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[2024.12]【新刊案内】『新しいメキシコ・ガイド』 〜 食と器と建築に目がないデザイナーとメキシコシティに18年間住むライターの二人三脚で贈る偏愛的案内

文●編集部

 メキシコの3都市、メキシコシティ、プエブラ、オアハカのガイドブック『新しいメキシコ・ガイド』が11/1に刊行されました。月刊ラティーナの頃からメキシコ音楽を紹介してくれていたメキシコ在住のライター長屋美保さんと、東京在住のデザイナー福間優子さんの共著で、今までになかったとびきりのメキシコを紹介するガイドブックです。

 先住民と移民の文化がミックスする料理、カラフルで美しい手仕事の民芸品、ローカルの人たちが日々訪れる商店や市場、最先端の建築デザインによる図書館や施設、ルイス・バラガン、フリーダ・カーロ、ダビッド・アルファロ・シケイロス、ディエゴ・リベラなど20世紀メキシコ文化の担い手たちの思い出の場所......、従来のガイドブックが教えなかった、伝統的かつ新しい、美しくかつ美味しいメキシコのスポットを取り上げています。

 メキシコ好きの皆さんはもちろん、これからメキシコに行かれる方や、メキシコに行ってみたいと憧れを募らせている人にぜひ読んでいただきたく、今回ご紹介します。

 著者のお二人にメールインタビューを行い、この本についてお尋ねいたしました。

── この本は、東京在住のデザイナー福間優子さんと、メキシコ在住のライター長屋美保さんとの共著ということですが、お二人でこの本を作ることになったきっかけを教えてください。

福間優子 15年ほど前、オアハカの民芸に興味をもち、オアハカに行く経由地としてメキシコシティに数日滞在しました。その時に、長屋さんと知り合って案内していただいたのですが、長屋さんが案内してくれたメキシコシティがとても魅力的で次第にはまっていきました。
 当時、今ほどSNSが発達していなくて、本や雑誌に掲載されている情報を頼るしかなかったのですが、長屋さんが連れて行ってくれたのは、地元の人で賑わうバーや食堂にパン屋さん、古本屋やライブハウス、市場など。ガイドブックにはあまり取り上げられていないけど、メキシコシティの日常がつまっていて魅力的な場所ばかりでした。
 私は普段書籍のデザインをしているので、いつか他にはないこのような情報が載っているガイドブックを作りたいとずっと考えていて、ある時にその事をインスタグラムで何気なく書いた所、筑摩書房の大山さんが声をかけてくださり、出版できる事になりました。本当に感謝しています。

── パンデミック前から企画されていたとのことですが、渡航できなかったパンデミック中は、制作はストップしていたのでしょうか?また、ご苦労された点などがありましたら、教えてください。

福間優子 パンデミックの前に1年かけて、長屋さんとメールで何度もやりとりをしながら、取材する店のリストを作りスケジュールを組んでいました。あとは出発するだけという状態で出発1ヶ月をきった所でロックダウンになってしまって、ホテルや飛行機など全てキャンセルする事になりました。パンデミックが落ち着いた後は閉店してしまった店や、街の状況が一変してしまい、またゼロから計画をしなおす事になってしまいました。そして2年半ぶりにメキシコシティに行くと、お店ではみんなマスク姿だったので、思い描いていた写真がとれず苦労しました。

長屋美保 パンデミック中は制作はストップし、後に再開したのですが、結局1年以上かかっていると思います。あまりに長い制作期間だったのと私だけ遠隔地だったので、テンションを保つのが大変でした。苦労の連続でしたが、無事に本が出せたので報われた思いです。

── 観光客向けのお店というよりは、土地の人々に愛されているお店が多く掲載されている印象を受けました。美味しいものを出すお店だけでなく、空間を楽しむことができる場所も掲載されており、そのどれもがとても魅力的です。これらはどのようにして選んだのでしょうか?お二人それぞれ好きなところを選んだのですか?

福間優子 最初にも触れたように、そもそものコンセプトが、長屋さんが私に案内してくれたように観光地だけではないガイドブックを作りたいと思ったのがきっかけだったので、自然にそのような店や場所のピックアップになったのだと思います。
 お店は、メキシコシティは長屋さんがリサーチしてくださってピックアップしていただき、私も実際に行ってみて、もともと建築やインテリアも好きだったので、居心地のよさも大切にしつつ、このガイドブックのシリーズにあうか、はじめて行く日本人にも行きやすい場所かなど、観光客としての目線も考えてセレクトしました。中には、それぞれが特別に思い入れのある好きな場所も含まれています。オアハカやプエブラは友人などにもリサーチしつつ、実際に行ってみてよかった所、取材した時にたまたま出会った素敵なお店もあります。

長屋美保 優子さんと私でお互いにリストアップした中で、最終的には優子さんと編集の大山さんが判断している感じです。長い間日本を離れている私の感覚だと日本の読者とずれがあるので…(苦笑)

── 掲載されている食べ物が本当に美味しそうです!伝統的なものはもちろん革新的な料理なども掲載されていて、バラエティ豊かでとても面白かったです。これらを選んだポイントなどがあればお聞かせください。

福間優子 最近、日本でも小麦粉ではないトルティージャのメキシコのタコスを出す店もふえて、人気がてできた印象があります。とはいえ、まだまだメキシコ料理は日本人にとって馴染みがうすいので、まずはメキシコといえばという伝統的な料理はおさえつつ、現代的にアレンジされた日本人にとっても食べやすい今のメキシコのトレンドも積極的に掲載しました。
 またオアハカでは、食関係の仕事をしている食いしん坊の友人などにもリサーチして、ここは絶対においしいというお店を厳選しています。

── 写真がとても美しいです。民芸品や雑貨をはじめ、調味料の瓶までもがとっても可愛くておしゃれ。伝統的なものと洗練された今どきなものが混在しているのがとてもよかったです。他のガイドブックとは異なり、写真集としても楽しめそうな本ですね。それは意識して作られたのでしょうか?
特に「いつでも塗り直しOKな看板」でが面白い視点でした。たしかに絵になる街だな、と思い、大変興味深かったです。
(※「いつでも塗り直しOKな看板」については、実際に本でお確かめください。素敵な写真がたくさん掲載されています。)

福間優子 ありがとうございます。とくに写真集として、という意識はなかったですがこういう所が好き!という部分にフォーカスがあたっているのだと思います。洗練されていてるけれど、土っぽさもあって、ユニークで、その雰囲気が少しでも伝わったらいいなと思い、撮影しました。
 「いつでも塗り直しOKな看板」は、はじめてメキシコに来た時からおもしろいなと感じて、ずっと撮りためていた写真です。

── この本についてメッセージをお願いいたします。

福間優子 この本が旅に出かけたくなるきっかけになったら、うれしいです。少し偏ったガイドブックですが、友人におすすめを伝えるような気持ちで作りました。
 是非あなたのお気に入りをみつけて、いいところがあったら教えてください!そして行かれる時はくれぐれも注意しながら、楽しんでください。

長屋美保 メキシコを楽しんでほしい、好きな部分を共有したい、その一心で作りました。優子さんの素晴らしいデザインのおかげで、街の空気感も伝わってくるものになったと思います。楽しんで読んでいただければ嬉しいです。

 メキシコを愛する2人により作られたメキシコ愛溢れるガイドブック。写真もとても美しく、デザインも素敵で、今すぐ現地に行きたくなってしまいます。
現地の細かな情報も書かれているので、メキシコへ訪れる際には必携です!細かな現地の情報や、地図を表示できるQRコードも掲載されています。

 メキシコ旅行の予定がある方、いつか訪れることを夢見ている方に、また行く予定の無い方も読み物として楽しめる本です。ぜひご覧ください!

著者紹介
長屋美保(ながや・みほ)
ラテンアメリカの文化に惹かれ、2007 年よりメキシコシティに在住。ライターとしてラテンの文化や社会を追いかける。メキシコシティで夫とともにアジア食堂を経営。
http://mihonagaya.hatenablog.com/

福間優子(ふくま・ゆうこ)
デザイナー。料理本や暮らしにまつわる書籍の装幀、手帳やパッケージなど紙もの全般のデザインを手がける。メキシコの伝統と洗練とかわいらしさが混じった魅力にはまっている。
instagram.com/yodel_hakase

(ラティーナ2024年12月)


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