[2020.08]創刊記念特別対談:高野寛 × 宮沢和史|誰もやっていない地平に立つ《後編》──コロナ禍での音楽家の挑戦と限界のあれこれ
《前編》はこちら。
誰もやっていない地平に立つ
宮沢和史 終わったときに何が残るのかって。そういうところが、加藤登紀子さんって人の、ぼくが尊敬するところ。「やっちゃおう」とか、そういう短絡的なことではなくて。誰もやっていない地平に立つっていう。その覚悟がいいよね。直接的な音楽の影響というより、音楽への姿勢ってところで、加藤登紀子さんっていうのは、昔から、尊敬していますね。どんどん外国へ行って知らない人とものを作っちゃうっていう。 高野くんもそういう意味じゃあ、間にパソコンがあったり、通信を挟むんだけれども、居ながらにしていろんな人と交流して新しい音楽を作っているという印象は昔からある。
高野寛 自宅待機の時期、複雑な心境だったね。インタビューで、行動力がすごいですねって言われたんだけど……(パソコンのキーボードを叩く動作をしながら)指先を動かしてただけだからね。行動力の定義が変わったなあと思って。それに、デビューした頃は宅録っていうのは全く理解されなかったし、「オタク」っていうのはどっちかというと蔑視の言葉だった。いまや、ミュージシャンはこぞって宅録して、世界中の人がオタクで居ろって言われているわけでしょ。この価値観の大転換は一体なんだろう?と思っているけど。僕の場合はそこに、今までやってきたことが身を結んでいるところがあって。
宮沢和史 にわかにできないからね、高野くんが選んでいる今の選択肢は。
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