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[2022.2] 青木菜穂子 ⎯ ソロピアノ・アルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』

文●花田勝暁

青木菜穂子

 「セレステ・セプテット(Celeste Septet)」「クアルテート・コンフェイト(Cuarteto Confeito)」「オルケスタ・アウロラ(Orquestra Aurora)」などで活躍するピアニストの青木菜穂子が、ピアノ独奏を中心とするソロアルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』を2月15日、リリースした。

  収録曲は以下の通りで、タンゴの名作①③⑦⑩の他、青木のオリジナルの新曲②⑥⑨、ワルツの名作④、フォルクローレ・ピアニストのアリエル・ラミレスによるサンバ⑧、熊田洋の作品⑤は熊田とのピアノデュオの演奏だ。

① Nunca tuvo novio (Agustin Bardi)
② Florece en la madrugada (Naoko Aoki)
③ Soledad (Carlos Gardel)
④ Caseron de tejas (Sebastian Piana) 
⑤ Filomela (Hiroshi Kumata) ※ピアノデュオ曲
⑥ Tardes lejanas (Naoko Aoki)
⑦ Tierra querida (Julio De Caro)
⑧ Zamba de usted (Ariel Ramirez)
⑨ La Estanciera (Naoko Aoki)
⑩ Lucecitas de mi pueblo (Enrique Delfino)

ゲストミュージシャン:熊田洋 pf.comp  河崎純 cb  相川瞳 vib.per
青木菜穂子『tardes lejanas』~遥かなる午後

▪︎2022.2.15 release
青木菜穂子『tardes lejanas』~遥かなる午後
bishop records EXAC014 2500円(+税)

遠ざかるあの午後の風景―。清閑にして繊細な、少しノスタルジックな音の雫達。ピアニスト・作曲家、青木菜穂子による最新アルバム。

ご購入はこちらから。(本作の配信予定はないということです)
http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXAC014.html
https://celeste.phono.co.jp/contact/

art design 古谷悠子
produce 近藤秀秋

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“グルーブ感、抒情性、ほのかな感傷、力強さやスケールの大きさ…
このアルバムにはタンゴピアノのエッセンスがつまっている”
(PaPiTa MuSiCa 西村秀人)
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 音楽的には、日本でクラシックとジャズを、アルゼンチンでタンゴとモダン・フォルクローレを吸収してきた青木が、それらすべてを作編曲と演奏表現に還元しつつ、淡々と日々を過ごす中での等身大の希望が、青木菜穂子の、装飾の少ない、しかし一音一音の冴えたピアノの音によって表現されていると思う。

 本作の制作に関して、青木菜穂子にインタビューを行った。

⎯⎯ 今回のアルバムを録音することになった経緯を教えてもらえますか。

青木菜穂子 以前よりソロピアノでのCDを作ったらどうかというお声を少しいただいていて、でも難しいなとなかなか実現しなかったのですがコロナ禍でいろいろ中止になり時間が出来たので1人書いたり弾いたりしていたものをミニアルバムにしてみようと思いつきbishop recordsさんに相談したところとんとんと話が進みました。思ったよりコロナが長引いて曲がたまったのでもう一度スタジオで録音し、ミニアルバムからフルアルバムに変わりました。

⎯⎯ カバー曲の選曲基準を教えてください。

青木菜穂子 ピアノソロに合いそうなメロディの綺麗なタンゴやサンバの曲、今回しっとりしたアルバムを作りたかったのもあります。作曲家は被らないようにしました。
 7曲目「Tierra querida (Julio De Caro)」だけはピアノソロで弾くイメージが個人的に無かったのですが1枚目の自己名義のアルバムタイトルでやはり好きなのもあり試しに編曲してみたものです。
 有名曲を入れなければ等は全然考えませんでしたが、熊田さんとのピアノデュオだけは始めから入れたいと考えていました。

⎯⎯ オリジナル曲3曲の作曲のきっかけを教えてください。

青木菜穂子 「Florece en la madrugada」⎯ 特にないのですが何となく弾いていて出来た曲で、後半で曲が止まるあたりで花がポンと咲くような場面があったのでこのタイトルに。この曲をvibで弾いてもらいたくて相川さんに入ってもらいました。

 「Tardes lejanas」⎯ 何も起こらない平和なパンパの午後をイメージしています。ブエノスにいた頃、エスタンシア(大きな農園・家)にたまに遊びに行っていてそのゆったりした時間の流れを曲にしています。milonga pampeanaのリズムで。(とはいえアルバムではcbがジャズ寄りの方なのでリズムはあまり前面に出ていません。ソロではもっとミロンガの感じです)懐かしさも込めてこのタイトルに。

「La Estanciera」⎯ ブエノスで一緒のバンドにと声をかけてくれたコントラバス奏者が亡くなって10年近くなり、その友人とのたくさんの想い出を曲にしました。
 今回、ピアノソロのアルバムの予定でしたが、やはりこの曲はコントラバスに入っていただきたいなと、学生時代からの友人コントラバス奏者河崎純さんにお願いしました。「エスタンシエラ」とは車のメーカー名で彼自慢のエスタンシエラで仕事に気分転換にとよく乗せてくれました。エアコン無しワイパー動かず不穏な音がいつも聞こえるボロボロの愛車(クラシックカー)の懐かしく楽しい思い出からこの曲名にしました。

⎯⎯ プロデューサーの近藤秀秋さんから、何かアドバイスはありましたか?

青木菜穂子 近藤さんからは、音作りはもちろん、演奏以外の全てにおいてご意見いただきまして、このアルバムは私の名前になっていますがほとんど近藤さんとの共作です。

⎯⎯ ジャケットのアートワークについて教えてもらえますか?

青木菜穂子 以前よりお世話になっている古谷悠子さんにデザインをお願いしました。こちらからは特に何も希望を出さずに曲を聴いた印象でデザインしていただきとても素敵な作品になりました。「楽曲とタイトルからピアノの鏡面に映った明るい午後の日差しをイメージして制作しました」(古谷さん談)。中面は夕暮れのイメージとの事でこの色合いもすごく綺麗なのでこちらも是非開けて見ていただきたいです。

■青木菜穂子 https://celeste.phono.co.jp
東京都出身。武蔵野音楽大学ピアノ科卒業後アルゼンチンに渡り、ニコラス・レデスマに師事。2年間現地の市立楽団「オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ」のピアニストとしてTVやラジオをはじめ数々の場で演奏。帰国後自己のグループを率いて活動しその後も度々渡亜。ブエノスアイレス国際フェスティバルやチリのバルパライソで行われた世界タンゴサミット、アメリカオレゴン州のバレンタンゴフェスティバル、また世界各国から10人のピアニストを集めたバンクーバーでの10グランズ・ピアノコンサートに参加、その他フランス・ポーランド・チェコ共和国等様々な音楽祭に出演。
自己作品は『ティエラ・ケリーダ』(’05)、『ブエノスアイレス・ミ・レフーヒオ』(’06)、ジョー・パワーズ(har)とのDuo作品『満開のハカランダ』(’15)をBishop Recordsより発表。2008年ヴァイオリンの会田桃子と共に「オルケスタ・アウロラ」を結成し『プエルト・ア・プエルト』(’09)、『バホ・エル・シエロ・デ・ブエノスアイレス』(’10)、『ピアソラ…愛』(’13)の3枚をLatinaよりリリース。これまでに数多くの国内外のアーティストと共演しまた作編曲にも力を注ぐ。力強さと繊細さをあわせもつ鍵盤で定評を得ている。

(ラティーナ2022年2月)


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