[2022.10] 【島々百景 第76回】 慶良間諸島 沖縄県
文と写真:宮沢和史
沖縄本島那覇市の泊港からフェリーで一時間ほど西へ進むと、圧倒的な海の青さを誇る島々に渡ることができる。そう慶良間諸島である。沖縄県の海の青さといえば宮古島や八重山を思い浮かべる方が多いと思うが、沖縄本島から高速船に乗れば35分程度で行ける30km強の距離(泊港から恩納村への直線距離にほぼ等しい)にありながらその海の美しさには誰もが息を飲むはずだ。“○○○ブルー” という言い方を耳にすることが多いが “ケラマブルー” と表現される青はきっと多くの人の経験値を軽々超える色彩であろう。他県の人間から見れば沖縄本島周辺の海は充分美しいわけだが、毎年のように大型の開発が止むことのない本島では残念ながら島の土砂が海へと流出されるようになって久しい。十二分に美しい海を眺めながら「昔の海はキレイだったよ」と言った老人の言葉が今でも忘れられない。
慶良間諸島とは言っても慶良間島という島はなく、渡嘉敷島、座間味島、阿嘉島など大小合わせておよそ20の島々からなる群島である。海の透明度からダイビングやシュノーケリング、シーカヤックやホエールウォッチングが有名だし、本島から近いこともあって、渡嘉敷島、座間味島、の中心部は観光客で随分賑わってるだろうと思いきや、ハイシーズン以外は想像以上に静かで落ち着いた集落をのんびりと散策することができる。フェリーを利用すればどちらの島へも車を乗せることができるし、現地でレンタカーを利用することができるが、決して、大きい島々ではないので、車で短時間で攻略してしまうのではなく、まずは、レンタバイクや自転車、乗合バス、など利用して島のサイズ感、高低感、地形を肌で把握する旅が良いのではないかと思う。ただし、すべて徒歩でというのはあまりオススメしない。車では小さな島だが、徒歩には広い…。
長い間沖縄に足しげく通い、大小さまざまな離島を巡ってきたが、実は慶良間諸島にはずっと縁がなかった。マリンスポーツの島々という印象を勝手に持っていたのと、“歌が聴こえてこない” ということが最大の理由で、長い間渡る機会を持てないままでいた。海を見るだけでも充分素敵な旅じゃないか?ふとそう思い、あまり深く考えずにフェリーに乗ってみるとあっさり到着しまって、今ままでなんとなく訪島を先延ばしにしていたことがバカらしく思えた。だからこそ、なおさらケラマブルーの美しさに衝撃を受けた。
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