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[2022.2] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑱】おそらく初作と言われる初期の作品 - 《Imagina》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

 ジョビン・ファンの間でよく知られる後年のアルバムで、彼の還暦を記念し、未発表の録音などを盛り込んだ『Tom inédito(未出のトン)』という2枚組アルバム(1987年)。これに収められている1曲ですが、曲の制作はかなり初期、おそらくこれが最初の作品ではないかとも目されている作品があります。「Imagina(想像してごらん)」という歌です。

 作曲された当初は、「感傷的ワルツ(Valsa sentimental)」という題を付していたそうです。ジョビンは、40年代にピアニストのルシア・ブランコからクラシック音楽を学んでいましたが、そのレッスンの中で与えられた演習のために作曲したものとみられ(1947年)、作風には、フランスのモーリス・ラヴェルの影響があるとも指摘されています。ジョビン自身、「感傷的」という言葉をタイトルにつけ、ラヴェルの作品「Valses Nobles Et Sentimentales(優雅で感傷的なワルツ)」を讃えたのではないかといった分析も存在します。

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