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[2017.02]【第1回 カンツォーネばかりがイタリアじゃない】ヴィットリオ広場のオーケストラ: 移民たちの稀有な表現活動

文● 二宮大輔

 イタリア留学中に最も衝撃を受けたのは、老婆がゴミ箱の中に転落する場面だった。私が住んでいたローマの町外れのさらに外れにジプシーのバラックがあり、そこから交通の便が良いため、我が家の近くにもジプシーたちがゴミ箱を漁りに来ていた。ローマでは、幅2メートル、高さ1メートル50はあろうかという巨大なゴミ箱が各所に配置されており、近隣住民がそこにゴミを捨て、夜間にトラックが収集して回る。日にち指定もないため、不要な家具や衣類まで気軽に捨てられている。それを狙って家財の足りないジプシーたちが、漁りに来るというわけだ。

 ある朝、家のベランダから外を眺めていると、ゴミ箱を漁っているジプシーの老婆がひとり。内側まで探ろうとゴミ箱の縁に身を乗り上げている。その時、体重が内側にかかりすぎて、老婆はそのままゴミ箱の中に転げ落ちてしまった。幸い彼女に怪我はなく、騒ぎにもならなかったが、私は深く静かな衝撃を受けた。東欧と隣接し、地中海を通してアフリカとつながっているイタリアには、ジプシーをはじめ多数の移民が押し寄せる。ゴミ箱転落事件を目撃した2006年ごろで、その数240万人。ここでは、移民問題が残酷なまでに可視化されているのだ。

 そんなわけで、時を同じくして封切りされた映画「ヴィットリオ広場のオーケストラ」は、とても印象に残っている。ヴィットリオ広場はローマ中央駅テルミニから南東に数分の距離にあり、もとは賑やかな市場があった由緒ある居住区だ。衛生悪化に伴い2001年に市場は完全移転。広場の周辺には、いつからか多様な移民が住むようになった。「移民に侵食されてイタリア人が少数派になっている」と揶揄されるヴィットリオ広場のイメージを改善するため、そして地域の映画館シネマ・アポロを立て直し新しい文化を発信するため、地域の芸術家たちが映画館に因んだアポロ11協会を創設。その活動の一環として結成されたのがヴィットリオ広場のオーケストラだ。

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