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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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#MPB

[2025.1]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 53】 Erasmo Carlos 『Erasmo Esteves』

文:中原 仁  「2024年ブラジル・ディスク大賞」関係者投票部門の7位が、故エラズモ・カルロス(1941~2022/11/22)の『エラズモ・エステーヴェス』。2024年のラテン・グラミーで「ポルトガル語によるロックもしくはオルタナティヴ・音楽部門」のベスト・アルバムに選出された。   エラズモは存命中、ニューアルバムの録音に向けて新曲を作り、共作も行なっていたが、志半ばで天国に旅立ってしまった。その後、制作途中のデモ音源などを息子のレオ・エステーヴェスが収集。未完成だ

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票③

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●中原 仁9月号の連載で激賞した1位のリニケルは、10年に1枚レベルの傑作! 2023年12月号の連載で激賞した2位のアギダヴィ・ド・ジェージは、バイーア打楽器音楽隊の新機軸!このほか10位のグルーポ・オファーなど、アフロ・バイーアの傑作が多かったことが2024年の最大の特徴。5位は4月号、6位は10月号、8位は6月号の連載で紹介してます。故エラズモ・カルロスの「Erasmo

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票④

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●MAKOミルトン・ナシメントと実力派ジャズ・ベーシスト&シンガーのエスペランサが、世界へブラジル音楽界の伝説を織り込んだ1. 。現代の粋なサンバ・カリオカで堂々と心を惹きつける、魅力あるペドロ・ミランダのアルバム2. 。ブラジルのシニアアイドル、シコ・ブアルキのとエドゥ・ロボに感謝の気持ちを込め乾杯! 3. 4. 。ダニ&デボラの親子が、ブラジル最高の19人編成のビッグバン

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票②

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●島田愛加R&Bにブラジル色が濃くなったリニケル①は国内でも最高評価!他にもジョタペ⑨やエラズモ追悼③の参加アーティストなど新世代の人気が安定してきた印象です。リスト外選出のブラズー⑤は室内楽+エレキギター編成でインスト好きは必聴。20年活動しているバイーアの打楽器集団の初録音②やグラミー受賞の⑦を発表したホシナンチレーベルには来年も注目です!アニッタ⑧は歌詞はさておき初期フ

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票①

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●麻生雅人オス・ガロチンは10年の1度の逸材。個人的には2位以下との点数差はかなり大きい。アギネス・ヌニスは2作目で、より表現の幅を広げてきた。ソウル界のキーパーソンの一人シウヴェラ、ディーヴァのジャマー、ソングライターのアンドレ・モッタによるトリオ・ユニットのヴェルチシ、ミナス出身のアウグスタ・ヴァルーナ、スタジオ録音アルバムはまだ未発表のドウギ・オー、フォーキーなイヴァン

[2025.1] 決定! ブラジルディスク大賞2024

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、29回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2024ブラジル・ディスク大賞」。総数2,962通の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。 関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。 2024年は、ミルトン・ナシメントとエスペランサのコラボレーション・アルバム『ミルトン+エスペラサ

[2024.12]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 53】 5 a Seco 『Sentido』

文:中原 仁  2000年代後半から2010年代に頭角を表した、ノヴォス・コンポジトーレス(新しいコンポーザーたち)と総称されるサンパウロの新世代。そのキーパーソン、ダニ・グルジェルとハイスクールの同級生だったト・ブランヂリオーニ、ヴィニシウス・カルデローニのほか、ペドロ・アルテーリオ、ペドロ・ヴィアーフォラ、ダニ・ブラッキ。この5人のシンガー・ソングライターが2009年に結成したバンド、シンコ・ア・セコ。当時は全員、20代前半だった。  当初は、ライヴのために期間限定で

[2024.11]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 52】 Marcelo D2 & SambaDrive 『Direct-to-Disc』

文:中原 仁  リオのヒップホップ・ユニット、プラネット・ヘンプのリーダー、マルセロ・D2(デードイス)はファースト・ソロ・アルバム『Eu Tiro É Onda』(1998年)以降、ヒップホップとサンバの融合の第一人者として新たな地平を切り開いてきた。  2017年、ピアノ・トリオと共演した6曲のスタジオライヴ・セッション『Marcelo D2 & Samba Drive - Living Room Live Vol.1』をYouTubeで公開。DJなし、生バンドに乗っ

[1998.11]ゲットーの声をラップする90年代のクールなカリスマ 〜マルセロD2インタビュー〜

文:中原 仁 マルセロD2が語るプラネット・ヘンプ、ナサゥン・ズンビ、そして初のソロ・アルバム  リオのストリート世代を代表するグループのひとつが、その名も「マリファナ惑星」と名乗るプラネット・ヘンプ。ハードコアなロックやファンク、ヒップホップを土台にサンバのエッセンスも織りまぜつつ、ドラッグ、貧困、犯罪、政治の不正といったブラジル社会の暗部を鋭くえぐり出してラップする。リーダーにしてラッパーで歌詞も書くマルセロ・D2(デードイス)は、ゲットーの若者から始まって裕福な階層

[2024.10]ブラジル人ピアニストヒカルド・バセラールと、歌手レイラ・ピニェイロがジョアン・ドナートに捧げるアルバムをリリース!〜ドナートが亡くなる前に遺した未発表曲も収録〜

 ブラジル人ピアニスト/作曲家/音楽プロデューサーのヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)が、歌手のレイラ・ピニェイロ(Leila Pinheiro)とタッグを組んで制作したアルバム『Donato』がリリースされた。配信も9/27から始まっている。  アルバムタイトルからわかるように、本作はブラジルの音楽家で昨年7月に亡くなったジョアン・ドナートの楽曲が新たな解釈で収録されている。生きていれば、今年の8月17日で90歳の誕生日を迎えるはずだった。  本作の

[2008.2]《今年はジルに抱擁を!》日本ブラジル交流年に、ジルベルト・ジルの来日決定

文●花田勝暁 「誰彼なく一緒にやろうと持ちかけ、説得してやるのが好きなんだ」というジルベルト・ジルは、まさに40年以上ブラジル音楽シーンをリードしてきた張本人だ。彼程どんなジャンルのミュージシャンと共演しても、しなやかに映るミュージシャンはいない。  2003年から現在(2008年)まで、労働党ルーラ大統領の下、文化大臣を務める。音楽家としての最新録音作は2004年の『エレトラクースチコ』で、シコ・ブアルキやカエターノ・ヴェローゾという盟

[2024.8]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊾】 Alaíde Costa 『E o Tempo Agora Quer Voar』

文:中原 仁  2024年の12月で89歳を迎える歌手、アライーヂ・コスタ。50年からプロ活動し、最初はボレロを中心に歌っていたが、50年代末、ジョアン・ジルベルトの手引きでボサノヴァ人たちを紹介されてボサノヴァ歌手となった。音楽仲間からリスペクトされる存在だったが、黒人であるため名声に見合った仕事を思うように得ることができずにいた。  その後、音楽の幅を広げ1972年、ミルトン・ナシメントの『Clube da Esquina』に参加して歌った「Me Deixa em P

[2024.4]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊺】 『Jota.pê – Se o Meu Peito Fosse o Mundo』

文:中原 仁  ジョタ・ペー(Jota.pê)は、ジャヴァン、レニーニなどの音楽DNAを受け継ぐ新世代のシンガー・ソングライター、ギタリストだ。  ジャヴァンはアラゴアス州マセイオの、レニーニはペルナンブーコ州レシーフェの出身。ジョタ・ペーも北東部生まれかと思いきや、サンパウロ市の衛星都市、オザスコ出身。でも彼の音楽は、バイーア~北東部を基軸にUSAブラック・ミュージックにも呼応する、アフロ・ブラジリアンMPBだ。2024年3月、入魂のセカンド・アルバム『Se o Meu

[2024.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊸】 Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre 『Live at Grasshaus』

文:中原 仁  現在、ファースト・アルバム『SIM SIM SIM』のサイクルを終える国内ツアー中のバーラ・デゼージョ。“活動停止”、“解散” とは名言していないが、これがファイナル・ツアーで、4人のメンバーはソロやバンドの活動に戻るのだろう。そうなることは漠然と予期していたので、メンバーの一人(ルーカス・ヌネス)を欠いた編成ながら昨年、初来日が実現し、FESTIVAL FRUEZINHO2023で繰り広げた素晴らしいライヴ・パフォーマンスを生体験できたことは大きな喜びだっ