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[2024.4]祝初来日!アフロ・バイーアの歌姫、シェニア・フランサ インタビュー

文:中原 仁
協力●KYOTOPHONIE 事務局

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 フランス出身の写真家ルシール・レイボーズさん、照明家の仲西祐介さんが共同創設者・共同ディレクターをつとめ、京都市内のさまざまな会場で開催、今年で12回目を迎えた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、4月13日から5月12日まで開催中。共同創設者の2人は今年、芸術選奨を芸術振興部門で受賞した。

 「KYOTOGRAPHIE」の関連企画として2023年にスタートしたKYOTOPHONIE ボーダレス・ミュージック・フェスティバル。昨年4月はサリフ・ケイタ、ルーカス・サンタナらが出演し、昨年10月に日本三景の天橋立で開催されたオータム・エディションには、シコ・セーザル(26年ぶり来日)、ルエジ・ルナ、ホレス・アンディらが出演した。

 そして KYOTOPHONIE 2024 SPRING EDITION に出演したのが、バイーア出身、サンパウロ在住のシェニア・フランサ、初来日。会場の東本願寺視聴覚ホールは外部への貸し出しは初めてで、大谷暢裕(修如)門主が、1歳から60年余りサンパウロに住んでいたブラジル国籍の方というご縁もあってのことだという。

 シェニア・フランサのコンサートは4月14日の昼と夕方、2公演。公演に先立ち、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024 の今年の展覧会のひとつ「ヤノマミ ダビ・コぺナワとヤノマミ族のアーティスト」(スイス生まれ・ブラジル在住の写真家、クラウディア・アンドゥハルが長年、アマゾンに滞在して撮影したヤノマミ族の写真展)の開催に合わせて来日したヤノマミのシャーマン、ダビ・コペナワのスピーチが行なわれた。

ダビ・コペナワ氏によるスピーチ © Han Xing
セカンドステージでは、ダビ氏とシェニア二人でステージに。
© Kousuke Arakawa


 5人編成のバンドと共に出演したシェニアの音楽からは、USAブラック・ミュージックのエッセンスも自然ににじみ出てくるが、体幹はアフロ・バイーアのスピリット。声を張り上げすぎず、自身の内なる宇宙に聞き手の心を誘いこむ歌声は、いわゆるアシェー系ではないアフロ・バイーアの歌手のお家芸と言ってもいい。

Xênia França  © Han Xing

 パーカッション奏者のヒカルド・プラーガ(レチエリス・レイチ&オルケストラ・フンピレズ出身)が、アタバキ、チンバウ、スルド・ヴィラードを軸にしたセッティングで、いわゆるラテン・パーカッションを一切使わないところにバイアーノの自信とプライドを察知、大共感していたら、メンバー紹介でシェニアが「彼はカエターノ&ベターニアと同じサントアマロ出身」と語ったのを聞いて歓喜した。

 昼の部の終了後、シェニアにインタビュー。時間が限られていたので駆け足になったが、編集部の東さんが、彼女が表紙の月刊ラティーナ2018年4月号(特集:アフロ・バイーア2018)を渡したら「雑誌の表紙になったのは初めて!」と喜んでいた。

撮影:編集部


── セカンド・アルバム『エン・ノーミ・ダ・エストレーラ(Em nome da estrela)』の制作にあたり、ファースト・アルバム『シェニア(Xênia)』からの進歩のポイントとして、あなたと共同プロデューサーのロウレンソ・ヘベッチス、ピポ・ペゴラーロが最も注意を払った点は?

シェニア・フランサ(以下XF) セカンド・アルバムは、ファースト・アルバムで歩み始めた道の途中です。制作にあたり、引き続きバイーアのパーカッションの要素を取り入れ、様々なビートと組み合わせることを考えました。ファーストの制作プロセスを繰り返すのではなく、ストリングスとシンセサイザーのミックス、アタバキの使い方、ハーモニーなどを考え、アルトゥール・ヴェロカイにストリングの編曲を依頼しました。コロナのパンデミックで制作がストップした期間もありましたが、約2年間かけて、音楽の奥深くに潜りこんで制作しました。

── あなたが書く歌詞の中には、アフリカ系ブラジル人の自覚、女性の主張を伝えるものが数多くあります。セカンド・アルバムでは、それだけでなく、あなたの内面を歌った曲が増えてきました。

XF セカンド・アルバムには、世界に対する私の視覚も反映しています。私は幼い頃から「なぜ?」という問いを発してきました。静寂、目に見えないものへの関心や恐れがありました。そして今の世の中には、未来に対する関心や恐れがあります。ですから自分の内面を歌うことが増えてきます。
一方、歌手、表現者としての私はブラジルの音楽文化の一部で、さまざまなコンポーザーの作品を歌うことも好きです。ですからセカンド・アルバムでは、ジルベルト・ジル、ジャヴァンの作品を、私のメストリたちへのオマージュとして歌いました。セカンドはファーストに比べて、よりセンシティヴなアルバムになったと思います。ファーストは世界について、戦いについて歌った曲が多く、私が男たちだけのバンドで活動してきた体験も反映していました。セカンドは、より 私自身と言えます。

── あなたの2枚のアルバムに参加しているカイナン・ド・ジェージ(Kainã do Jêje)の才能に注目しています。バイーアのパーカッション奏者としての彼の特徴、新しさはどんなとことにあると考えますか?

XF 私の2枚のアルバムでパーカッションを演奏しているのは全員、バイーアの人間です。なぜならバイーアのパーカッションの言語はブラジルの中で特別だからです。私はカイナンを、世を去ったレチエリス・レイチのオルケストラ・フンピレズで知りました。彼が私の関心を引いたのは、彼の新しさ、フレッシュなエネルギーでした。カンドンブレのパーカッションの言語には、宗教的な背景だけでない音楽性があります。ジャズ的な要素も。カイナンの世代の音楽家は伝統的な音楽を再解釈し、独自性があります。とても素晴らしく、美しいです。

── あなたの音楽の中には、アフロ・バイーアなどのブラジル音楽、そして英語圏のブラック・ミュージックなど、さまざまな要素があります。現在のあなたが注目している国内外の音楽家は?

XF 私は昔の音楽を聴き続け、再確認することを続けています。今なお、マイケル・ジャクソン、ハービー・ハンコック、ジョアン・ジルベルトの影響を受けています。同時に現在の音楽からも刺激を受けています。私が最も影響を受けたのは、ビヨンセの妹、ソランジュ・ノウルズ。彼女はミニマリスタで、コンテンポラリーで、審美学を備えた音楽家で、私はスタジオに入った時、彼女の音楽の響きを研究しています。私にとっての最大の学校は、ブラジル音楽、とくに70年代のブラジル音楽ですが、現在のブラジルにはとても個性的で才能のある音楽家が大勢います。リニケル、ルエジ・ルナなどの仕事を尊敬しています。上の世代ではマックス・ヂ・カストロ。私は今なお、大勢の人たちの音楽を聴き、学んでいます。

── 最近のレコーディングで興味深いコラボレーションがいくつかありました。それらについて聞きたいです。まず、ルエジ・ルナとのデュエットで録音したニューシングル、イヴァン・リンスが作曲した「ルア・ソベラーナ(Lua Soberana)」。

XF この曲はバイーアが舞台の、昔(93年)放送されたノヴェーラ(テレビの連続ドラマ)『ヘナセール(Renascer)』のリメイク版(2024年1月から放送中)のオープニング・テーマで、昔の番組でも流れていた曲です。なぜ今回、私とルエジが呼ばれて録音することになったのか。これは私の想像ですが、再生(ヘナセール)というタイトルなので、バイーアの音楽の再生の意味もあると思います。また、ルエジも私もバイーアで生まれ育ち、大都会のサンパウロに出て、海外からの刺激も受けてきた世代ということもあります。

── ジョタ・ペー(Jota.pê)のアルバム『Se o meu peito fosse o mundo』の中であなたがデュエットした曲「Naíse」。ショッチとレゲエのミックスが良かったです。

XF 私が初めて歌ったショッチです(笑)。ジョタ・ペーから誘いを受け、とてもブラジル的なミクスチャーの曲だったので喜んで参加しました。彼の歌声も大好き、愛らしい歌声です。ミルトン・ナシメントとガル・コスタのデュエットのような気持ちでした。ジョタはとてもスペシャル。

── USAジャズの新世代、ホセ・ジェイムズのニュー・アルバム『1987』であなたが共作、デュエットした「Place of Worship」は嬉しい驚きでした。

XF イェー!! 去年、ヨーロッパから戻った時に、私とホセ・ジェイムズの共通の知人のプロデューサーと会いました。彼はアメリカ人だけどブラジル音楽も大好きで、私に「ホセ・ジェイムズと共演すべきだ」と。その後、アメリカに戻って、新しいアルバムのプリ・プロダクション中だったホセに私のことを伝え、参加が決まり、まだ曲が出来上がっていなかったので共作することになりました。私はサンパウロで録音したので一緒に録音できなかったけれど、彼は素晴らしいアーティスト、素敵な声の持ち主で、スピリチュアルな面でも私と共有するものがあることを、曲作りの段階から感じていました。

── この曲を通じてあなたは、世界各国の、さらに大勢の人々に知られることになるでしょう。

XF I hope so!(笑)

── 話は変わって2018年のサルヴァドールのカルナヴァルで、あなたがアフロシダーヂ(Afrocidade)のゲストで歌っている映像をYouTubeで見ました。サンパウロでの生活が長いあなたですが、サルヴァドールのカルナヴァルとの繋がりは?

XF 私はバイーアの内陸部で生まれ育ったので、サルヴァドールのカーニヴァルからは離れていました。2018年、ルエジ・ルナと共にアフロシダーヂのゲストで歌ったのが初めてのカーニヴァルでした。すごいエネルギーでしたが、人が多すぎて私はもうパニック。サルヴァドールのカーニヴァルは楽しいけれど、テレビで見ている方が良いですね。私はリオのカーニヴァル、サプカイ通りでのエスコーラ・ヂ・サンバのパレードが大好き。巨大な劇場のようで、アレゴリア(山車)もファンタジア(衣装)も、とても感動的です。


── 今後の目標は?

XF 歌い続け、曲と詩を作って、近い目標は3枚目のアルバムを作ることです。

── 最後に、あなたが共演したいと思っている音楽家は?

XF セウ・ジョルジが大好き! マリーザ・モンチの大ファンで尊敬しています。他にも大勢いるけれど、この2人ですね。

── マリーザ・モンチは5月に来日しますよ。

XF ぜひ伝えてください。私が大ファンだと。

撮影:編集部

(ラティーナ2024年4月)

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024は、5/12まで開催されています。


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