見出し画像

[2022.1] 決定! ブラジルディスク大賞2021

 本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、26回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2021年ブラジル・ディスク大賞」。一般投票(総数3,376票)、関係者投票のベスト10が決定しました。

 日本での人気が高い複数のアーティストが下半期に新作を発表したこと、コロナ禍でリリースが激減した2020年に比べてリリースが一気に増えたことなども手伝い、おかげさまで一般投票数は2016年~2020年の5年間を上回った。投票に参加してくださった皆様、ありがとうございました。

 関係者投票は19名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。

 関係者投票の順位は参考にとどめ、選者ごとのベスト10を通じ、ブラジル音楽に対する多様な価値観を読み解いていただきたい。

【一般投票結果】

<1位>
マリーザ・モンチ「ポルタス」

Marisa Monte「Portas」
(363票)

(SONY MUSIC LABELS / SICP 6401)

 女王マリーザ・モンチ、スタジオ録音のオリジナル・アルバムとしては10年ぶり、7月にデジタル・リリースされ11月には日本盤CDもリリースされた新作が、2位と20票弱の差でブラジル・ディスク大賞史上最多となる、6度目の1位を獲得した(トリバリスタスの2作品を含む)。タイトルの意味は「扉(複数形)」。約20年ぶりにアート・リンゼイと共同プロデュースした曲から、ロス・エルマーノス出身のマルセロ・カメーロとの初コラボ、トリバリスタスの盟友カルリーニョス・ブラウンの息子シコ・ブラウンと共作した曲など多彩。

<2位>
カエターノ・ヴェローゾ「メウ・ココ」
Caetano Veloso「Meu Coco」
(345票)

(SONY MUSIC LABELS / SICP 6420 : 2022年1月19日発売)

 2022年に80歳を迎えるカエターノ・ヴェローゾ。同い年のジルべルト・ジルとのデュオ・コンサートのライヴ・アルバム「DOIS AMIGOS, UN SECULO DE MUSICA」が2016年1位。モレーノら3人の息子たちと行なったコンサートのライヴ・アルバム「OFERTORIO」が2018年1位。クラリネット奏者、イヴァン・サセルドーチとのデュオ・アルバム(配信)が2020年3位。9年ぶりに新曲をスタジオで録音した「私の脳みそ」という意味の最新作、10月下旬にデジタル・リリースされました。1位のマリーザ・モンチには及ばなかったものの、得票数345は2015年~2020年の1位のアルバムの得票数を上回った。日本盤CDは1月19日発売。

<3位>
V.A.「ジョアン・ジルベルト・エテルノ」
V.A.「João Gilberto Eterno」
(216票)

(UNIVERSAL / UCCJ-2193)

 亡きボサノヴァのクリエイター、ジョアン・ジルベルトの生誕90年を記念して、ジョアンにゆかりの深い曲を様々なアーティストが歌い演奏した、日本ブラジル共同企画のトリビュート・アルバムで、タイトルの「エテルノ」は「永遠に」という意味。


<4位>
ヴァネッサ・モレーノ「センチード」
Vanessa Moreno「Sentido」
(142票)

(TAIYO RECORD / TAIYO 0040)

 サンパウロのノヴォス・コンポジトーレス(新しいコンポーザーたち)の一角に位置し、ベーシストのフィ・マロースチカとのデュオ・アルバムを複数リリースしてきたヴァネッサ・モレーノが初ランクイン。これは初のギター弾き語りソロ・アルバムで、ヴォイス・パーカッションもまじえオリジナル曲からジャヴァン、ジョイス、ホーザ・パッソスらの名曲まで。


<5位>
シルヴァ「シンコ」
Silva「Cinco」
(128票)

(THINK! RECORDS / THCD-585)

 リオ州とバイーア州の間、大西洋沿いのエスピーリト・サント州出身、シンガー・ソングライターでキーボードなど様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤー、シルヴァ。ポップな歌ごころ満載のスタジオ盤5作目が、2018年の「BRASILEIRO」に続いてスタジオ録音の2作品連続でランクイン。

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008361462


<6位>
ゼ・マノエウ「裸の心から」
Zé Manoel「Do Meu Coração Nu」
(121票)

(CORE PORT / RPOP-10032)

 北東部ペルナンブーコ州出身のシンガー・ソングライター&ピアニスト、2020年12月に日本盤が発売された第4作。アフリカ系ブラジル人の歴史やBlack Lives Matterを軸に添え、静かなるメッセージを放つコンセプト・アルバム。


<7位>
ヨウン「BXD in Jazz」
Yoùn「BXD in Jazz」
(109票)

(THINK! RECORDS / THCD-591)

 近年、注目の新人が続々と登場しているブラジルのネオ・ソウル畑から初のランクイン。ヨウンはGPとシュナの2人組で、出身地のリオデジャネイロ郊外と中心部を結ぶ電車の中で歌い始め、2021年、このファースト・アルバムをデジタル・リリース。12月に日本盤のCDもリリースされた。

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008371528

<8位>
ガル・コスタ「ネニューマ・ドール」
Gal Costa「Nenhuma Dor」
(104票)

(BRASIL : BISCOITO FINO / BF733-2)

 76歳の大御所ガルが、これまでに歌ってきたレパートリーを中心に、自分よりも若い男性シンガー10組(セウ・ジョルジ、クリオーロ、ホドリゴ・アマランチ、シルヴァ、フーベル、ホルヘ・ドレクスレル)とのデュエットで最新録音。


<9位>
アナヴィトーリア「コール」
Anavitória「Cor」
(93票)

(BRASIL : ANAVITORIA / 配信)

 内陸部トカンチンス州の学校で知り合った、アナ・カエターノとヴィトーリア・ファルカンの、フォーキー・ポップなデュオチーム。2016年にファースト・アルバムを発表し、サンパウロの才人ト・ブランヂリオーニがプロデュースした本作で、初のランクイン。

<10位>
セルソ・フォンセカ「ノッサ・ムジカ」
Celso Fonseca「Nossa Música」
(75票)

(BRASIL : JOIA MODERNA / 配信)

 カリオカ(リオっ子)の心象風景を描くベテランのシンガー・ソングライター&ギタリストが2015年の「LIKE NICE」以来6年ぶりにランクイン。ギターの弾き語りソロ・アルバムで自作曲のほか、ブラジルのポップスのヒット曲のカヴァーも。



【関係者投票】

1位  
LINIKER / INDIGO BORBOLETA ANIL (66点)

 現在のブラジルでは大勢のLGBTQ+の音楽家が活躍している。その中でもトップクラスの実力者、リニケル。これまで行動を共にしていたバンド、オス・カラメロウズと別れ、サンパウロのオルケストラ・ジャズ・シンフォニカ、故レチエリス・レイチ率いるオルケストラ・フンピレズと共演し、ミルトン・ナシメント、タッシア・ヘイス、トゥリッパ・ルイスに迎え、ソウル~R&B、サンバ、サンバソウル、ヒップホップ、ジャズ、レゲエなどをミックス。アフロ・ブラジル魂を拠り所に圧巻の歌声で社会へのメッセージを発信する。

2位  
CAETANO VELOSO / Meu Coco (62点)


※【一般投票2位】参照 

3位  
マリーザ・モンチ / ポルタス (56点)


※【一般投票1位】参照

4位  
オルケストラ・アフロシンフォニカ / オリン - ア・リングア・ドス・アンジョス (40点)

 バイーアの作編曲家・ピアニスト・指揮者、ウビラタン・マルケスが率いるラージ・アンサンブル。打楽器や女性コーラスも配し、元オス・チンコアンスのマテウス・アレルイアからバイアーナ・システムまで新旧の要人たちと共演。

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008265353

5位  
シルヴァ / シンコ (39点)


※【一般投票5位】参照

6位  
ヨウン / BXD in Jazz (37点)


※【一般投票7位】参照

7位  
アマーロ・フレイタス / サンコファ (26点)

 力強いタッチが圧巻。レシーフェ出身のアフロ・ジャズ・ピアニストのトリオ、第3作。

8位  
João Donato & Jards Macalé / Síntese do Lance (24点)

 80代後半のドナート、カエターノ・ヴェローゾのロンドン録音盤「Transa」に参加したジャルズ・マカレーの、ひたすらユニークなコラボ作。

8位  
アントニオ・ネヴィス / ア・ペガーダ・アゴーラ・エ・エッサ (24点)

 リオ新世代のトロンボーン奏者/ドラマー/アレンジャーの、アフロ・ブラジル音楽を軸とする痛快ミクスチャー・サウンド。

10位  
ヴァネッサ・モレーノ / センチード (20点)


※【一般投票4位】参照

10位  
Pabllo Vittar / Batidão Tropical (20点)

 北東部マラニャオン生まれ、LGBTQ+の歌手の中でも人気抜群のドラァグ・クイーンがテクノ・ブレーガやカリプソを中心に、カヴァーを交えて歌う。

(ラティーナ2022年1月)

ここから先は

0字

このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…