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[2021.09]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑭】 カナク、カルドッシュ、日系人 ―複雑な感情渦巻く「メラネシアのフランス」の先住民の踊りと音楽―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)

 皆さんにとって、「天国にいちばん近い島」は、どこでしょうか? 思えば、私がハワイ以外の太平洋の島を最初に認識したのは、森村桂さん(1940-2003)の同著でした!中学生の時、友人に勧められて読んだのです。1964年、森村さんが一人旅に出た先は、ニューカレドニア。1853年フランスの植民地となり、現在もフランスの特別共同体です。ニューカレドニアという地名が「天国にいちばん近い島」と共に日本中に広まったのは、皆にとって海外旅行が夢だった時代でした…。

 今なら、直行便で8時間40分。日本からのアクセスはよく、時差も2時間だけ。フランスっぽい町並みとフレンチ・レストラン、南国のリゾートが味わえるとあってウェディングや新婚旅行でも人気で、ニューカレドニア観光局も「自分ならではの『天国』を見つけられる場所」とアピールしています。

 私がニューカレドニアのヌメアの町を訪れたのは、2000年。太平洋芸術祭が目的だったので、それ以外の記憶が乏しいのが残念です。ヌメアに1947年以来設置されている南太平洋委員会(SPCのち太平洋共同体 Pacific Community)の本部には、太平洋芸術会議 The Council of Pacific Arts の事務局も置かれています。SPC は、1963年の第1回太平洋芸術祭(開催地:フィジー共和国スヴァ)を牽引し、以後も開催の中心的役割を担ってきました。そのお膝元なのに、私が2000年10月23日ヌメアの空港に到着した時には、他の島で見られる「太平洋芸術祭歓迎モード」(2021年7月号)が感じられず、カナクらしい人たちも見当たりませんでした。

 カナクとは、ニューカレドニアの先住民の総称。先住民は30前後と言われる言語集団からなり、カナクという単一の民族集団は存在しません。先住民は、かつてカレドニアンと呼ばれたこともありましたが、1980年代半ば頃、カナク独立派と反独立派による武装闘争が起こってから、カナクという呼称が定着しました。

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