文と写真●宮沢和史

　自分の旅は基本的に音楽を絡めたものであることがほとんどである。シンガーソングライターという職業に携わっているわけだから、旅＝音楽の旅 になるのは当然のことだが、振り返ってみると海外への旅もほとんどがコンサートやイベントへの出演やプロモーション、もしくは、レコーディングが目的の渡航だった。そうでなかったとしても、曲作りのための取材だったり、実際に作曲するための旅がほとんどだった。国内外問わず、他人よりも多くの旅をしているはずであるが、バカンスであるとか、自分を癒すための “旅行” というものをほとんどしてこなかった。この歳になって今さら「取り返しのつかないことをしてしまった」と後悔してもしょうがない。というか、自分が熱くなれる目的・対象がないと赴く理由がない。旅の期間中詰め込めるだけ詰め込んで経験値を少しでも高めたい。というのが自分にとっての旅の概念なのだからしょうがない。更に言えば結局のところ自分は極度の貧乏性なのだと自覚している。自分を癒すために何もしない旅、ということがイメージできない。そういう旅は何かをやり遂げ、ある意味達観してからのお楽しみにしておこう、なんて考えているフシがあるが、結局ひとつも成し遂げられないまま、達観などまったくできぬまま人生が終わってしまいそうだ。それ自体をきっと旅と呼ぶのだろう……。