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[2019.04]『ROMA/ローマ』─ 1970年代のメキシコを舞台にした映画史に残る美しいモノクーロム映画

文●花田勝暁 text by KATSUAKI HANADA

 共に映画製作にあたるなど精力的に協力し合っているメキシコ出身の3人の映画監督が、アカデミー賞など毎年数々の映画賞で話題の中心にならない方が珍しくなっている。「The Three Amigos of Cinema(映画業界の3人の親友)」と呼ばれる3人の映画監督とは、ギレルモ・デル・トロ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥと、本稿で紹介する『ROMA/ローマ』を撮ったアルフォンソ・キュアロンである。

『ROMA/ローマ』は、アルフォンソ・キュアロン監督がNetflixと組んで制作した長編映画で、Netflixで去年の12月から観ることができた。ほぼ劇場公開されていない作品で、当初は日本でも劇場公開の予定についての情報はなかったが、本作が先日の第91回アカデミー賞で、監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞した影響か、国内の劇場でも観れる状況が整ってきている。

 アカデミー賞では作品賞、監督賞をはじめ10部門にノミネートされていたが、その前にヴェネチア映画祭で最高賞の金獅子賞、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞と監督賞、英国アカデミー賞の作品賞と監督賞、放送映画批評家協会賞の作品賞と監督賞を受賞しており、第91回アカデミー賞で作品賞の受賞も有力とされていた。メキシコで撮影された『ROMA/ローマ』では、スペイン語と先住民言語が話されているが、アカデミー賞の作品賞に英語以外の言語が話される作品がノミネートされるのは初めてのことで、作品賞受賞となれば、もちろん外国語(英語以外)の映画が初めて作品賞を受賞するエポック・メイキングなことであった。

 『ROMA/ローマ』は、モノクロ映画だが、その映像が兎角美しいので、劇場でも観れる状況が整ってきたことを、心から喜びたい。アルフォンソ・キュアロン監督の近年の作品は、『トゥモロー・ワールド(2006年)』、『ゼロ・グラビティ(2013年)』。ハリウッド的映画の撮影技術の最高点に到達したようなSF作品を撮ってきている。だが、本作でキュアロン監督が撮ったのは、自身の幼少期を反映した半自伝的作品。しかし、キュアロン少年の視点で物語るのではなく、中流階級一家に住み込みで働く家政婦の視点で物語る。映像は美しいが派手さはない。右から左への水平方向へのパンニングの繰り返しを中心とした美しいモノクローム映像を、監督自身が撮影も担当して撮っている。機動力のある最新の6K 65 mmシネマカメラ「ARRI ALEXA 65」を使って撮影し、6Kの高画質画像で撮影したものを、編集でモノクロにしている。

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