マガジンのカバー画像

Web版 2023年5月

10
2023年5月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9…
¥950
運営しているクリエイター

記事一覧

[2023.5]【境界線上の蟻(アリ)~Seeking The New Frontiers~8】ティナリウェン (マリ共和国)

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  2000年代以降のアフリカ音楽において、最もセンセーショナルな動きの1つとして注目を集め続けてきたのがサハラ砂漠周辺から台頭してきた〝砂漠のブルース〟。マリ、ニジェール、リビア、アルジェリア、モーリタニアといった国々に分断されながら暮らすトゥアレグ人の間で独立と連帯を促しながら発展してきたその音楽は、着実にアフリカ音楽の勢力地図をも塗り替えてきたが、そのオリジネイターにして絶対王者的な存在として君臨し続けてきたのがティナ

[2023.5]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2023年5月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Naïssam Jalal · Healing Ritualsレーベル:Les Couleurs du Son [31] 19位 Plena Libre · Cuatro Esquinasレーベル

[2023.5]【島々百景 第83回】 第二節 あとがきにかえて

●文と写真:宮沢和史  以前、この『島々百景』をまとめて書籍化したのだが、あれから時が流れ、一定数のページが貯まり、このたび “第二節” として発表することになった。まずはこの場を借りてe-magazine LATINAの編集部の皆さん、文中に登場してくださった方々、そして、何よりもこの連載を応援し購読してくださった方々に心からお礼を申し上げたい。  宮沢がこれまで出会ってきたislandとしての “島” を紹介するところから始まった連載ではあるが、「自分たちのテリトリー

[2023.5]5年ぶりにアルバム『COVERS & INSTRUMENTALS』リリース! Saigenji インタビュー

文●東 千都(ラティーナ編集部)  Saigenjiのニューアルバム『COVERS & INSTRUMENTALS』が、6/7(水)に発売される。2018年リリースの前作『Compass』は年間ベストアルバムに選ばれるなど好評だったが、本作はそれ以来5年ぶりのリリースとなる。ライヴで大事に歌い続けてきたカバー曲と、コロナ禍の隔離生活で作曲したインスト曲、若い頃に作曲し未発表だったインスト曲など全18曲が収録されている。2012年リリースの『One Voice, One Gu

[2023.5]ブラジル初!性自認が女性のアーティスト限定プログラム「マーレス」、参加者のMAKOさんへインタビュー

文●島田愛加 2014年、念願のサンパウロ州立タトゥイ音楽院のポピュラー学科サクソフォン専攻に入学し、しばらくして音楽院の広報担当から「女子生徒を増やすためプロパガンダに出演してくれないか」と打診された。事情がわからず、なぜそんな必要があるのか聞いてみたら、どうやらブラジルでは楽器を演奏することは未だに男性の役目、あるいは特権だと思っている人が存在するというから驚いた。 慣れないポルトガル語生活に必死で気付いていなかったのだが、確かにサックス吹きの私が参加しているグループ

[2023.5]【連載タンゴ界隈そぞろ歩き ③】 ギタロンってどんな楽器?

文●吉村 俊司 Texto por Shunji Yoshimura 4月29日、東京・雑司が谷のエル・チョクロにて、先日本誌にてご紹介したCD “KaZZma canta GARDEL” のリリース記念ライブが行われた。 KaZZmaの歌もDuo Criollo(ギター福井浩気、ギタロン清水悠)の演奏も素晴らしく、とても楽しめたライブだった。この時個人的に注目したのがギタロンという楽器である。タンゴのギターアンサンブルの中で大事な役割を担ってきたこの楽器についてはこれま

【追悼】ヒタ・リー(Rita Lee)、革新的にブラジル音楽シーンを先取りした「ロックの女王」

文:ラティーナ編集部  ブラジルの「元祖ポップ・ロック・クイーン」「ロックの女王」、ヒタ・リー(Rita Lee)が、5月8日夜に肺癌のために亡くなり、9日に公表されました。75才でした。2021年に肺癌と診断され、その後、治療を続けていました。  訃報は、家族によって、SNSで公表されました。最期は、サンパウロ市の自宅で、家族の見守る中、息を引き取りました。  ヒタ・リーは、夫のホベルト・ヂ・カルヴァーリョ(Roberto de Carvalho)と3人の息子(ベト[

[2023.5]小松亮太の “こだわり” が一杯。圧巻だった「マリア・デ・ブエノスアイレス」公演!

文●斎藤 充正 fotos●Motoki Uemura  去る3月5日、川口リリア・音楽ホールにてバンドネオンの小松亮太らによるアストル・ピアソラ=オラシオ・フェレール作『ブエノスアイレスのマリア』公演が行われた。それに先立ち、クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」2月号のために筆者が取材した折、小松は次のように語っていた。  「楽譜より先走っているのにすごく歌っているように聴こえる。タンゴ特有のフレーズ感によって音楽が生きてくるわけです。ピアソラだけではなくてアルゼンチン・タ

[2023.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉞】Julia Mestre『ARREPIADA』

文:中原 仁  2022年、男女4人組のバーラ・デゼージョがリリースしたファースト・アルバム『SIM SIM SIM』は日本でも大きな話題となった。年末には日本独自にCDがリリースされ、「2022年ブラジル・ディスク大賞」一般投票で第1位を獲得。音楽関係者部門でも1位に1票差の2位にランクインした。そして2023年7月に初来日が実現、「FESTIVAL FRUEZINHO 2023」に出演する。   バーラ・デゼージョの一員で、そもそもパンデミック期間中の2020年に共同

[2023.5] 【映画評】 『EO イーオー』 ⎯⎯ 1頭のロバに導かれて覗き見る、人間の心の深淵。その唯一無二の映像体験に心が震える。

1頭のロバに導かれて覗き見る、人間の心の深淵。 その唯一無二の映像体験に心が震える。 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  EO(イーオー)とは、本作の主人公であるロバの名前だ。主人公と言っても擬人化されて話すわけではなく、ドサ廻りの小さなサーカス団で普通の動物のままのロバとして、可憐なカサンドラとコンビを組んで客席を魅了している。心優しいカサンドラが深い愛情を注ぎ、親身に世話を焼いているEOは、とても幸せそうに見える。しかし動物愛護団体の「調教は拷問だ」という過剰な反対