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[2020.04]沖縄の四季を詩情豊かに伝える 交響組曲「沖縄交響歳時記」 琉球交響楽団を指揮した大友直人に聞く

文●北中正和 text by MASAKAZU KITANAKA

  琉球交響楽団が、沖縄の人気曲を集めた『琉球交響楽団』以来15年ぶりに、新作『沖縄交響歳時記』を発表した。「かぎやで風」「谷茶前」「てぃんさぐぬ花」「唐船どーい」「久高」など、沖縄民謡や古典曲を素材にした清冽なオーケストラ組曲だ。作曲者は『題名のない音楽会』『SONGS』などで知られる萩森英明。その指揮・音楽監督をつとめる大友直人に話を聞いた。

── 琉球交響楽団との関わりから教えていただけますか。

大友直人 N響の歴史に残る名トランペット・プレイヤーの祖堅方正さんは、イギリスのフィリップ・ジョーンズに学んで、室内楽のブラス・アンサンブルを日本に紹介された方ですが、沖縄に県立芸術大学が新設されたとき音楽学部の教授になられた。その祖堅さんからの依頼で、94年に学生の小さいオーケストラを指揮しました。それが発展して琉球交響楽団構想ができ、最初の演奏会をやったのが2001年です。財政的にはとても厳しいんですが、なんとかやりくりしながら20年間続けられたのは沖縄の人たちの情熱と粘り強さのおかげですね。


── 琉球交響楽団の特徴は?

大友直人 オーケストラはクラシックの名曲をやるのが責務ですが、地元に密着した新しい作品作りも大事なので、これまで委嘱作品を10曲くらい、沖縄在住の作曲家の方の作品を中心に演奏してきました。今回はせっかく新しいアルバムを作るんだから、インパクトの強い質の高いものにしようということで、5年くらい前の委嘱作品『航海記』の評判がよかった萩森英明さんに作曲を依頼しました。テーマは最初リスペクト・レコードの高橋さんから沖縄の四季はどうですかと言われて、沖縄の四季はそれほどはっきりしないけど(笑)、年間行事はたくさんあるから、それにちなんだ組曲にしようということで、最終的には6楽章になりました。録音中も最後までディスカッションしながら出来上がったのがこのアルバムです。

琉球交響楽団録音2019

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