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ブラジルフィールドワーク #17 友が遺したもの 社会運動家、 ジョゼ・アラウージョ・リマ・フィーリョ

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

生きることを誰よりも愛した人だった。ひとのため、社会のために働き、闘い、そして人生を楽しむことを忘れなかった。現代の医学ではまだ治癒の方法がない持病を抱えながらも、元気に生き生きと生きていた。今年の2月に会った時は「ブロッコ(路上のカーニバルグループ)連覇最高記録を今年は作るぞ」と張り切って街に飛び出して行った。はじけるような笑顔が目に焼き付いている。

 6月頃から体調を崩しがちな日が続いていたらしいけれど、日本にいる私にはもちろん、周囲にそんなことをおくびにも出さなかった。「自分のことを第一に考えてよ」と、彼にはいつも口を酸っぱくして言っていたものだ。多忙な仕事に穴を開けたくない、心配をかけたくないという気遣いと責任感が過ぎるほどの人だった。7月半ばに入って検査を重ねて8月はじめに診断が確定してから、たった1ヶ月の命だった。

 私がサンパウロにいた8月はじめから19日にアマゾンの先住民族保護区に入る前日まで、彼に寄り添うことができたのは偶然の贈り物だったようなような気がしている。その後、3週間かけて先住民族の村々を移動する間に何度かネットにアクセスするチャンスがあった。「来週にはいったん退院するよ」という本人からのメッセージの1週間後に飛び込んできたのは、共通の友人からの「危篤」の知らせだった。そしてその次に接続できた時、前日に旅立っていたことを知った。9月3日。享年62歳だった。「帰ったらアマゾンの話を聞かせてよ」と、いつものように言っていたのに待っていてくれなかった。

 いつだったか冗談でこんなことを言っていた。「ぼくはエイズでは死なないよ」。じゃあ何よ、と聞くと「そうだな、エイズとは関係のないガンかな」とおどけていた。奇しくもその言葉通りになってしまった。

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毎年、特別講義に招いていただいた静岡県立大学のキャンパスで(静岡市)


エイズ当事者運動のリーダーとして

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