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[2020.08]創刊記念特別インタビュー:ジルベルト・ジル|「信じて進む(Andar com fé)」音楽家たち─ブラジルの歌う知性は、パンデミックで何を感じ、どう生きているか?

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インタビュー・文●高橋直子

※このインタビューは7月初旬に行われました。

── パンデミック中は、アーティスト活動としては、何をしていますか?

ジルベルト・ジル
 パンデミック初期、私は何もしませんでした。ほぼ何も。ウィルスの感染を防ぐために、衛生的な提言に従い、家にいました(ステイホームしていました)。その後、その後2ヶ月立ってから私は動き始めました。ライブ(オンラインコンサート)を行ったり、フランスのテレビ局の撮影をおこなったり、ブラジルの新鋭歌手であるイザ(IZA)とのオンラインライブも行いました。6月26日には北東部の音楽(だけ)を歌ったのライブを行いました。(6月祭りの時期)そんなことをしました。それ以外はいつも家にいて、本を読んだり演奏したり、音楽を聞いたり、テレビを見たり、そんなことをしています。

── 「Andar com fé」の動画を見ました。あれは最近収録したものなんですか?

ジルベルト・ジル はい、そうです。再レコーディングをしたわけですが、動画を華やかにするため、私の多くの音楽仲間を招待しました。このバージョン、新しい「Andar com fé」のバージョンに多くの仲間が参加してくれました。

── この動画収録に当たってどんな思いがありましたか? 歌詞もメッセージ性があるし多くの人が一緒に歌っていて力強い動画ですが。このパンデミック中の特別な思いは?

ジルベルト・ジル 寛大な心で参加してくれた、私の作品をオマージュしてくれようと参加してくれた多くの仲間たちの気持ちを、とても嬉しく思い、満足しています。それそれは満たされた気持ちになり、非常に感動しました。

── パンデミック中や、その後の何か新しい話題はありますか?

ジルベルト・ジル いいえ。いつも通りの仕事プロセスをたどっています。今回ヨーロッパの夏に、毎年行っていたイベント(ツアー)を行っているはずでした。今行っているはずだったけれどキャンセルになりました。また現在まだ11月のヨーロッパ行きが計画されているんですが、どうなるかわかりません。パンデミックの状態に左右されます。この2つの大きなイベントが今年行われる予定だったんですが、一つはすでにキャンセルされ、次のもう一つは11月までどうなるか見ていきましょう。アルバムの録音の計画はなくて、ずいぶん日本に行っていないので、ブラジルに戻る途中に日本へ寄れるように、日本からの招待を待っています。まあそんな計画があるくらいです。

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── ヨーロッパでの11月のイベントはコンサートですか?

ジルベルト・ジル そうです。それには二人の息子といく予定です。ベンとジゼル・ジル。そして孫、ジョアン・ジル。この小さなグループで、ヨーロッパでコンサートをいくつか行う予定です。

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◼️フランスのテレビ局の取材に応じ、自宅でライヴをしたジルベルト・ジル。テレビ局のスタッフは、防護服を着ている。

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── パンデミック後に、あなたの仕事は変わると思いますか?

ジルベルト・ジル うーん、わかりません。(パンデミックが)終わった後どのように(仕事に)戻っていくのかわかりません。私の作曲活動、歌詞の制作などがどんな形になっていくのかがわかりません。コンサートに関しても、まだ確実なものは何もない。元に戻っていくっていうのはわかっています。私は、、私はなるべく早く色々なことが、元通りに戻ることを願っています。でも私にとって、パンデミックによる変化にどう対応していくのか、自分の活動をどうイノベーションしていくのかなどまだわからない状態です。パンデミックは一度過ぎ去った後にも、またやってくるでしょう。

── ブラジルの、リオデジャネイロのコロナウィルス対策について教えてください。

ジルベルト・ジル ブラジルは、コロナウィルス対策において、ブラジル政府のネガティヴな姿勢という、とても困難な問題に苦しんできました。パンデミックを苦慮しない大統領がおり、同時にブラジルの多くの地域の州政府・国民全体で、国民を支援しようと努力を続けている状況があります。病院での対応、予防の為の対策、感染拡大を防ぐ為の対策など。だから、3ヶ月経った今、まだ感染は拡大している状態にあり、パンデミックをコントロールできている状態ではありません。困難な問題に立ち向かいながら、パンデミックをコントロールできる状態を現在では待っている状況です。

── コロナ禍の後、何か変わると思いますか? どのような世界を望みますか?

ジルベルト・ジル ああ、私は…… 私が望む世界は、より良い世界。パンデミック前から望んでいた世界。もっと平等な世界、バランスの取れた世界、ダイナミックで同時に労働者が必要とすることを受け止める経済の世界。国民に寄り添った政府、世界で生産される富がもっと分散されるような世界。テクノロジーのさらなる発展。私が望むこの全ては、前から望んでいたことです。その実現に向けてもっと力強い機会が訪れますよう、世界が必要としていることの実現に向けて、継続して動いていくのです。

── パンデミック中に聴きたい音楽は?具体的にどんな音楽ですか?

ジルベルト・ジル 私は特に、ライヴを ── 今、ブラジルだけでなく世界中で、自宅からのオンラインコンサート、オンラインライヴと呼ばれるものが数多く行われています。多くのアーティストが行っていますよね。わたしはそういうライヴを沢山観ています。オンラインコンサートを観る以外にも
音楽を聴きますが、その割合は少しだけです。本を読んだり、一体どういう状況になっているのか情報を得るために、テレビニュース番組を見たりしているうちに時間が経ってしまうことがほとんどです。アメリカから広がった差別に対するデモの動きにはとても興味をもっていて、ニュースを追い続けています。音楽に関しては、仲間のオンライン・ライヴを観ることで、音楽を聴いています。

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◼️ジルベルト・ジル自身もオンライン・ライヴを行った。こちらのジルのバースデーイベントとして行われた自宅の庭からのオンライン・ライヴ。

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◼️「Black Lives Matter」運動に影響を受けて歌を披露した。

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── コロナウィルスを克服したアイルトンさんが、 病院を退院するときに、あなたの「Esperando na Janela」を選んでかけたという動画を、あなたのインスタでも見ました。そのニュースを知ったときの思いは?

ジルベルト・ジル ブラジル人の人生において存在感があり認知度がある私たちアーティストにとって、私たちの作品を尊敬してくれる人がたくさんいます。そんな中、新型コロナウィルスという病気を克服し、何らかの理由で私の作品、私たちの歌、音楽を思い出してくれたという、このような例を知って、私たちは本当にありがたい気持ちでいっぱいです。誇りに似た感謝の気持ちを抱き、同時に、病気から回復した人たち全てへの連帯の想いを強くしています。

── 世界のファンへのメッセージを。あなたの音楽を選んだアイルトンさの例のように、厳しいこの状況で音楽が何かできるのかもしれない。メッセージをいただけますか。

ジルベルト・ジル 私のメッセージは「希望」です。一刻も早くこのパンデミックを乗り越えて、世界、世界の共同体がこのような自然が起こしうる現象に、更に準備ができている状態になり、国民の健康・衛生の問題に対して、世界的にもっと有効な対応ができるように。いま私たちが直面しているこの困難全てに対して、人々の間、世界の国民の間での連帯の気持ちが高まりますように。

── 特に日本人に言いたいことは?

ジルベルト・ジル サウダーヂと言いたいです。今。家の中では、お気に入りの服である「着物」を着ているんですよ。すごくサウダーヂです。なるべく早く日本に戻りたいと願っています。

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高橋直子●リオデジャネイロ在住。雑誌、新聞、テレビなどのメディアコーディネーター、取材ライター。サンバシューラ、ショーロ、マラカトゥフラウなどブラジル音楽に関わる番組制作なども関わってきた。2019年トンゼー来日ライブでは制作サポートとして参加。

(ラティーナ2020年8月)

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◼️ブラジルでまだ感染広がる前、パンデミックが広がるイタリアに向け、孫と一緒に想いを送る歌を歌った。

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◼️女性歌手IZAとの自宅内から配信したオンライン・ライヴ。


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