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[2017.02]【第10回 カンツォーネばかりがイタリアじゃない】エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼでひも解くイタリアの笑い

文● 二宮大輔

エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼのライブ

エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼのライヴ

「日本のお笑いはレベルが高い」という話をたまに聞くけれど、本当にそうだろうか。そもそも比較できるほど日本で各国のお笑いが知られているとは思えないし、それ以前に笑いとはその国の文化や歴史に深く根差したものであり、比較そのものが不可能という話もある。それでも「レベルが高い」と誇れるほど、自信を持ってお笑いが理解できているのは羨ましいかぎりだ。イタリア語を勉強していて、私に立ちはだかったのが、まさしくこの笑いの壁だった。イタリア人と話していても、テレビを見ていても、クスクス笑うことや、ニヤリと笑うことはあっても、お腹を抱えて笑うことは一度もなかった。それは偏に自分の理解力がイタリア語の深層部に到達できていないからだ。そんな劣等感を抱きつつも、小沢健二の「アメリカのお笑いも決して大味なわけではなく、分かりにくい微妙なユーモアでできている」や、茂木健一郎の「権力者に批評の目を向けない日本の芸人は、国際水準からかけ離れていてオワコン」といった言説に刺激を受けて、イタリアにおける笑いとは何かという難問について、もやもやと考えてきた。

 そんな中、今年の12月でエリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼ(Elio e le Storie Tese)が解散するというニュースを耳にして、改めて彼らの活動を振り返っていたのだが、もしかすると彼らこそ、イタリアのお笑いを読み解く鍵になるのかもしれないと思いいたった。

 エリオことステファノ・ベルサーリを中心に1980年にミラノで結成されたエリオ・エ・レ・ストーリア・テーゼ。彼が高校時代に初めて自作し、バンドで演奏した曲「エリオ」と、ボローニャの伝説的パンク・バンドのスキアントス(SKIANTOS)のアルバム『モノトーノ』(Monotono)の一曲目の冒頭の語り部分「C'ho delle storie pese」(※スラングで「私には重大な問題がある」)を文字ってバンド名にした。初期はマイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」やクイーン「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のイタリア語の替え歌カヴァーをレパートリーに、北イタリアのインディーズ・シーンで活躍。特に多くのコメディアンを輩出し、同名テレビ番組を持つミラノの有名キャバレーであるゼリグ(Zelig)に出演できたことが大きかった。こうして徐々にテレビ出演が増え始めた1989年、ファーストアルバム『エリオ・サマガ・フカパン・カリヤナ・ツル』(Elio Samaga Hukapan Kariyana Turu)をリリース。タイトルはスリランカの公用語シンハラ語で「エリオといっしょに死んじまえ」というような意味の、こちらもスラング。先述のスキアントスのオマージュ曲や、実在のポルノ・スターを題材にした曲など、アルバムの内容も強烈かつ濃厚だ。そんな彼らが全国区になったのは1990年のサンレモ音楽祭。出演歌手の替え歌を披露するという掟破りの演出で大成功を収め、人気を不動のものとした。

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