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[2021.01]映画評|『わたしの叔父さん』『聖なる犯罪者』|善と悪を、それぞれ対極の表現で描いた二本の映画が、人間の本質を炙り出す

文●圷 滋夫 (あくつしげお/映画・音楽ライター)

 善と悪。人が胸の奥に秘めた正反対の心を、その在り方に影響を及ぼす社会的な側面と絡めながら、それぞれ圧巻の、そして太極の表現で描いた二本の映画が公開される。

 デンマーク映画『わたしの叔父さん』は、首都コペンハーゲンから遠く離れた自然豊かな田舎の農村が舞台だ。27歳のクリスティーネは孤児となった14歳の時から、足が不自由な酪農家の叔父さんと二人で暮らしている。彼女はかつて獣医を目指していたが、今では叔父の身の回りの世話をしながら、伝統的な飼育法の酪農を手伝うだけの毎日に満足していた。しかし牛のお産の時の処置を認められ獣医の助手をするようになってからは、かつての自分の夢を思い出すようになっていた。また父の墓参りで訪れた教会で合唱隊の気さくな青年とも知り合い、やがて叔父との穏やかな日常に小さなさざ波が立ち始める。

わたしの叔父さんメイン

『わたしの叔父さん』 ©︎2019 88miles
1月29日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー

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