[2021.05]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」⑩】 Domenico Lancellotti『Raio』
文●中原 仁
───── 中原仁の「勝手にライナーノーツ」─────
近年、日本盤の発売が減少し、日本における洋楽文化の特徴である解説(ライナーノーツ)を通じて、そのアルバムや楽曲や音楽家についての情報を得られる機会がめっきり減った。
また、盤を発売しない、サブスクリプションのみのリリースが増えたことで、音楽と容易に接することが出来る反面、情報の飢えはさらに進んでいる。
ならば、やってしまえ!ということで始める、タイトルどおりの連載。
リンクを通じて実際に音楽を聴き、楽しむ上での参考としていただきたい。
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2019年、政府が悪化したブラジルからポルトガルのリスボンに転居したドメニコ・ランセロッチが2021年3月末、ポルトガルのレーベルから新作『Raio』を発表した。タイトルの意味は「光線」。デジタル・リリースでCDは出ていないが、5月末にアナログ盤が限定発売される。
名実共に2000年代のブラジル音楽の到来を告げたモレーノ・ヴェローゾ、カシンとのユニット、+2を経て、ドメニコは2010年代、ドラムス/パーカッションで参加したアドリアーナ・カルカニョットの『O Micróbio do Samba』(2011年)、ジルベルト・ジルの『Gilberto's Samba』(2014年)、プロデューサーもつとめたをダニロ・カイミの『Don Don – Canta Dorival』(2016年)といった名作アルバムを通じ、リズム・クリエイターとしての独創性を確立した。その独創性は、90年代のマルコス・スザーノに匹敵する。
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