[2022.2]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑱】愛着を込め描くリオのストリートチルドレン —《Pivete》
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
美しい風景が、随所に広がるリオ。しかし、治安が極めて優れた日本に住み慣れた者が、この街でうっかり風景に見惚れていると、ひったくりなどに遭う危険を相当伴う……というのも厳しい事実です。
例えば、有名なコパカバーナ海岸。タクシーを降りた歩道から波打ち際までは、数十mの距離が空いています。観光客が不用意に水際近くまで散歩し、カメラやスマホを使っていると、たちまちナイフで武装した数名の少年に囲まれます。砂浜は、走って逃げるにもスピードが出せず、逃げようもない。そこであらゆる金品を強奪されるといった事件が、何度も繰り返されます。
そんな、何時も気が抜けないリオの街。砂浜の強盗だけではなく、自動車が赤信号で停止すればさっと現れて、窓拭きなどをし小銭を稼ぐ上半身裸のストリートチルドレンに、あちこちで出会います。
シコ・ブアルキは、時に窃盗などで市民に被害も及ぼす彼らを、どこか愛着をもった視線で描く歌を作りました。1978年のアルバムに収録された「Pivete(街角の少年ギャング)」です。
ここから先は
2,347字
/
2画像
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。
世界の音楽情報誌「ラティーナ」
¥900 / 月
「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…