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[2024.4]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊺】 『Jota.pê – Se o Meu Peito Fosse o Mundo』

文:中原 仁

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 ジョタ・ペー(Jota.pê)は、ジャヴァン、レニーニなどの音楽DNAを受け継ぐ新世代のシンガー・ソングライター、ギタリストだ。

 ジャヴァンはアラゴアス州マセイオの、レニーニはペルナンブーコ州レシーフェの出身。ジョタ・ペーも北東部生まれかと思いきや、サンパウロ市の衛星都市、オザスコ出身。でも彼の音楽は、バイーア~北東部を基軸にUSAブラック・ミュージックにも呼応する、アフロ・ブラジリアンMPBだ。2024年3月、入魂のセカンド・アルバム『Se o Meu Peito Fosse o Mundo』をデジタルでリリースした。

 ジョタ・ペー。この芸名は、本名João Paulo Gomes da Silvaのイニシャル "JP" のポルトガル語読み。1993年2月14日生まれの31歳。10歳でギターを手に取り、IT業界で働いたが2015年、ファースト・アルバム『Crônicas de um Sonhador』を発表した。

 2022年、女性シンガー、ブルーナ・ブラッキ(Bruna Black)とアフロ・ブラジリアンMPBのデュオ・ユニット、アヴア(ÀVUÀ)を結成し、アルバム『Percorrer em Nós』を発表。これが大きな話題になった。

Bentivi • ÀVUÀ (Clipe Oficial)

 その後、ソロ・シングル「Folha」(プロデューサーはト・ブランヂリオーニ)、5曲入りEPをリリース。「Folha」を除く5曲に新曲5曲を追加して “もし僕の胸が世界だったら” と題するファースト・アルバムをリリースした。

 曲も、サウンドも、ジョタ・ペーのギターも素晴らしいが、何よりもまず彼の歌声がとても魅力的だ。近年のブラジルは、これみよがしに力を入れ声を張り上げて歌う “自称・実力者” が増えてきたが、ジョタ・ペーは真逆。静かな発声、抑えた語り口で歌う声は気品にあふれ、穏やかな説得力がある。

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