[2023.12] 【映画評】ヴィム・ヴェンダースと日本人キャスト/スタッフによる最高のコラボレーション!『PERFECT DAYS』
文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)
ヴィム・ヴェンダースの新作タイトルが『PERFECT DAYS』で、鬱蒼とした木々が映ったビジュアルを見て、まず思い出したのは彼の2016年の作品『アランフェスの麗しき日々』だ。それは冒頭からルー・リードの「PERFECT DAY」が流れ、緑あふれ木々がざわめき鳥がさえずる別荘で過ごす作家と、彼が執筆中の男女の物語がシュールなタッチで描かれるシンプルな会話劇だ。本作も「PERFECT DAY」が劇中で流れる(タイトルもそこから取られたのだろう)だけでなく、他にもいくつか共通点がある。そして本作は“影”についての物語であり、“豊かさ” について深く考えさせられる。
渋谷区の公衆トイレ清掃員で一人暮らしの平山(役所広司)は、毎朝通りを掃くホウキの音で目覚め、身支度をしながら木の苗に水をやり、必要な分だけ小銭を持って車で仕事に出かける。カーステレオでお気に入りのカセットテープの音楽を聴きながら現場を回り、丁寧に仕事に取り組む。神社で木漏れ日を浴びながら昼食を取り、木々と無言で語らい毎日写真を撮る。帰宅したら銭湯で一番湯に浸かり、いつもの居酒屋に行けば1杯の酒とつまみが出てきて、夜は好きな本を読んでから眠りにつく。休日は写真の整理と部屋の掃除、古本屋とコインランドリーに行き、夜は馴染みのスナックでゆっくりと過ごす。物欲は無く、穏やかな気持ちで謙虚に人と接し、毎日を淡々と過ごす。それでも日々何かが少しずつ違っていて、たまに思いもよらないことが起こったりもするから、人生は辛くて面白い。
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