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[2021.03]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑧】太平洋に浮かぶ真珠の首飾りと2つの太陽 ―マーシャル諸島共和国の終わらない戦―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)

 200万平方キロの広大な海域に、南北に平行するラタック Ratak(日の出)、ラリック Ralik (日の入り)の2つの列島からなるマーシャル諸島共和国。5つの独立した島々と29の環礁に浮かぶ1,200以上の珊瑚島は、「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」と言われる美しさです(写真1)。かつて人々は、独自の海図(スティックチャート、写真2)や星、雲、波、潮、風、鳥、海の色を目印に、西はポーンペイ(2021年2月号)、東はハワイ、南はキリバスまで、アウトリガーカヌーで航海しました。パンダナスや椰子の葉の繊維を使った精緻な工芸品「アミモノ」や「チャンポ(散歩、ドライブ)」は、日本語からの借用語。やはり、戦前は日本統治下におかれていました。太平洋戦争時に激戦地の1つとなったクワジェリン島には、米軍のロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場が設置され、1959年以降地権者も自由に立ち入れません。

写真1マジュロ環礁20121214

写真1 真珠の1つ、上空からのマジュロ環礁
   (2012年12月15日 撮影:小西一功)

写真2 スティックチャートとアミモノ20121213 (2)

写真2 スティックチャートとアミモノ
(2012年12月15日 撮影:小西一功)

 それに先立つ1946年から1958年にかけて、アメリカ合衆国はビキニ環礁とエニウェトク環礁で67回もの核実験を行いました。1954年3月1日の「ブラボー実験」では、爆心地から160 キロ東方の海上で操業していた静岡県焼津港所属の遠洋マグロ延縄漁船第五福竜丸の乗組員23人も、突如西に閃光を見て地鳴りのような爆発音に襲われました。ブラボー実験ではロンゲラップ環礁、ウトリック環礁、アイルック環礁の人々も被爆しました。放射性降下物で一面雪景色となったロンゲラップ環礁では、子どもたちが珍しがって「死の灰」をなめたり遊んだりしたそうです。マーシャル諸島共和国は、3月1日を「核被害者追悼記念日」と定めています。

 詩人の Kathy Jetnil-Kijiner は、現代風にアレンジした伝統的な語りのパフォーマンスで反核を訴えています。

Anointed (w/ Subtitles) - by Dan Lin & Kathy Jetnil-Kijiner
「命じられた」
―放射性廃棄物処分場となったエニウェトク環礁ルニット島への語りかけ

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