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[2021.09]本日はサンバ界の偉人、エルトン・メデイロスの命日【ブラジル音楽の365曲】[9/3]

 9月3日は、サンバの作曲家、特に美しいメロディーを生み出すことに定評のあったエルトン・メデイロス(Elton Medeiro|1930年7月22日 - 2019年9月3日)の命日。今日で2周忌です。肺炎の合併症で亡くなりました。89才でした。

 リオ生まれ、リオ育ちのエルトン・メデイロスは、「Pressentimento」、「Peito vazio」、「O sol nascerá」などの名曲を生み出しました。「O sol nascerá」はカルトーラとの共作曲のうちの1つです。
 エルトン・メデイロスは、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ(Paulinho da Viola)、ゼー・ケチ(Zé Ketti)、マウロ・ドゥアルチ(Mauro Duarte)、エルミニオ・ベロ・ヂ・カルヴァーリョ(Hermínio Bello de Carvalho)とも多くの楽曲を残しました。様々な世代ともコラボレーションしています。

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サンバの作曲家たち。下段左から、Candeia、Nelson Cavaquinho。上段左から、Elton Medeiros 、Guilherme de Brito(1977年3月)

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左から、歌手の Mariana de Moraes、Elton Medeiros、歌手のZé Renato, (1988年)

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前列左から、Elton Medeiros、Nelson Sargento。後列は、グループ、Galo Cantô。(1999年)

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左から、Monarco、Elton Medeiros、ギタリストのLuís Felipe de Lima(2005年)

 エルトン・エデイロスは、2014年に視力障害で失明して以来、ステージから離れていました。しかし、作曲はやめませんでした(「作曲をやめたことはありません。サッカー選手は40歳でもう年寄りだけれど......」と、2016年のインタビューで語ってます)。

 8才の頃から作曲を始め、10代の頃にはヴィラ=ロボスが創設した児童合唱団に参加。学校では吹奏楽部に所属し、最初はサックス、次にトロンボーンを演奏しました。作曲したサンバが、1954年(24才頃)のサンバ・エンヘードのコンテストでは優勝しました。

 1960年代には、Os Cinco Crioulos と A Voz do Morro という伝説的グループを、サンバの名手たちと結成しました。

Os Cinco Crioulos:Nelson Sargento / Anescarzinho do Salgueiro /Jair do Cavaquinho / Mauro Duarte / Elton Medeiros

A Voz do Morro:Paulinho da Viola / Zé Keti / José Cruz / Jair do Cavaquinho / Nelson Sargento / Anescarzinho / Oscar Bigode / Elton Medeiros

 2001年のインタビューで、パウリーニョ・ダ・ヴィオラが、エルトン・メデイロスの作曲について話しています。
「エルトンのメロディーの調性を予測するのは... あまりにも洗練されているので、時には、コードを見つけるのが難しいこともあります。」
彼のハーモニーの道筋を発見するために、私たちも、一体となって調和していなければいけませんでした。でも一番大事なのは結果、つまり楽曲の美しさです。彼の音楽には、はっきりとした彼の痕跡があります」

 エルトン・メデイロスが亡くなった際に、多くの音楽家が追悼のコメントが出ました。

絶対に、彼は大きなホーダ・ヂ・サンバで迎えられている! ── ネルソン・サルジェント(Nelson Sargent)
彼の代わりはいません。カーブの多い川のようなあのメロディーの作り方は、彼しか知らない。彼の音楽はずっと旬なままです。── モアシール・ルス(Moacyr Luz)

 今日紹介するのは、彼の代表曲の筆頭に挙げられることの多いサンバの名曲「Pressentimento(予感)」です。1973年のアルバム『Elton Medeiros』に収録されています。エルミニオ・ベロ・ヂ・カルヴァーリョ(Hermínio Bello de Carvalho)との共作です。失恋から立ち直れそうな歌といった内容でしょうか。

ai! ardido peito
quem irá entender o teu segredo?
quem ira pousar em teu destino?
e depois morrer do teu amor?
 ああ、焼けるような胸の痛み
 誰があなたの秘密を理解してくれるでしょうか?
 誰があなたの運命の地に降り立つのでしょうか?
 そして、その後、あなたの愛のために死ねるのでしょうか?

ai! mas quem virá?
me pergunto a toda hora
e a resposta é o silêncio
que atravessa a madrugada
 ああ、誰が来てくるの?
 いつも自分に問いかけても、
 その答えは沈黙
 沈黙は夜明けを越える

vem meu novo amor
vou deixar a casa aberta
já escuto os teus passos
procurando meu abrigo
 私の新しい愛よ、きて
 家のドアは開けておきます
 あなたの足音が聞こえてくる
 私の居場所を目指して

vem, que o sol raiou
os jardins estão florindo
tudo faz pressentimento
que este é o tempo ansiado
de se ter felicidade.
 ねえ、太陽が昇り
 庭に花が咲く
 全てには予感がある
 今がその時だと
 幸せになるための

...

「Pressentimento(予感)」作詞作曲:Hermínio Bello de Carvalho、Elton Medeiros

(ラティーナ2021年9月)

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