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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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#MPB

[2024.4]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊺】 『Jota.pê – Se o Meu Peito Fosse o Mundo』

文:中原 仁  ジョタ・ペー(Jota.pê)は、ジャヴァン、レニーニなどの音楽DNAを受け継ぐ新世代のシンガー・ソングライター、ギタリストだ。  ジャヴァンはアラゴアス州マセイオの、レニーニはペルナンブーコ州レシーフェの出身。ジョタ・ペーも北東部生まれかと思いきや、サンパウロ市の衛星都市、オザスコ出身。でも彼の音楽は、バイーア~北東部を基軸にUSAブラック・ミュージックにも呼応する、アフロ・ブラジリアンMPBだ。2024年3月、入魂のセカンド・アルバム『Se o Meu

[2024.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊸】 Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre 『Live at Grasshaus』

文:中原 仁  現在、ファースト・アルバム『SIM SIM SIM』のサイクルを終える国内ツアー中のバーラ・デゼージョ。“活動停止”、“解散” とは名言していないが、これがファイナル・ツアーで、4人のメンバーはソロやバンドの活動に戻るのだろう。そうなることは漠然と予期していたので、メンバーの一人(ルーカス・ヌネス)を欠いた編成ながら昨年、初来日が実現し、FESTIVAL FRUEZINHO2023で繰り広げた素晴らしいライヴ・パフォーマンスを生体験できたことは大きな喜びだっ

[2024.1]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊷】 Marisa Monte 『Portas (Ao Vivo)』

文:中原 仁  マリーザ・モンチが2023年12月、「2021年ブラジル・ディスク大賞」第1位を獲得した『Portas』のコンサートのライヴ・アルバムをデジタル・リリース、同時に公式映像もYouTubeに公開した。2022年から23年にかけて国内と欧米をめぐり、80超の都市で150超の公演を行ない、トータル50万人以上を動員した大規模なコンサート・ツアーの前半、2022年10月にマリーザの自宅があるリオのガヴェア地区、ジョッキークラブ(競馬場)内の会場、Arena Jock

[2024.1] 決定! ブラジルディスク大賞2023

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、28回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2023年ブラジル・ディスク大賞」。総数3,064通(前年比+131)の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。 関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。 関係者投票の順位は参考にとどめ、選者ごとのベスト10を通じ、ブラジル音楽に対す

[2023.10]26年ぶりの来日公演 〜シコ・セーザル インタビュー

インタビュー・文・写真●ラティーナ編集部 協力●KYOTOPHONIE PR事務局  9月の以下の記事でご紹介したように、シコ・セーザルがこの度26年ぶりに来日した。日本三景の一つである京都・天橋立で10月7日(土)・8日(日)の二日間開催された「KYOTOPHONIE ボーダレス・ミュージックフェスティバル 2023 天橋立」に出演した。  シコのステージを待ち望んでいた多くのファンももちろん来場していたが、彼のことを全然知らずにフェスに来たお客さんもいたようだ。シコと

[1996.11]シコ・セーザル 時代の寵児

インタビュー&文●国安真奈 colaborações especiais●ALDA BALTAZAR(POLYGRAM DO BRASIL), MARCOS FENTANES e DANIEL RODRIGUES  ブラジルはノルデスチ(北東部)、リオやサンパウロの大都会から見れば “地の果て” かもしれないパライバ州から、実に唐突に、シコ・セーザルはやってきた。唐突だが、彼は確実に次世代のブラジル音楽を担う旗手である。現在50の坂を登りつつある、カエターノをはじめとする

[2023.9] 廉価版シリーズの待望の続編!─ 「ブラジル音楽の秘宝」シリーズCD全16作品9/6リリース!

文●編集部  ブラジル音楽の豊富なカタログを有する Sony Music(RCA、 CBS )の音源から16タイトルが厳選され、定価1400円(税込)という購入しやすい価格で販売される「ブラジル音楽の秘宝」シリーズが9月6日にリリースされました。大変話題になった2016年7月の「ブラジル・コレクション1000」以来、Sony Musicから、7年ぶりに登場したブラジル音楽CDコレクションです。  選盤はブラジル音楽ガイドブック「MUSICA LOCOMUNDO」で、世界中

[2023.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉞】Julia Mestre『ARREPIADA』

文:中原 仁  2022年、男女4人組のバーラ・デゼージョがリリースしたファースト・アルバム『SIM SIM SIM』は日本でも大きな話題となった。年末には日本独自にCDがリリースされ、「2022年ブラジル・ディスク大賞」一般投票で第1位を獲得。音楽関係者部門でも1位に1票差の2位にランクインした。そして2023年7月に初来日が実現、「FESTIVAL FRUEZINHO 2023」に出演する。  バーラ・デゼージョの一員で、そもそもパンデミック期間中の2020年に共同

[2023.3]フーベル(Rubel)というブラジル ─ アルバム『As Palavras Vol. 1 & 2』 解説

文●ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)  よりブラジル的でよりポピュラーに ⎯⎯ フーベル(Rubel)の3作目のスタジオアルバム『As Palavras Vol. 1 & 2〈邦訳:いくつかのことば Vol. 1 & 2〉』は、こういう印象を受ける。  フォーク (『Pearl』2013年) でデビューし、2 番目のアルバム (『Casas』2018年|「2018年ブラジル・ディスク大賞」関係者投票で1位) で MPB とヒップホップをミックスしたフーベルは、ポピュ

[2023.2] 『ブラジリアン・ミュージック200 - 200 Canções da Música Ppular Brasileira』 出版 著者インタビュー

●ラティーナ編集部  ブラジル独立200周年を記念して、広大で豊かなブラジル音楽の歴史から名曲200曲をセレクトし、その曲についてのエピソードや解説なども交えた名曲事典ともいえる書籍が出版されました。著者は、J-WAVEの人気FM番組「サウージ!サウダージ」のプロデュースを長年手がけ、ラティーナでもおなじみの中原 仁さん。今回、この書籍の出版にあたってお話を伺いました。 ◇ ── 本書を出版することになった経緯について教えてください。 中原 2021年の秋の時点でブラ

[2023.1] 決定! ブラジルディスク大賞2022

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、27回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2022年ブラジル・ディスク大賞」。一般投票(総数2,933票)、関係者投票のベスト10が決定しました。 ビッグ・アーティストの新作リリースが重なり、過去5年間で最多得票となった2021年には及ばなかったが、2020年を上回る得票数となった。投票に参加してくださった皆様、ありがとうございました。 関係者投票は18名の選者が各10作品を選出し、1位

[2022.11]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉟】 上からでも下からでも読める歌詞 — Corrente

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  シコ・ブアルキは、ポルトガル語の歌詞を、実に巧妙に操ります。多くの作品において、誰かを批判した内容であるのに、そう見えない歌詞になっていたり、文脈や着眼点次第で二重三重にも異なる意味を感じ取ることができる複雑な作品があったりと、卓越した技を見せてきたことについて、この連載で何度かご紹介してきました。  中には、体制批判の歌に数えられる作品とみられつつも、表面上は一切非難する

【追悼】[1998.06]ガル・コスタ、女王の全ディスコグラフィ

文と資料●中原 仁 本欄ご紹介作品中、◯つきの番号のアルバムが単独リーダー作。 ●特記のあるもの以外、すべてCDの番号です。 1 カエターノ、ガル、ジル&ベターニア 参加曲目: ② EU VIM DA BAHIA ④ PRA QUE MENTIR? ⑥SOL NEGRO ⑧ SIM, FOI VOCÊ ⑪ SORTE まだマリア・ダ・グラッサと名乗っていた時代の66年に発表したデビュー・シングルが「エウ・ヴィン・ダ・バイーア」(ジル作)と「シン、 フォイヴォセー

【追悼】[1998.06]ガル・コスタ 彼女の歌人生を集約した最高のショー『アクースチコ』

文●本田健治 texto por KENJI HONDA  俺はガル・コスタのショーに関しては、ほとんどすべて観てきているけれど、今度の「アクースチコ」は凄い。レパートリー、ミュージシャン、アレンジどれをとっても、彼女のキャリアの中でも恐らくベストのショーと言えるんじゃないか。でも、これをやってしまったら、後が心配だ。何故かって、このショーはガルの今までのキャリアの中でのいわゆる名演、名唱と言われた曲をすべて網羅した、ある意味ではベスト・アルバムみたいなものだ。ここ数年の彼