[2021.07]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑫】 アウ ’au が鳴く―ソロモン諸島アレアレ地域のパンパイプのサウンドスケープ―
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[2021.07]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑫】 アウ ’au が鳴く―ソロモン諸島アレアレ地域のパンパイプのサウンドスケープ―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)

 ソロモン諸島国って、聞いたことがあるでしょうか? 1978年イギリスから独立した島嶼国で、日本から南に約6,000㎞、パプアニューギニアの東にある約2,500の島々からなります。ソロモン諸島という名称は、1568年お宝を求めてやってきたスペイン人探検家のアルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラ Alvaro de Mendagna de Neira(1542-1595)が、古代イスラエル王に因んで名付けたもの。ソロモン王は知恵者で、神から授かった指輪をはめると動植物とも話ができたとも言われます。しかし、メンダーニャ・デ・ネイラは、お目当てのお宝を見つけられませんでした。

 2017年のデータによると、日本からの訪問客は、年間1,000人以下、うち観光客は300人以下。日本では、観光地としては馴染みが薄いようですが、長年にわたる経済活動でのつながりはあります。1971年、イギリス保護領だったソロモン諸島国で、大洋漁業(現・マルハ)がカツオ一本釣り資源調査を行ったのを手始めに、1973年には合弁会社ソロモンタイヨーを設立しました。カツオ、マグロの冷凍施設、カツオの缶詰工場、荒節加工工場が建設され、2000年ソロモンタイヨーが官営会社になったものの、タイヨー taiyo は「ツナ缶」をさす地元の共通語となっているそうです。

 カツオ一本釣り操業を先導したのは、沖縄県宮古諸島伊良部島出身の漁師たち。沖縄では、ツナ缶はチャンプルー料理に使う人気物で、スーパーマーケットでは日常的に箱売りされています。また、ソロモン諸島国の首都ホニアラのある島は、ガダルカナル…… 一度は、耳にしたことがある名前かも知れません。パプアニューギニアのラバウル(2021年6月号)から1,000㎞ 離れたこの島も、太平洋戦争の激戦地でした。

 実は、私が最初に関心を持った太平洋諸島の音楽が、ソロモン諸島のパンパイプ合奏でした。大学2年生の時、西岡信雄(1939- )先生のレポート課題で、ヨーロッパ、南アメリカ、オセアニアのパンパイプを取りあげて比較したのがきっかけでした。フルートを吹いていたので、笛には特別の思いがあったし、ちょうどスイスの民族音楽学者 H. ゼンプ Zemp(1937- )が、ソロモン諸島国マライタ島南部アレアレ 'Are'are 地域のパンパイプとその音楽について、レコードや論文、映像で盛んに紹介していた頃でもありました。

 パンパイプとは、異なる長さの管を束ねた笛のこと。よく用いられるのは、管の片方を塞いだ閉管です。1つの管で出る基音は、長い管が低い音、短い管が高い音。息の圧力と唇の張りを高めると奇数倍音、管を傾けたり顎を動かしたりすると半音も出ます。手の動きや息の圧力によって、ビブラートもつけられます。

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