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[2022.1]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑮】森から立ち去れ:大自然への強い思い を歌ったジョビン- 《Borzeguim》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

中村安志氏の「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」、「シコ・ブアルキの作品との出会い」の2連載を交互にアップしています。ブラジルで最も人気も高い2人の音楽家の作品を、外交官としてブラジルに長く滞在した中村安志氏が曲の成り立ちから、社会的背景に至るまで詳しく解説。ブラジル音楽を更に深く聴くための人気連載です。今回は、ジョビンの作品。(編集部)

 晩年のジョビンは、リオ植物園を近くに擁し、緑豊かなジャルジン・ボタニコ地区に、自宅を構えていました(市内南部のイパネマなどの地区からやや内陸に寄ったコルコヴァードの山の南側の麓)。比較的静かな一帯で、私も、90年に大阪で開催された花博におけるブラジル出展庭園の設計に従事した人物がこの近くに住んでおり、その方のご自宅に招かれお邪魔したところ、昼下がり、窓辺に吊るされた砂糖水の入った瓶にハチドリがやってきて、空中停止しながら喉を潤すなど、自然がすぐ手の届く範囲にある空気感を、しばし堪能させてもらう機会に恵まれました。
 ジョビンは、自身が生まれ育ったリオの自然をこよなく愛しており、この曲を収めたアルバムが1987年に出てからそう経たない90年頃だったでしょうか、テレビの特集番組において、大西洋森林地帯(mata atlântica)が近年急速に荒らされてきていると強く批判しながら、森の中で、鳥の囀りに耳を澄ませるジョビンの姿が放映されたのが、とても印象に残っています。また、アルバムも、1曲目の「Passarim(小鳥)」の名前を冠し、「Borzeguim」の中にも小鳥という言葉が出てくるなど、自然を意識した作品が目立つアルバムとなっています。

↑「いくつかの自分の作品は、mata atlântica(大西洋森林地帯)からインスピレーションを得たのだとして、この大切な森を守るようにと訴えるジョビンのビデオ」

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