[2019.02]ブラジルフィールドワーク #09 村々の手仕事の 美に魅せられて
文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO
村々にひっそり残る手仕事の文化
奥地の農村で。小さな漁村で。ブラジルでは、あちこちにひっそりと、手仕事の伝統が息づいている。女性たちの手から手へ受け継がれてきた素朴な技が、布やかご、身の回りの道具などの日々の暮らしの品を作り出してきた。
ヨーロッパからの移民の子孫の多いブラジルには、遠いルーツを物語る手仕事も残されている。レース編みや手織物など、ヨーロッパでは既に失われてしまった文化が今でもブラジルの片隅で継承されている例も多いという。
手織り作家でデザイナーのヘナート・インブロイジは、そんな手仕事の文化を全国各地に訪ね歩いて25年以上になる。村々で細々と作られてきた手工芸品を掘り起こして、作り手たちと共にアイデアを出し合い、そこに彼の現代的なデザインを加味しつつ地域の特産品としての「商品」を生み出してきた。
軌道に乗った後は、作り手たち自身が生産者組合などの組織を立ち上げて生産に継続して取り組んでいく。現金収入の手段に乏しい貧しい村で、その地域ならではの自然の素材と手仕事の文化をベースとした経済的な自立が、こうして生まれていった。
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