[2022.11]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㊱】キューバで親交を持った盟友の歌 — Yolanda
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
この連載の第17回目の記事では、映画の主人公の心の中で蠢めく欲望を示すかのような歌詞が続く中で、「頭の中や口の中で蠢めく何か」など、表現の自由を奪われている当時の時代の人々の本音を間接的に表しているとされる、O que seráという歌を扱いました。
この歌をめぐって、作者のシコ・ブアルキは、革命後のキューバの様子を伝えるカメラマンのフェルナンド・モライスが見せてくれた写真から着想したとシコが述べており、シコ自身が、ブラジルとの国交が途絶えたキューバに夫婦で渡航するなど、大胆な行動をとっていたことなどもご紹介しました。
シコが、こうしたキューバ訪問を通じ親交を深めたキューバの重鎮アーティストの1人が、シンガー・ソングライターのパブロ・ミラネスです。ミラネスは、つい先日11月22日に、79歳でこの世を去りました。今回は、彼を偲びつつ、シコ・ブアルキとパブロ・ミラネスの共作についてご紹介することにします。
パブロ・ミラネスは、支配者への抵抗を旗印とするヌエバ・トローバと呼ばれる運動が中南米諸国に広まっていく中での主導者の1人であり、多くの若者に影響を及ぼしたとされるアーティストです。もともと、ハバナのコンセルバトワールで音楽を学ぶという恵まれた地位にあった上に、キューバ革命を支持していたにも関わらず、1965年に強制収容所に送られ、過酷な労働を強いられた受難の人としても知られています。
ここから先は
1,289字
/
1画像
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。
世界の音楽情報誌「ラティーナ」
¥900 / 月
「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…