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[2021.04]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑤】移民女性の経験

文●月野楓子

 前回の連載を書き上げた直後の3月8日は「国際女性デー」であった。この数年は日本でも新聞で特集が組まれたり、テレビやネットのニュースでも取り上げられるようになってきた。人生の諸先輩方による時代錯誤の発言には毎度驚かされるが、日本における積年のジェンダー問題は確実に社会に共有されるようになってきたと言えるだろう(もちろんそれは、これまで異議を唱え議論を続けてきた別の諸先輩方の闘いの功績である)。

 本連載との関連でいうと、ラテンアメリカの国々では「国際女性デー」のインパクトは日本よりも強く、コロナ禍においても抗議の声をあげるため各国の首都を中心に多くの人々が集まった。日本では抗議すべきことがあっても勇気を振り絞って声をあげる人々に対する風当たりは未だに強いが、おかしいと思うことを外に向かって訴えるという方法はラテンアメリカでは健在である。

 今回は移民女性の姿に焦点を当ててみたい。

 「女性の姿」とは言ったものの、多くの「ヒストリー」がそうであるように、移民の歴史も男性を中心に記されてきた。初期の移民の生活の中で、余暇の過ごし方に「男性ならでは」の「娯楽」があったことは前回書いたとおりだが、余暇を楽しむ側に女性の姿は見えてこない。もちろん男性とて一枚岩ではなく、男性特有の社会の中で理不尽な思いをさせられ、苦労してきた話は移民社会においても枚挙にいとまがない。しかし、女性に関しては、労働と余暇が分けられない苦労の日々こそが日常の生活であった。

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