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[2021.01]宮沢和史インタビュー 〜2020年について聞く ツアーのこと、沖縄のこと〜

取材・文●佐々木俊広

 2021年1月に最新作『次世界』のリリースを発表した宮沢和史。2020年をどのように捉えて行動し、どんなことを感じ、考えていた1年だったのか。コンサート・ツアーを終えたばかりの宮沢氏に話を訊いた。

── まず、終えられた秋~冬のコンサート・ツアー「詩の朗読と歌によるコンサート2020 “未来飛行士”」についてお聞きします。

宮沢和史 10月から始めたツアーで、3公演中止にしてしまったので非常に心苦しくてですね、こちらの勝手な都合で中止にしてしまったものですから。そこで、「来られなかった人たちに(コンサートの模様を)どうにか伝えられないか?」ということで急遽、11月の大阪公演を収録して年内いっぱいは観られるように長く配信しています。コロナがなかったとしても、普通であっても様々な理由で来られないけど…という方もこういう形でなら観られる。配信ってすごいなっていう可能性を感じつつも、あんまりこればっかりでも飽きられるだろうな、と。だからメモリアルだったり、“その時、その日付”が大事だったりするときには非常にいい手段だなと思いましたね。

── 例えば、その日だけ映画館で上映配信なんていうやり方もありますしね。

宮沢和史 うん、思いつけば色々あるなと。可能性とやりすぎちゃいけない部分、その両方を感じます。今回はこれはこれでいいんですけど、配信期間が長すぎることによる問題点も出てくる気がして。新鮮味とか、安売りな感じに見えないか?とか。難しいながらも一つひとつ、やってみないとわからない。今までなかった概念なので、まずは試しているところですね。

── 皆さんが配信されているライブのチケットをいくつか買って、観て、そこで一番、「定着して欲しいな」と感じたのは「音楽には値段があるんだ」ということです。YouTubeの影響もあるし、特に若い人たちの多くはCDなんて買わない時代ですし、そんななかでも音楽=無料で聴くもの、という意識が少しでも変わればいいなと思って。

宮沢和史 本当に“フリー”というのに慣れすぎていてね。ただ、これだけそうなると「お金を払うのがバカらしい」っていうふうに思っている人を責められない。でも、1曲作るのにどのぐらいの労力とお金が要るのかっていうのだけはわかっていてほしいですよね。音楽に値段があるっておっしゃったのは本当に、我々としては皆さんに知っていてほしいことですね。

 それに発信する側も気をつけないと。安売りしちゃうと、周りに迷惑をかけることになる。「この値段で観られるのに、なんでこっちはこんな高いんだ」みたいになっちゃうから。だから僕はYouTubeに公式なPVとかは出しますけど、「どうも、MIYAでーす!チャンネル登録お願いします!」みたいなのは個人的にはやっぱり何かちょっと違うかなっていう気がして(笑)。その代わりに僕のHP上で弾き語りで歌っているんですけど、そこで「メッセージを聞いてください」というのが今のところみんなと繋がる唯一の場です。


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── そのHPの「MIYAZAWA VOICE」は覗きに行くと一対一で話しているような、親密な距離感がいいですよね。4月から定期的にアップされていて、北海道の公演が中止になった時には「白いハマナス」を歌われていました。

宮沢和史 コロナ禍っていうのはその時、その時で違うじゃないですか? 4~5月はみんなそんなに外に出ないで我慢しているっていう時があったり、また動いちゃったり。日々、違うので、その時に合った歌を自分で選んでいます。

── 開催するのも、中止の決断をするのもすごく難しいツアーだったと思います。開催しても来場されない方には払い戻しの対応もされている。コンディションやテンションの維持も難しかったのかなと思います。

宮沢和史 今年の頭の時点で「2020年はツアーをやりたいね」って話していたんですけど、コロナになって…最初は8月頃から会場を押さえていたんですよ。“詩の朗読と歌”っていうコンセプトを決めて、みんなが飛沫を飛ばし合わない、じっくり聴けるもの。長い詩とか、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカの演説を朗読するとか普段なかなかできないけど、今ならできる。その内容にふさわしい、雰囲気のある会場を準備していたんですけど、今度は(キャパシティの)50%っていう話が出てきて…ここで50%だったら狭すぎるな、みたいな場所も出てきちゃった。全部バラして、今度は大きい会場を探して。2転、3転、4転…みたいなことでスタッフは本当に大変でした。コロナ対策もこうやればいいんじゃないかっていうことも見えてきて、最終的に10月から始めたんですけれども。

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