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Web版 2022年8月

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2022年8月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9… もっと読む
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記事一覧

[2022.8]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ㉕】 ハワイと小笠原―クジラが繋いだ歴史の始まり―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  それは、1830(天保元)年のことでした。江戸から南に1,000㎞ 離れた無人島ボニン・アイランズ Bonin Islands に、サンドウィッチ Sandwich 諸島から欧米の男性5名(アメリカ人2名、イギリス人2名、デンマーク1名)と太平洋諸島の男女計20名(一説では、男性10名および女性5名)が入植したのです。目的は、捕鯨船の薪水供給地の確保。枯渇した大西洋のセミクジラとホッキョククジラに代わって、輝度の高い脳油がとれるマッ

[2022.8] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉜】お家芸サッカーの名選手に捧ぐ - 《O futebol》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  今回は、サッカーを題材に作られた、シコの楽しい歌、「O futebol(1989年作)」をご紹介します。  ブラジルといえば、世界に誇る数々の天才プレイヤーを生み出し、ワールドカップでも通算5度の優勝を果たしたサッカーは、伝統あるお家芸。そんなこの国では、ポップソングの歌詞にも、古くからサッカー(futebol)という言葉やそれをめぐる人物名などが、よく登場します。 ↑「

新作 『Fazer e Cantar』をリリース ─ ヂアナ・オルタ・ポポフ(Diana HP) インタビュー ─ ミナス音楽を21世紀にアップデートする宝石のような才能

 正統ミナス音楽を21世紀にアップデートする宝石のような才能、ヂアナ・オルタ・ポポフ(今作から欧文表記は“Diana HP”に)が、2018年の『Amor de Verdade』以来となる3rdアルバム『Fazer e Cantar』を完成させた。弊社が国内盤でリリースした(2022年8月29日発売)。 インタビュー・文 花田勝暁  今作は、2013年以来、ヂアナが生活と活動の拠点としているフランスで全編が録音された初めてのアルバムだ。ベーシストで、ヂアナの公私共のパート

[2022.8] 【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉙】オリジナルは悲しく、英語版は明るく - 《Estrada branca》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ボサノヴァの皮切りとも位置付けられるエリゼッチ・カルドーゾのアルバム『Canção do amor demais』は、収録曲の中でも飛び抜けて象徴的存在となった名曲「Chega de saudade」(この連載26回目)だけでなく、25回目でご紹介したヒット曲「Outra vez(またしても)」など、全曲ジョビンの作曲かつヴィニシウス・ジ・モラエスの作詞による作品で占められ、

[2022.8] 【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉛】 無念にも先立っていった人への慕情 - 《Pedaço de mim》(私のひとかけら)

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  シコが作った演劇『ならず者のオペラ(Ópera de malandro)』の中で歌われる1曲に、とても物悲しい歌があります。息子が軍政時代に罪もなく捕えられ、帰らぬ人となった、ズズ・アンジェルという実在の女性のことを思い書いた「Angelica」という作品(この連載の27回目の中で、ご紹介しました。)と並び、失われた尊い命への慕情を重く表現する1曲を、劇中に仕込んだものです。

[2022.8] 【島々百景 第74回】 能登半島 能登島(石川県)

文と写真:宮沢和史  能登半島は実際に行ってみるとよく分かるが、広大な面積を誇るからこそ沢山の表情を持っていて、自然が豊か、見どころ満載、取り囲む海も場所によってその雰囲気は様々。食べ物も豊富で奥能登と呼ばれる半島の先端部分では美味しい日本酒を堪能できる。1つの地域でこれほど多様性のある旅が楽しめるのは嬉しい。だが、「今度能登に旅行に行くんだ」という声をあまり聞いた記憶がないし、それがなんとも不思議で仕方ない、いくつか理由があるんだと思う。まず地理的な理由。かつて越前・越中

追悼:宮田茂樹(音楽プロデューサー)

文:中原 仁  7月29日、音楽プロデューサー宮田茂樹さんが、急性心筋梗塞のため72歳で逝去された。宮田さんは長年にわたって病魔と戦ってこられ、4月に緊急入院。ペースメーカーを装着して退院後、SNSを頻繁に更新していたので順調な回復がうかがえ、ひと安心していたのだが……。心よりご冥福をお祈り申し上げたい。  宮田茂樹さんといえば “ジョアン・ジルベルトを日本に呼んだ人物” として知られている。“ジョアンの完璧な信頼を得た人物” でもあるが、それ以前、90年代からさまざ

[2022.8]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年8月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Kobo Town · Carnival of the Ghostsレーベル:Stonetree [16] 19位 Amélia Muge · Améliasレーベル:Uguru [8] 18位

[2022.8]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉕】 Beatriz Azevedo & Moreno Veloso『Clarice Clarão』

文:中原 仁  “閃光(きらめき)クラリッシ”。そう訳せば良いだろうか。『Clarice Clarão』は、ベアトリス・アゼヴェドとモレーノ・ヴェローゾが組んで、ブラジル文学を代表する作家、クラリッシ・リスペクトル(1920~1977。日本ではクラリッセ・リスペクトルと表記されることが多い)に捧げたアルバムだ。  ベアトリス・アゼヴェドはサンパウロ生まれ。大学で演劇を学び、1992年、オズヴァルド・ヂ・アンドラーヂとマリオ・ヂ・アンドラーヂが主導して1922年に開催しブラ

[2022.8] 【映画評】 『彼女のいない部屋』『みんなのヴァカンス』⎯⎯ フランスが世界に誇る二人の監督の最高傑作! 小粋で真逆な愛の物語に酔い痴れる。

『彼女のいない部屋』『みんなのヴァカンス』 フランスが世界に誇る二人の監督の最高傑作! 小粋で真逆な愛の物語に酔い痴れる。 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  映画が好きで観続けている理由は単純だ。脚本の面白さ、画作りの美しさ、俳優の素晴らしさ、描かれたテーマへの共感、そして語り口の斬新さ等々、心揺さぶられる新たな表現に出会いたい、という思いからだ。もちろん良い映画は、それら多くの要素が高い次元でバランスよく結び付いているものだが、その中でも特に斬新な語り口を持った作

[2022.8]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉘】 眼と眼が合えば - 《Pela luz dos olhs meus》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ジョビンが、女性歌手ミウーシャ(シコ・ブアルキの姉。ジョアン・ジルベルトの妻でもあった)とのデュエットで「結婚しなきゃ、結婚しなきゃ」と繰り返しながら笑顔で締めくくる名曲、「Pela luz dos olhos teus(君のまなざしの輝きに)」。この歌が、カネカン劇場のライブなどで喝采を浴びたのは、ミウーシャとジョビンの名アルバムが出された1977年のことでした。お茶目さた