[2023.10]【書評】評伝『ヴィラ=ロボス ブラジルの大地に歌わせるために』 (木許 裕介/春秋社) ・ 著者講演会のご案内
文●岸和田 仁
「ストラヴィンスキー、ドビッシー、ショパン、ヴィラ=ロボスが僕にとっての師匠だった」と語っていたのがボサノヴァの創始者カルロス・ジョビンであったし、「世界で一番優れたパーカッショニスト」と評されたナナ・ヴァスコンセロスが入院中、病室で繰り返し聴いていたのが、ヴィラ=ロボスの三枚組CDであった。
こうしたエピソードを列記するまでもなく、ブラジル音楽界の巨匠、天才的作曲家として知られるヴィラ=ロボス(1887-1959)に関しては、多くの研究や評伝が書かれてきたが、日本語で読めるヴィラ=ロボス評伝といえば、長い間、『白いインディオの想い出―ヴィラ=ロボスの生涯と作品』(アンナ・ステラ・シック著、鈴木裕子訳、トランスビュー、2004年)しかなかった。この作品はそれなりに読ませる内容のある評伝だが、この作曲家にまつわる数多くの「創られた伝説」をあまり検証もせず記載しており、テキストクリティークが不完全な著書であった。
今回刊行されたヴィラ=ロボス評伝が画期的といえるのは、ブラジル各地での現地調査、関連文献資料の探索・読み込みと並行して先行研究者たちとの濃厚な交流を繰り返した成果が濃密な文章で叙述されていることだ。端的に言えば、完璧主義者らしい作品に仕上がっている。
第I部 生涯と作品、では時系列で彼の生涯を様々なエピソードも交えながら語っており、第II部 作品総論、では、ギター作品、ピアノ作品、室内楽曲、ショーロス、ブラジル風バッハ、声楽作品、交響曲、というジャンル毎に詳しくプロの解説を付している。
著者は気鋭の指揮者にして日本ヴィラ=ロボス協会会長であるから歴史研究書としても優れた著作となったのかもしれないが、やはり、著者が、「知の巨人」立花隆氏の助手としても活躍し、その知的生産ノウハウを吸収した才人であることも指摘しておきたい。師匠の教え「自分の足で見よ」に忠実に従った成果が、本書というわけだ。こんな労作を日本語で読める幸せをかみしめた一読者としての感想であるが、既にヴィラ=ロボス教典と呼べるほどの叙述内容には脱帽するのみだ。
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今回、本作の著者である木許裕介氏(指揮者・日本ヴィラ=ロボス協会会長)による講演会(主催:日本ブラジル中央協会)が開催されます。天才的作曲家であるヴィラ=ロボスの持つ多面的な魅力について、自由に語っていただきます。
日時: 2023年11月9日(木)14:00~15:30 (開場 13:30)
演題: 「ブラジル音楽界の巨匠ヴィラ=ロボスの魅力を語る」
講師: 木許裕介氏(指揮者・日本ヴィラ=ロボス協会会長)
会場: 日仏文化協会 汐留ホール
港区東新橋1丁目7-2 汐留メディアタワーアネックス1F
地下鉄大江戸線・汐留駅7・8番出口徒歩2分
JR新橋駅烏森口徒歩7分
参加費:ブラジル中央協会個人会員 1,000円
(日本ヴィラ=ロボス協会会員も1,000円)
非会員 1,500円
問合:日本ブラジル中央協会 事務局(info@nipo-brasil.org)
申し込みは以下のサイトの申し込みフォームよりお申し込みください。
(ラティーナ2023年10月)
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