マガジンのカバー画像

Web版 2023年3月

12
2023年3月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9…
¥950
運営しているクリエイター

#emagazineLATINA

[2023.3]【境界線上の蟻(アリ)~Seeking The New Frontiers~6】 AD(山崎昭典 x drowsiness)feat. 鈴木昭男、安田敦美 / Ta Yu Ta I

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  2001年から03年にかけて日本のサウンド・アートの先駆者である鈴木昭男のアシスタントとしていくつかの作品の録音に関わり、その後も昭男氏が聴いている音を求めて京都北部の丹後半島に在住しながら活動を続けるギタリスト/作曲家の山崎昭典。05年にリリースされた彼の初のアルバム『RED FIELD』は、クラシック・ギターの演奏と電子音響を独自のスタンスで融合したもので、その研ぎ澄まされた響きに満ちたサウンドは、ポスト・クラシカル

[2023.3]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ㉜(最終回)】 資源 resources、波 wave、生命 life ― 太平洋諸島の音楽文化への旅の澪標 ―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  ミクロネシアから出発し、メラネシア、ポリネシアの島々へと東に航路をとり、ハワイから小笠原、沖縄、八重山諸島に折り返し、台湾へと西まで戻ってきた本連載記事。2020年8月から32回目にあたる今回は、太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープの総集編です。    青い空と美しい海、ダイビングなどのマリンスポーツやリゾート、体格のよいラグビー選手…本連載記事では、太平洋諸島と聞いて浮かぶさまざまなイメージを背景としつつ、遠景にある人々の営

[2023.3]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㊱】ジョビンが長く追い求めた、鳥の姿をした精霊 - Matita Perê

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  1973年。それまで、米国などで大きな成功を収めつつ、大手レコード会社のレーベルで作品を世に出してきたジョビンが、初めて自費制作を試みたアルバムがリリースされました。ニューヨークのスタジオで独自録音された、Matita Perê(マチータ・ペレー)です。  60年代初期までのボサノヴァ・ブームの流れの中では、恋心などをわかりやすい言葉で表現した歌が多く見られたジョビン。しか

[2023.3] 【島々百景 第81回】 端島 長崎県

文と写真:宮沢和史  江戸時代後期に長崎県沖で見つかった大規模な炭鉱を明治20年代に民間が買い取り、埋め立て工事をして人工島とした “端島(はしま)” をご存知だろうか? 島全体を護岸堤防で固め、採掘するための巨大な施設、そこで働く人達が家族単位で暮らすための団地や公共施設、映画館などの娯楽施設や神社なども完備された天空の城ならぬ、まさに海上の城...。その姿が軍艦土佐を連想させることから“軍艦島”という愛称で長い間親しまれてきた。人口の増加に伴い、島自体が拡張され、ピーク

[2023.3] 訃報|芸術性の高さで知られるブラジルのギタリスト、テオ・ヂ・バーホス(Theo de Barros)逝く

 その芸術性の高さで知られるリオ出身の作曲家、ギタリスト、アレンジャー、歌手のテオ・ヂ・バーホス(Theo de Barros|本名 Theofilo Augusto de Barros Neto)が、3月15日に、住んでいたサンパウロで亡くなりました。80歳の誕生日から5日後のことでした。死因は明らかになっていません。テオの息子で、テオと同じくギタリストとして活動し、近年の共作者でもあったヒカルド・バホス(Ricardo Barros)がSNSで公表しました。  来たる4

[2023.3]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2023年3月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Baul Meets Saz · Banjaraレーベル:Uren Production [8] 19位 Mahsa Vahdat & Skruk · Braids of Innocenceレーベ

[2023.3]フーベル(Rubel)というブラジル ─ アルバム『As Palavras Vol. 1 & 2』 解説

文●ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)  よりブラジル的でよりポピュラーに ⎯⎯ フーベル(Rubel)の3作目のスタジオアルバム『As Palavras Vol. 1 & 2〈邦訳:いくつかのことば Vol. 1 & 2〉』は、こういう印象を受ける。  フォーク (『Pearl』2013年) でデビューし、2 番目のアルバム (『Casas』2018年|「2018年ブラジル・ディスク大賞」関係者投票で1位) で MPB とヒップホップをミックスしたフーベルは、ポピュ

[2023.3]【追悼】プグリエーセ・サウンドの守護神 コロールタンゴのロベルト・アルバレスが逝去!

文●本田 健治 texto por Kenji Honda  実は今、古いダリエンソの名曲を現代に蘇らせてくれたラ・フアン・ダリエンソ楽団の日本での全国公演を終え、一緒に台湾に来ている。台湾ではすでに3公演終わったところだが、日本の様にタンゴをあまり聴くことがない、見ることのない台湾というのに、彼らは驚くほどの喝采をあびている。公演後は彼らの姿を求めるファンの興奮はすさまじい ……。  翌日、そんな彼らとホテルを出発する準備をしているところに、アルバレスを知るダンサーのガ

[2023.3]【新連載タンゴ界隈そぞろ歩き (1) 】サッカーとタンゴ

文●吉村 俊司 Texto por Shunji Yoshimura  最近のサッカーの大きな話題は、イングランド・プレミアリーグのブライトンで活躍する三笘選手の素晴らしい活躍であろう。一流のディフェンダーを軽々と抜き去るドリブルと絶妙のボールコントロールは、観る者を惹きつけて離さない魅力がある。  そんな彼が大活躍した2022年 FIFA ワールドカップが終わってから既に2か月。改めて振り返ると、日本チームの活躍とアルゼンチンの優勝という結末で、日本においてアルゼンチン

[2023.3]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㊴】 私が感じる全て — Todo o sentimento

文と訳詞●中村 安志  texto por Yasushi Nakamura  1987年、シコ・ブアルキは、自身のファーストネームを冠したアルバムFranciscoを制作した際、多くの曲で、粋なベテラン・ピアニスト、クリストヴァン・バストスの参加を得ました。このクリストヴァンと一緒に作った中でも、特に名作となっている「Todo o sentimento」は、シコの作品の中でも出色の美しいメロディーと歌詞が心を打ちます。  アルバム・リリースの翌年となる88年、TVグロー

[2023.3]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉜】Lucas Mamede 『Já ouviu falar de amor ?』

文:中原 仁  ルーカス・マメーヂは、北東部ペルナンブーコ州レシーフェ出身、現在20歳のシンガー・ソングライターだ。    ハイスクール時代の2020年から、SNS(Tik Tok)にギターを弾いて様々な曲を歌う映像をアップしたところ、これがバズり2021年、自作の3曲をデジタル・リリース。「Conto os dias」は Spotify で600万回近く再生されている。“まあ、なかなかイイんじゃないの” が正直な印象だったが、2023年2月にリリースしたデビュー・アルバム

[2023.3] 【映画評】 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 ⎯⎯ 荒唐無稽なおバカと人間の深い真理が融合した、心揺さぶる10年に1本の傑作

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 荒唐無稽なおバカと人間の深い真理が融合した、 心揺さぶる10年に1本の傑作 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  ダニエル・クワンとダニエル・シャイナート、二人のダニエルが共同で監督をする“ダニエルズ”。彼らの2016年以来久しぶりの、そして待望の新作が遂に公開される。前作『スイス・アーミー・マン』が日本で公開された2017年に、筆者は “アホでシュールで超カルトなのに、哲学的で心温まる王道の感動が溢れ出す、本当に