのガリア・ベナリ(Ghalia Benali)と、スイスで学んだヴィオラ・ダ・ガンバの奏者のロミーナ・リシュカ(Romina Lischka)の共演作。ロミーナは、北インド古典歌唱も学んでいて、アルバムではガリアが中心ながら、2人とも歌声を披露している。
 楽曲はガリアのペンによるものだが、2人だけの演奏だからこそ、近代ヨーロッパ〜アラビア音楽〜インド音楽の音楽の要素が無限に広がり、音の粒子に引き込まれて時空を越えてしまうような気持ちになる。

(※ヴィオラ・ダ・ガンバ(イタリア語:viola da gamba)は、16世紀から18世紀にヨーロッパで用いられた擦弦楽器。「ヴィオラ・ダ・ガンバ」とは「脚のヴィオラ」の意味で、楽器を脚で支えることに由来する。18世紀後半にいったん完全に廃れてしまったが、19世紀末以来の古楽復興運動により復活を遂げた)


11位 Coreyah · Clap & Applause

Plankton Music (-)

 「韓国の伝統音楽と現代のポピュラー音楽の垣根を破る新しい音楽」を掲げ活動する6人組バンド、Coreyah。3人が韓国の伝統音楽を演奏、1人はヴォーカルで、1人はギター、1人は世界中のパーカッションを演奏する。2010年のデビュー以来、新しいスタイルの韓国音楽を創造してきた。
 ツアーが中止となり、コロナ禍の中で制作された本作『Clap&Applause』で4作目。「Korea(韓国)」と同じ発音であるバンド名「Coreyah」に、その志の高さも現れている。ポピュラー音楽として広く試聴されているあの有名な米国npr(National Public Radio)のTiny Deskセッションにも出演していて、彼らの活動は確実に世界に広がっている。


10位 Shiran · Glsah Sanaanea with Shiran

レーベル:Batov (11)

 2018年にアルバム『S H I R A N』でデビューした女性シンガーソングライターのシーラン(S H I R A N)の2作目。今も紛争が続くアラビア半島南端部の国、イエメン出身で、現在はイスラエルのテル・アヴィヴで活動する。本作では、イエメンとのつながりをさらに掘り下げ、ウード、カワラ、カヌンなどの弦楽器、管楽器、打楽器によるアコースティックな演奏をバックに、イエメンの伝統的な歌に親しみやすくも新しい命を吹き込んでいる。シンセサイザーや西洋のポップスを意識したプロダクションは影を潜め、前作よりも、アコースティックな響きが基調なアルバムとなった。リードシングル曲の「Ya Banat Al Yemen」は、イエメンの結婚式でよく聞かれる曲。疾走感のあるパーカッションのリズムに乗って、シーランが力強いコーラスと歌う。


9位 Mehmet Polat · The Promise

レーベル:Aftab (18)

 アムステルダムを中心に活動しているウード奏者。アフリカからインド、ペルシャからバルカン半島、現代音楽からジャズまで、様々なジャンルの音楽を、演奏する。彼がリーダーを務めるMehmet Polat Trioや、Mehmet Polat& Embracing Colours といったグループでのアルバムも多いが、本作は2作目となるソロ名義のアルバム。


8位 L’Attirail · Footsteps in the Snow

CSB Productions (-)

 1994年結成のフランスの器楽アンサンブル、ラティライユ(L'ATTIRAIL)。ギター、トロンボーン、バンジョー、クラリネット、フルート、モノコード、ドラムス、ベース、アコーディオン、キーボードなどのアンサンブルで、どこかトボけて、どこか懐かしいストレンジ・インストゥルメンタル・ミュージックを奏でる。
 今月の13位で紹介したシディ・ベモルが3曲でゲスト・ヴォーカルで参加。↑のクリップの曲も、シディ・ベモル参加曲。
 ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネ、3ムスタファズ3、レ・ネグレス・ヴェルト、ゴラン・ブレゴヴィッチ、パスカル・コムラードなどから音楽的影響を受けた。

↓国内盤あります。


7位 Trio Tekke · Strovilos · Riverboat

レーベル:World Music Network (5)

 ジュラ奏者、アントニス・アントニウを中心に2005年末にロンドンで誕生したグループ、トリオ・テッケ(Trio Tekke)。地中海東部にあるキプロス共和国出身のメンバーにより結成され、通称〈ギリシャのブルース〉と呼ばれ、現在のギリシャ大衆音楽のルーツとも言われている〈レンベーティカ〉を独自のアレンジで刷新する。過去15年間の音楽の旅の中で、世界中を旅し、インスピレーションを受け続け、かつてないほどにカラフルなサウンドの新作が完成した。

↓国内盤あります。


6位 Danyèl Waro · Tinn Tout

レーベル:Buda Musique (2)

 1955年にインド洋レユニオン島で生まれたダニエル・ワロ(Danyèl Waro)は、レユニオン島の伝統音楽マロヤの台頭に貢献し続けてきてた非常に影響力のある音楽家、詩人。フランスでの人気も高い。 パーカッションのみの伴奏に、大編成のコーラスとダニエル・ワロとのコール・アンド・レスポンスが聴きどころ。御年65歳のワロの力強いヴォーカルが、心に迫ってくる。


5位 Khusugtun · Jangar

レーベル:Buda Musique (-)

 楽器を演奏しながらホーミーでポリフォニックなコーラスを聴かせるのは、2009年にモンゴルで結成された男女6名のグループ、フスグトゥン(KHUSUGTUN)。モンゴル語で「フスグ(荷車)で移動する遊牧民」という意味を持つ彼らは、モリン・ホールやドンブラ、口琴といった伝統楽器を巧みに操りながら、複数のメンバーが喉歌ホーミーでコーラスを聴かせる。
 フランスのBUDA MUSIQUE からのリリースとなる本作が世界向けのデビュー作。モンゴル伝統音楽の新潮流を、奇跡のように一気に革新する要注目のグループだ。

↓国内盤あります。

↓実演動画みたくなりますよね!


4位 Oumou Sangaré · Acoustic

レーベル:Nø Førmat! (7)

 女性歌手の宝庫といわれるマリのワスル地方出身のシンガー、ウム・サンガレ(1969年生まれ)。フランスの「 NO FORMAT」からリリースされた新作のタイトルは『ACOUSTIC』。演奏は、ギター、ンゴニ、鍵盤という極めてシンプルなアンサンブルの上で、サンガレがリード・ヴォーカルをとる。二人の女性バックヴォーカルの存在感も大きい。現代の一般的な録音と異なり、アンプなし、再録音なし、ヘッドフォンなしというスタイルで録音したことで、楽器の演奏者の人柄まで伝わってくるような温かなサウンドとなっている。

3位 Bab L’ Bluz · Nayda!

レーベル:Real World (1)

 マグレブ(リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど北西アフリカ諸国の総称)の中心が脈打っているかのような重厚なグルーヴを奏でるパワーカルテット、バブ・ルブルーズ(Bab L' Bluz)。グナワ音楽(スーフィズムとイスラム以前のアフリカの伝統音楽を混ぜた音楽)をオマージュするために2018年にモロッコのマラケシュで結成されたバブ・ルブルーズの音楽は、古代と現代、ファンキーでリズミカルなアラビア語の歌詞、ソウルフルで舞い上がるようなボーカル、重厚なグルーヴが特徴。彼らの全く新しいサイケデリック・グナワ・ブルースロックは、ワールドミュージックの新たな扉を開いている。


2位 Mulatu Astatke & Black Jesus Experience · To Know Without Knowing

レーベル:Agogo (9)

 アメリカに渡りバークレー音楽院でジャズをはじめとした様々な音楽の技法をマスターすることで、自らのルーツであるエチオピアを軸にした独自のスタイル “エチオ・ジャズ”を生み出した→生きる伝説、ムラトゥ・アスタトゥケ(MULATU ASTATKE、主な楽器はビブラフォンとコンガ)の7年ぶりの新作。
 本作では、「家族のようなお気に入りのバックバンド」ムラトゥが言っている、グローバルなファンクバンド「Black Jesus Experience」を迎えた。同バンドは、様々なバックグラウンドを持つ12人のメンバーにより、オーストリアで結成されたグループ。バンドの演奏はパワフルかつジャージー。官能とグルーヴに溢れる魔術的な新たなムラトゥ・アスタトゥケの世界が完成した。

↓国内盤あります。


1位 Mahsa Vahdat · Enlighten the Night

レーベル:Kirkelig Kulturverksted (4)

 2019年発表の前作は、クロノス・クァルテットとのアルバム『Placeless』。ペルシャ(イラン)出身、イランでよく知られたアーティストで、クラシックおよびワールドミュージックの範疇で活動する女性ヴォーカリストのマーシャ・ヴァダット(Mahsa Vahdat、1973年テヘラン生まれ)の新作『Enlighten the Night(夜を照らす)』。彼女が長年にわたって開発してきたペルシャ/イランの古い伝統的民俗音楽の唱法で、現代ペルシャの詩に合わせて作曲されたクラシカルなメロディーを、世界が暗闇に包まれている時代に、人類の希望を込め、歌う。



(ラティーナ2020年9月)

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