[2022.8] 【島々百景 第74回】 能登半島 能登島(石川県)
文と写真:宮沢和史
能登半島は実際に行ってみるとよく分かるが、広大な面積を誇るからこそ沢山の表情を持っていて、自然が豊か、見どころ満載、取り囲む海も場所によってその雰囲気は様々。食べ物も豊富で奥能登と呼ばれる半島の先端部分では美味しい日本酒を堪能できる。1つの地域でこれほど多様性のある旅が楽しめるのは嬉しい。だが、「今度能登に旅行に行くんだ」という声をあまり聞いた記憶がないし、それがなんとも不思議で仕方ない、いくつか理由があるんだと思う。まず地理的な理由。かつて越前・越中から分離した加賀と能登は現在石川県となっているが、地図を見ると半島の入り口? ふもと? の部分は西の金沢、東の富山に挟まれる形になってるのがわかる。金沢と富山という大変魅力的な二大観光地に挟まれたとあっては部が悪い。そこからもう一歩二歩と脚を伸ばすのにはさらなるエネルギーが必要なのは火を見るよりも明らかだ。日本社会特有の短い旅程では、もう一歩踏み込むというよりも金沢にもう一泊留まりたい、そう思うのが自然だ。要するに能登半島は広大過ぎて旅行者にとっては思った以上に奥深く、なかなか手に負えないと思ってしまいがちなのではないだろうか? 数日間で金沢や富山と能登をセットにして旅をしようとするのは不可能だと思う。能登を旅するなら能登だけに絞って旅をした方が何倍も充実した時間が持てる。しかし、繰り返すようだが金沢や富山湾の魅力的な海の幸や観光資源に恵まれた場所に阻まれてしまっていることからは逃れられない。そして、広大であるから “ぶらり旅” には向いていない。車がないと能登の魅力を紐解くことが困難なのである。能登と加賀の境界線である大海川付近から奥能登の珠洲市まではなんと100km強もある。高速道路ではないので一時間半はかかると思われる。だが、それは一直線に向かった場合の話で、西側に位置する増穂浦、南東部の七尾市、そして、漆器で有名な輪島、奥能登、そこから東海岸を南下して南東部の七尾市に下りてこようとすると運転だけで5時間はかかるだろう。とはいえ、能登には空港がある、そう、立派な能登空港が。例えば羽田空港からだったら1時間で到着してしまう。小松空港よりかすかに短いくらいだ。ただ、便数が少なく安価な航空運賃での移動は難しい。それも多くの人が小松空港を選んでてしまう理由の1つだろう。
半島の中央よりやや北部に位置する能登空港はとても立地条件が良い。空港に着いたら自動車を借りれば簡単に能登の旅がスタートする。30~40分も走れば先に述べた主要な場所にそれぞれ行くことができる。そのうちのどの地域に宿泊するかで旅の趣もガラッと変わってくるだろう。そう、能登はドライブで旅するには最高の場所なのだ。
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