[2018.12]ギタリスト対談 尾花 毅×鈴木大介 ブラジルの鬼才 ギタリストたち
文/写真●宮ヶ迫ナンシー理沙 text & photo by NANCI LISSA MIYAGASAKO
3人の鬼才(エグベルト・ジスモンチ/ギンガ/ヤマンドゥ・コスタ)は、ギタリストの目にどのように映るのか。ジスモンチと対談経験があり、クラシックギター奏者として活躍する鈴木大介さんと、日本で数少ない7弦奏者の尾花毅さんによる対談。
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鈴木大介 ヤマンドゥは認識の上では、ちょっとブラジルじゃないんですよ。演奏スタイルも。最初に師事したギタリストもアルゼンチン人だったし、拍の感じとか、すごくアルゼンチンなんですよね。だから最近タンゴとかを弾くのは、よく分かる。彼のテクニックのシステムから言うと、そっちの方が合ってる。彼が「ギターの神様」っていうのは正しいと思うけど、「ブラジルのギターの代表」と言われると、僕はクラシックサイドの人間だから、賛同しなくていいやって思ってるわけですよ。僕ね、もともとハファエル・ハベロから入ったんです。絶対あういう人出てこないんじゃないかっていうくらい。びっくりしました、最初聴いた時。
尾花毅 ぶったまげるよね。
編集部 ヤマンドゥもインタビューの時にハファエルのことを語っていました。
鈴木大介 ヤマンドゥも最初、ハファエルみたいな曲ばっかり弾いてましたもんね。
尾花毅 そもそもナイロン弦の7弦ギターをあういう風にしたのはハファエルより前はいないでしょ?
編集部 ソロ楽器として成立させたのは、ハファエルだとブラジルでも言われますね。
ヤマンドゥは6歳のころからずっとお父さんのグループについて音楽環境に育ち、最初に師事したのはアルゼンチン出身のルシオ・ヤネルでした。
鈴木大介 お父さんのグループってどんなことしてるんですか?
編集部 出身地である南部のガウチョ音楽ですよね。
尾花毅 ヤマンドゥはハファエルからの影響を多大に受けていたかもしれないけど、今まったく……。
鈴木大介 今のヤマンドゥが「ヤマンドゥ」ですよね。最初聴いた時の印象は、ブラジルのギタリストというよりは、フアンホ・ドミンゲスだった。テクニックが。でもルーツがガウチョであるとお話を聞いて、フアンホっていう第一印は結構当たってた。
尾花毅 俺は『Tokyo Session』っていうアルバムのレコ発のライヴを横浜の新星堂でやるから、ギター持って来いって言われて見に行って、初めてヤマンドゥの生演奏を見た。特設ステージで、ヤマンドゥの演奏がすごすぎて、ギターは持って行ったんだけど、あまりにも恐ろしくなって、ギター忘れたふりをしちゃったくらい(笑)
鈴木大介 初期のヤマンドゥの音楽っていうのは、入り口がなくって、出口もないみたいな。俺こうだっ! みたいな感じだった。
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