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[2017.05]【第4回 カンツォーネばかりがイタリアじゃない】Lo stato sociale (ロ・スタート・ソチャーレ): ボローニャ独立系 ミュージシャンの叫び

文● 二宮大輔

 ボローニャという町をご存じだろうか?

 イタリア北部エミリア=ロマーニャ州に位置する都市で、ヨーロッパ最古の大学があることで知られている。ミートソースのパスタのことを「ボロネーゼ」と呼ぶが、これはつまりボローニャ発祥のパスタという意味。第二次大戦後は共産党の活動が盛んだった土地で、政治的なテロの起こった「鉛の時代」の終焉1980年には、ボローニャ駅が爆破され85人の一般人の命が奪われた。そんな政治と文化の中心地ボローニャは、今でも学生の町という性格が強く、若者たちがイニシアチブをとって新しいムーヴメントを起こしていく。

 例えば1990年代にエローシャという音楽レーベルがボローニャから生まれた。創設者は特注18弦ギターの奏者パオロ・アンジェリ。1990年、学生によるボローニャ大学占拠を機に現代音楽家集団Laboratorio di Musica e Immagine(音楽と映像の研究所)を結成し、創設した自主レーベルから作品を発表し始めた。同レーベルからリリースされた料理がテーマの『Menù(メニュー)』なるCDには、特典として袋ソース型のオリーブオイルがCDジャケットに貼られていた。これを私は日本の友人にプレゼントして、大笑いされたことを覚えている。

 かくも伸びやかに躍動するボローニャのインディーズ音楽シーンの中でも注目したいのが、Lo stato sociale(社会国家)だ。ルパン三世の峰不二子の名前を冠にした地域ラジオ局Radio Città Fujiko(ラジオ・チッタ・フジコ)のDJ三人による電子ポップ・バンド。2009年にドラムマシーン、自動ピアノ、ベース、デモ版の音楽ソフトが入ったパソコンを持ち寄って、ガレージで演奏し始めたのがバンド結成のきっかけ。2011年に五人組となり、地元レーベルGARRINCHA(ガッリンシャ)から三枚のフルアルバムを発表している。シンセサイザーや電子ビートにラップを絡ませる彼らの音楽は、まずその歌詞が耳を引き付ける。「イケア時代の愛」や「彼はゲイじゃなくてオープンなだけかもよ」などの曲名からもわかるように、現代イタリアの社会問題を反映させた独特のシニシズムで貫かれているのだ。

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LO STATO SOCIALE 『TURISTI DELLA DEMOCRAZIA』

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