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[2022.01]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年1月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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[2022.01]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年1月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

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 e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。


20位 AySay · Su Akar

レーベル:Nordic Notes (10)

 デンマーク出身、若手トリオのデビューアルバム。MVを観ると、ヴォーカルはトルコの民族楽器であるサズを演奏し美しい声で歌っており、中東系の雰囲気を醸し出している。彼女の母親はデンマーク人、父親がトルコのクルド人だそう。アルバムタイトル「Su Akar」は、トルコ語で「水が流れる」という意味で、トルコのことわざ「Su akar, yolunu bulur(流れている水は必ず道を見つける)」を引用している。
 歌詞はデンマーク語、トルコ語、クルド語で書かれており、中東の民族楽器も使用している。トルコの民族音楽と北欧のモダンなエレクトロニック・サウンドがうまくミックスされた魅力的な音楽となっている。
 自身のルーツも探りつつ、国籍やアイデンティティに固執しがちな世界に共有できるものを見つけようとしている。本作には彼らのポジティブで希望に満ちたアプローチが集約されていると言えよう。今後の活動にも注目したい若手グループ。

19位 Bixiga 70 · Bixiga 70

レーベル:Glitterbeat (15)

 ブラジルのアフロビート・バンド、ビシーガ 70の2011年デビュー作。え、なんで?と思ったが、この度ドイツのGlitterbeatレーベルからアナログ仕様でリイシューされたものがラインクイン。
 2011年サンパウロで結成され、アフロビートをはじめとする様々なアフリカ音楽を中心に、サンバやカンドンブレなどのアフロ・ルーツのブラジル音楽から、クンビア、アフロ・キューバン、アフロ・ジャズまで、世界各地に拡散されたアフロ系サウンドをかき集め、21世紀らしいセンスで再構築している。2015年リリースのセカンドアルバム『III』が、2016年の Transglobal World Music Chart の年間第2位に選ばれるなど、世界に認められている実力派バンドである。
 今回はアナログ用にリマスタリングされているようで、これはコレクター達の必須アイテムになること間違いなし!

↓国内盤あり〼。

18位 Hoven Droven · Trad

レーベル:Heilo / Grappa Musikkforlag (31)

 1991年結成のスウェーデン五人組バンド。90年代のスウェーデンのフォーク・ロック界を牽引してきたバンドであり、スタジオ録音の作品としては10年ぶり、8枚目のアルバムとなる。
 30年のキャリアで、ヨーロッパと北米で何千回もの公演を行い、伝統的なスウェーデンの民族音楽をベースに彼ら独自の音楽を表現し、多くのファンを獲得している、また、交響楽団、合唱団や、スウェーデンの有名アーティストであるダンサー、ファイヤーアーティストなどと幅広く共演してきた。
 今回の作品では、約30年間のキャリアの中でバンドが磨き続けてきた技術を集約して制作されたとのこと。タイトル「Trad(伝統)」は、これらの曲がいつの日か、彼ら自身がインスピレーションを受けているスウェーデンの豊かな民族音楽の遺産の一部となることを願って付けられたそうだ。
 イントロだけ聴くと、ロック!と思うが、フィドルが加わるとちゃんと伝統音楽と見事に融合しており、彼らオリジナルの音楽として成立している。スウェーデンに残るべき音楽となることだろう。
 上記動画では、おじさん5人がすごく狭いスペースで演奏している姿が見られる。ロックバンド(しかもヘヴィメタっぽい!)のような風貌で、楽しそうに演奏しているのがすごく良い!是非観ていただきたい!

17位 Monoswezi · Shanu

レーベル:Riverboat / World Music Network (16)

 ジンバブエの伝統楽器ンビラ奏者としてソロでも活躍している女性音楽家ホープ・マシケを擁する音楽集団モノスウェージの最新作。モノスウェージ(Monoswezi)は、メンバーの出身国の頭文字、モザンビーク(Mo)、ノルウェー(No)、スウェーデン(Swe)、ジンバブウェ(Zi)から取りグループ名としており、メンバーは、ノルウェー、スウェーデン、ジンバブエ在住で、まさに多国籍バンド。アルバム名『Shanu』は、ホープ・マシケの故郷であるジンバブエのショナ語で「5」を意味しており、バンドの頭数を表しているだけでなく、本作が彼らの5枚目のアルバムであることを反映している。
 メンバーの出身地であるジンバブエとモザンビークのアフリカ音楽の伝統と、北欧ジャズやミニマル・ミュージックを融合させたこれまでのサウンドに、本作ではよりエレクトロニックなアプローチで探求している。これまでハルモニウムを使用していたが、60〜70年代のバンドが好んで使っていたメロトロンを使い、より新境地を目指した作品となっている。
 ホープ・マシケが書く歌詞には様々な社会的なテーマが織り込まれている。今回の作品でも、女性の不平等という継続的な問題や、貪欲で利己的なリーダーを皮肉り虐げられている人々を励ましたり…、アフリカ出身の女性からの目線で、我々に問題を投げかけている。そして彼女のンビラも変わらず大きな存在感を示している。
 R&Bやソウルの要素も感じられ、多国籍バンドである彼らにしか表現できないオリジナリティ溢れる作品となっている。注目のアルバム!

↓国内盤あり〼。

16位 Fanfare Ciocărlia · It Wasn’t Hard to Love You

レーベル:Asphalt Tango (6)

 1997年、ルーマニア北西部の村で12人のミュージシャンにより結成されたジプシー・ブラス・バンド、ファンファーレ・チォカリーアの最新作。現在のジプシー音楽を代表し、世界で絶大な人気があるバンドだ。パンデミックの影響でライヴ収入が無くなり、計画していた25周年記念アルバムを制作できなくなり、2020年にクラウド・ファンディングで世界中から資金を募っていたが、そのアルバムがとうとう完成!世界中のファンが待ち望んでいた作品だ。日本にも、2000年に初来日し、以降6回来日、2014年には「Fuji Rock」にも出演した。
 バルカン半島の金管楽器にジャズやポップス、ロックの要素を加え、世界最速と言われる猛烈なテンポで正確に演奏するファンファーレ・チョーカリーアは比類なき才能を表し、世界各地でカルト的な人気を得てきた。今回の最新作も、これまで以上にエネルギッシュでパワー全開、活気溢れた作品となっている。
 数年後には引退する予定とのことだが、最後に是非日本ツアーを行なって欲しい。生音を体験してみたいものだ。

↓国内盤あり〼。(CDとLPがあります)

15位 Puuluup · Viimane Suusataja

レーベル:Õunaviks (19)

 エストニア人の Ramo Teder(ソロとしてはPastacas名義で活動)とMarko Veisson のデュオ、プーループのセカンドアルバム。
 エストニアの伝統楽器であるタルハルパを演奏し、世界の伝統音楽からインスピレーションを受けたと言われる彼ら独自の曲を、低音ラップやスカ調で展開。バリエーション豊かな音楽ばかり。
 おじさんデュオであるためか非常に男臭い感じではあるのだが、ミュージックビデオを観ると段々と引き込まれていく。上記動画の二つ目は、特に面白い。フェスでの演奏シーンが編集されており、ロックアーティストばりにモッシュもやっている!とてもチャーミングなおじさんデュオで、エストニアでは、若い女子に人気があるようだ。
 享年の7月には初来日予定だったが、残念ながらコロナで中止になったようだ。実現された時には、是非生で観てみたい注目のデュオ。

14位 Juçara Marçal · Delta Estácio Blues

レーベル:Mais Um (-)

 サンパウロの過激な歌もの実験音楽シーンの中心グループ、メタ・メタ(Metá Metá)の女性ヴォーカル、ジュサーラ・マルサル(Juçara Marçal)のソロ作がランクイン。2015年の『Anganga』以来となる4枚目のソロアルバムが『Delta Estácio Blues』。
 本作のインスピレーションの出発点は意外なところにある。米国デトロイトのラッパー、ダニー・ブラウン(Danny Brown)の2016年作『Atrocity Exhibition』だ。ジュサーラと、メタ・メタの盟友でギタリストのキコ・ヂヌシ(Dinucci)は、ダニー・ブラウンの、予め素材のみを用意した予測不可能なビートに歌詞をつけるというプロセスに興味を持ち、同じ手法を『Delta Estácio Blues』で行うことに決めた。キコとジュサーラは、リズムとメロディーの土台を作ることから始め、曲作りの共作者と何度もやり取りをして、アレンジを肉付けし、最後にジュサーラがヴォーカルを乗せた。複雑なアレンジと即興的なフィーリングのバランスが均衡した楽曲群がこのように完成した。
 本作の音の多くが電子楽器を使い制作されたことは、上記のライヴを見てもよくわかる。キコやマルセロ・カブラル(Marcelo Cabral)だけでなく、ジュサーラ本人も電子楽器を操作しているのが印象に残る。
 なお、ブラジル最大の音楽賞プレミオマルチショウの特別審査員部門で、『Delta Estácio Blues』が2021年の最優秀アルバム賞、収録曲の「Crash」が最優秀楽曲賞を受賞した。

13位 Riccardo Tesi, Elena Ledda, Lucilla Galeazzi, Alessio Lega, Nando Citarella, Maurizio Geri, Gigi Biolcati, Claudio Carboni · A Sud di Bella Ciao

レーベル:Visage Music (-)

 2014年にヨーロッパ各地で公演し、大成功をおさめたショー「Bella Ciao」の新バージョンを同じメンバーで公演する予定だったが、このコロナ禍で実現が難しくなった。それに関わる音楽家たちを尊重するべくクラウドファンディングで資金を集め、作成されたアルバム。
 「Bella Ciao」は、1964年にイタリアにフォーク(民謡)音楽を復活させるべく誕生した同名プロジェクトの開催50年を記念しオマージュしたもの。1964年「Bella Ciao」では北イタリアがメインだったが、1966年ダリオ・フォー(風刺喜劇でノーベル文学賞を受賞した劇作家/演出家)が監督した
舞台「Ci ragiono e canto」で、南イタリアの民謡を発掘し舞台化を実現させた。開催予定だった新バージョンのショーは、この「Ci ragiono e canto」をモチーフとしており、社会派・プロテストソング、労働歌からラブソングまでの歌とダンスを通し、イタリア南部の人々の生活と感情を綴ったもの。舞台で使用する曲をアルバムとしてまとめている。
 音楽監督はアコーディオン奏者のリカルド・テシ、ヴォーカルにはエレナ・レダ、ルシラ・ガレアッツィなどベテラン歌手、バンドメンバーにはイタリアトラッドフォークの名手たちを揃えている。ゲストも多数参加、本チャートで4位にランクインしているマウロ・デュランテもヴァイオリンで参加している。
 イタリア南部で使われている楽器を取り入れ、南部に伝わる伝統的な民謡を中心に、現代的なアレンジとなっている。歌の力がとにかくすごい!これを聴けば、南イタリアを旅しているかのような気分になれる。旅に行けない今、お薦めの一枚。

12位 Karolina Cicha & Spółka · Karaimska Mapa Muzyczna

レーベル:Związek Karaimów Polskich (40)

 ポーランドの作曲家/歌手/マルチインストゥルメンタリストのカロリーナ・シチャの最新作。彼女オリジナルの作品としては、本作が9作品目となる。歌いながらアコーディオンやキーボードを演奏し、足でドラムを叩くというマルチな演奏を行う。2015年には世界最大のワールドミュージックの祭典「WOMEX」のオフィシャルセレクションに選出され、ヨーロッパ、アジア、アメリカなど多くのフェスティバルに出演している。
 ポーランドの伝統音楽や、少数民族の民族音楽に傾倒しており、これまでポーランドのタタール人の音楽的遺産を掘り下げた作品や、ポドラスキ地方の少数民族の言語に捧げられた作品を発表している。
 本作は、ポーランドにも僅かながら在住している少数民族で「最小の少数民族」と言われているカライム人の音楽をまとめた作品。2020年にバーチャルプロジェクトとしてスタートし、インターネットでの公開から1年後、世界初のカライム伝統音楽専門のアルバムとしてリリースされた、画期的な作品。カライム・コミュニティの歌と歴史を追求し、各地のカライム・コミュニティを旅してきた足跡を地図として表現し、音楽地図を描いている。カライムの音楽は、リトアニアとクリミアの音楽的伝統に加え、ウクライナ、ロシア、ポーランドの影響も受けている。
 彼女は、少数民族に眠る宝物の音楽を熱心に探す活動を行なっており、発見した歌の古い精神を生かしつつ、彼女独自の現代的なアレンジを加え表現している。何かに残さないと消えていくかもしれない音楽を発掘し、表現している彼女の活動に頭が下がる思いだ。

11位 Shujaat Husain Khan, Katayoun Goudarzi, Shaho Andalibi & Shariq Mustafa · This Pale

レーベル:Lycopod (8)

 インドの古典的伝説である作曲家・シタール奏者シュジャート・フサイン・カーンと、イラン系アメリカ人のシンガー、カタユン・グーダルジ、イランのネイ奏者シャホ・アンダリビ、インドのタブラ奏者シャリク・ムスタファの4人によるコラボ作品。10月に初ランクインして以来、ずっとランクインし続けている。
 シュジャートとカタユンは、2008年頃より何度かコラボレーションしこれまでに6枚の作品をリリースしているので、相性はピッタリ。シュジャートのシタールの演奏スタイルは人間の声を模倣したもので「gayaki ang」と呼ばれている。そのシタールの音色と、ペルシャの詩に深く影響されたというカタユンの素晴らしい声が美しく融合されている。また、ネイの音色も低音で囁いているかのように聞こえ、そこにタブラのビートが重なり、素晴らしい音のコラボレーションとなっている。
 この作品では、13世紀のペルシャ語文学史上最大の神秘主義詩人であったルーミーの詩、特に愛についての詩に、今回新たな命を吹き込み、古い物語を多文化で新鮮に表現している。インドとペルシャの文化の融合が素晴らしく、とても美しい作品。

10位 Omar Péne · Climat

レーベル:Contre-Jour (21)

 セネガルの大御所歌手、オマール・ペネの8年ぶりの最新作。現在66歳、今年でキャリア50周年を迎える。
 1974年にバンド「Super Diamono」として活動開始、1980〜2000年代初めまで、ンバラ(セネガルのダンスミュージック)を牽引し、セネガルの若者の間で大人気を博した。2005年頃からソロとしても活動を始めたが、前作を発表した2013年頃から体調不良で活動を休止していた。病気から回復し復活しようとした矢先パンデミックとなってしまったが、2020年末頃から徐々に活動を再開、セネガル、パリでステージに復帰した。
 本作のタイトルはフランス語で「気候」を意味する。世界が抱えている地球温暖化の問題、また今アフリカを襲っているコロナへの緊急事態、テロリズムなどの問題に警鐘を鳴らすべく、本作で表現している。ウォロフ語とフランス語で歌い、Super Diamono の頃のアルバムよりはアコースティックさを打ち出した作品となっている。
 また本作では、フランス系セネガル人のギタリスト、エルヴェ・サンブや、ラッパーで詩人のファアダ・フレディなどといった、新世代の才能ある音楽家たちとも共演。世代を超えたファンへのメッセージも込めている。長年のキャリアを持ち、影響力ある大御所アーティストだからこそできる技、待ってました!という満を持しての作品と言えるだろう。

9位 Cumbia 20 de Enero & Leyendas Cañamilleras del Caribe · La Caña de Millo: Voz Histórica y Silenciada de la Cumbia

レーベル:Chaco World Music (9)

 カリブ海沿岸のコロンビアのクンビア音楽で使用される先住民族の木管楽器「カーニャ・デ・ミロ」(サトウキビなどの茎から作られ、両端が開いて、4つの指穴がある)と、その伝統的奏者の歴史的・文化的価値を記録し、実証し、普及させることを目的として作られたアルバム。ラテングラミー賞にノミネートされたコロンビア出身の音楽プロデューサー、作曲家でもあり研究者でもある Manuel García Orozco プロデュースによるもの。今月8位にもランクインしているペトローナ・マルティネスの作品も手がけている同じレーベルよりリリースされた。コロンビア文化省ミュージカル作品賞受賞プロジェクトでもある。
 コロンビアのカリブ海を旅しながら、フィールド録音してきた音源から構成されている。2枚組CDで、CD1には、19世紀からボリバル州マハテスに存在する伝統的なアンサンブル「La Cumbia 20 de Enero」による演奏が収録されており、CD2には、カーニャ・デ・ミロの伝説的奏者による未発表録音が録音されている。伝説的奏者には既に亡くなった人もおり、このような録音が発表されるということは大変貴重である。
 本作のブックレットを見ると「20世紀半ば以降コロンビアとラテンアメリカのレコード産業によって伝播され漂白された音には存在しないという歴史的な不可視性を覆すことである」とある。漂白されたとは何とストレートな表現か。現在「クンビア」と大勢が認識する音楽には、このカーニャ・デ・ミロの音は入っていないとされている。カーニャ・デ・ミロはクンビアの魂であり、本作品が本当のクンビアであるということのようだ。とても貴重なアルバム。このようなアルバムを残していこうとするレーベルを称えたい。

8位 Petrona Martínez · Ancestras

レーベル:Chaco World Music (7)

 コロンビアのブジェレンゲの女王、ペトローナ・マルティネスの最新作。10月に初ランクインして以来、ずっと1桁台の順位をキープし続けている。
 本作は、彼女の先祖の “抵抗” を表現した作品となっており、ブジェレンゲだけでなく、チャルパ、ファンダンゴ、ソン・パレンケといった彼女のキャリアを特徴づけるリズムに、ゲストの女性アーティストたちの声やリズムと融合している。ベナン出身のアンジェリーク・キジョー、コロンビアの歌姫ニディア・ゴンゴラ、キューバのアイメー・ヌビオラ、マリアッチバンドのフロール・デ・トロアチェ、ブラジルのシェニア・フランサなどの豪華なメンバー。アフロビート、ジャズ、マリアッチ、ルンバ、キューバのティンバなどのリズムと見事に融合した作品となっている。
 アルバムでは、彼女のキャリアの中で初めて作曲した曲の思い出についての証言で始まり、コロンビア・カリブのアフロ・コミュニティのシンボルであるブジェレンゲの未来についての考察の証言で締めくくられている。コミュニティの中で代々口承で受け継がれた伝統が忘れ去られてしまうことへの抵抗を示した作品となっており、大変貴重な作品。
  上記動画は、ペトローナと、今月2位にランクインしているアフロ・ペルーの大御所スサーナ・バカの共演作。ペトローナがオリジナルの歌詞を歌い、スサーナがペトローナや彼女の祖先を暗示する歌詞を歌っている。ペトローナが受け継いだ口承の伝統を、編みぐるみのアニメ作品で表現している。二人とも、自国の文化遺産を国際的な場で表現し、自国のアイデンティティを象徴する存在で、お互いに尊敬しあっているという。こちらも今月9位の作品をリリースしたレーベルが手がけている。素晴らしい!

7. Orquestra Afrosinfônica · Orin, a Língua dos Anjos

レーベル:Máquina de Louco (11)

 ブラジル、バイーアのビッグバンド、オルケストラ・アフロシンフォニカのアルバム。2020年11月20日「黒人意識の日」にリリースされていたが、1年経ってランクイン。先日発表されたブラジルディスク大賞2021の関係者投票で、4位に選ばれた作品。
 オルケストラ・アフロシンフォニカは、2009年に作・編曲家/ピアニスト/指揮者であるウビラタン・マルケスによって結成され、打楽器、木管、金管、弦楽器、女声コーラスなど総勢22名で構成されている。アフロシンフォニカという名前通り、アフロ・ブラジル音楽をビッグバンドで奏で、バイーアの打楽器、そして女声コーラスが加わる。
 タイトルの「Orin」とはヨルバ語で「歌」という意味。まさに女声コーラスが神聖さを醸し出し、アフリカと密接な関わりを持つバイーアのビッグバンドならではの個性が際立つ。カンドンブレの儀式で使われるリズムや、ペルナンブーコのマラカトゥなど、アフロ・ブラジルの要素がたっぷり込められている。また、ゲストには、マテウス・アレルイア、ジェローニモ・サンタナ、ラッゾ・マトゥンビといったバイーアを代表する歌手たち、アンゴラ人のドドー・ミランダ、そして現代ブラジル音楽を代表するバンドとなったバイーアのバンド、BaianaSystemも参加。豪華な面々がバイーア色を更に強め、バイーア好きにはたまらない作品となっている。

↓国内盤あり〼。

https://diskunion.net/latin/ct/detail/1008265353

6位 Xanthoula Dakovanou · Lamenta

レーベル:Quart de Lune (13)

 ギリシャ出身、歌手であり作曲家の Xanthoula Dakovabouの最新作。主にギリシャの伝統音楽やバルカンポリフォニー、地中海の伝統的な歌などをベースに歌っている。また、精神分析と精神病理学の博士号を取得しており、音楽と精神分析学の専門家で、音楽療法士としても活動している。
 本作は、ギリシャ北西部のイピロス地方の伝統的な音楽(Miroloiと呼ばれる嘆きの歌)に触発され制作されたもの。世界的に有名なフランスのジャズマン、マジック・マリクや、現在ギリシャの伝統的なクラリネット奏者の一人であるニコス・フィリッピディスなど、16人の優れたミュージシャンが参加。また、ギリシャの伝統的音楽の分野で活躍する著名なミュージシャンも参加している。その結果、深みがあり、嘆きながらも恍惚とした雰囲気を醸し出し、伝統的な音楽と現代音楽が見事に融合している。
 また、本作の音楽を使い、国際的に有名なベルギーのコンテンポラリーダンスの振付家よる振り付けで、コンテンポラリーダンスのショーが先月フランスで行われ大好評だったようだ。伝統音楽と現代音楽との融合、そしてその音楽とダンスとのコラボとなると、非常に興味深い。
 音楽療法士のプロが作った作品だからか、アルバムを聞いていると癒される。嘆きの歌をベースに作られているので、嫌なことがあったり、嘆きたい時に聴くと良い作品。

5位 Monsieur Doumani · Pissourin

レーベル:Glitterbeat (4)

 東地中海に浮かぶ小さな島国キプロス共和国の人気トリオ、ムシュー・ドゥマニの4枚目となる最新作。
 2011年に活動を開始して以来、彼らはキプロスの伝統音楽や民謡を現代的にアレンジし蘇らせるサウンドを追求してきた。世界中のフェスティバルなどに出演し、多くの聴衆から高い評価を得て世界中で紹介されてきた。2018年にリリースされた前作となる3rdアルバム『Angathin』では、Transglobal World Music Chartの「2018年のベスト・アルバム」として表彰された。
 満を辞してのこの最新作はドイツのレーベル「Glitterbeat Records」と契約し、彼らのサウンドとスタイルの面で新たな時代の幕開けとなった。前作リリース後、創立メンバーであったアンジェロス・イオナスが脱退し、サポートで参加していたアンディス・スコルディスが正式メンバーとなった。
 タイトルの「Pissourin」はキプロスの方言で真っ暗闇のことを意味する。本作では、夜闇の中にうごめく生物たちをモチーフとしたダークで幻想的な歌詞、彼らのトレードマークである地中海的なサウンドを、シュールでサイケデリック、アヴァンフォークの方向へと押し進めている。弦楽器、重層的な歌声、トロンボーンによるローエンドが織りなすダンサブルな感じで、全く新しいサウンドを展開している。

↓国内盤(CD&LP)あり〼。

4位 Justin Adams & Mauro Durante · Still Moving

レーベル:Ponderosa Music (3)

 イギリスのギタリスト/作曲家のジャスティン・アダムズと、イタリアの音楽グループ CanzionIere Grecanico Salentino(GCS)のバイオリニスト/歌手/パーカッショニストであるマウロ・デュランテとのデュオ作。
 ジャスティン・アダムズは、砂漠のブルースで知られる Tinariwen のアルバムをプロデュースし、ブルースのギタリストとしても活動。2019年のWOMADで二人が共演し、友情が深まった。アダムズの砂漠のブルースと、デュランテの故郷である南イタリア・プーリアの伝統音楽タランタに共通点があることを見出し、このアルバムを制作するきっかけとなった。
 デュランテはフレームドラムとヴァイオリン、アダムズはブルースギターで、パンデミック中に重ね録りなしで制作。インスト曲もあるが、英語、イタリア語で、それぞれが歌っている曲もある。デュランテが伸びやかで美しい歌声を聞かせる一方、アダムズは乾いた渋い声で聞かせる対比が面白い。
 砂漠のブルースとイタリアの伝統音楽、共通点があるのかは謎だったが、アルバムを通して聴いてみると、彼らのルーツがうまく合わさり新しいものが生み出されているといえよう。大変聞き応えのあるアルバム。

3位 Omar Sosa & Seckou Keita · Suba

レーベル:Bendigedig (1)

 キューバ出身のピアニストオマール・ソーサと、セネガルのコラ奏者、セク・ケイタの最新作。2017年にリリースされた前作『Transparent Water』は世界で高い評価を得たが、これが彼らのセカンドアルバムとなる。
 パンデミック期間中に録音され、オマールと’90年代から行動を共にするベネズエラ出身のパーカッショニスト、グスターボ・オバージェスも参加している。
 「このアルバムのコンセプトは、平和、希望、団結です。私たちが生きているこの瞬間、すべてが少しずつ崩壊していく中で、私たちが最後に自分の中に持っているものは、自分の内なる声、自分の精神や光、そして祖先との神聖なつながりです。私たちは、音楽を通して希望を与え、一緒にいられることを伝えようとしています。」とオマールは語っている。パンデミック後の世界において、思いやりと真の変化の新たな夜明けへの希望の讃歌であり、平和と団結を求める人類の永遠の祈りを直感的に繰り返した作品となっている。
 アルバムタイトルの「SUBA」とは、セク・ケイタの母国語であるマンディンカ語で「日の出」を意味する。困難に直面していても新しい一日が始まる日の出を見て、正常な状態にリセットしようという意味がこめられている。コロナ禍で落ち込んでいる世の中で、希望が持てるアルバムである。

↓国内盤あり〼。(ハードカバー書籍風豪華44Pフルカラーブックレット付・ライナー日本語訳封入)

2位 Susana Baca · Palabras Urgentes

レーベル:Real World (2)

 ラテン・グラミー賞の受賞歴もあるアフロ・ペルーの大物歌手、スサーナ・バカの最新作。今月も2位をキープ。
今年で77歳、音楽キャリア50年の大ベテラン歌手。本作は、プロデューサー/アレンジャーに、スナーキー・パピーのマイケル・リーグを迎え、ペルーの首都から150キロ離れた小さな町カニエテで録音された。
 ペルーの文化大臣も務めたことのあるスサーナは、ここ最近のペルーの政治情勢に憂いていたのだろう、このアルバムを抗議の形として録音したという。かつて、より良い世界のために闘った人々の遺産と伝統を、このアルバムに込めたそうだ。アヤクーチョの伝統曲「Negra del Alma」や、ムシカ・クリオーヤで Manuel Acosta Ojeda作の「Cariño」、ペドロ・ラウレンスのミロンガ曲「Milonga de mias amores」など、また自身の旧作にも収録されている「Color de Rosa」、「Vestida de Vida」を再録。自身の最も深いルーツの音楽を、現代的なアレンジに仕上げ、希望と抗議のメッセージを込めている。そして聴く人に、人生への愛と、誠実に生きることを感じてもらいたいと言っている。
 彼女の誠実な人生が込められているアルバムで、未だパワフルで成熟したヴォーカルにうっとりする一方、名曲たちの普遍性に圧倒される。

1位 Khöömei Beat · Changys Baglaash

レーベル:ARC Music (5)

 南はモンゴル、東はブリヤート共和国に接し、中央アジアに位置するトゥヴァ共和国(ロシア連邦共和国に属している)の男女5人組ロックバンド、ホーメイ・ビート。本作品がセカンド・アルバムとなる。11月に初ランクインし、とうとう1位に!
 2017年に結成され、伝統的な楽器や現代的な楽器の演奏技術、トゥヴァ独特の喉歌の習得など、それぞれの分野では一流のトゥヴァの音楽家たちで構成されている。2017年にファースト・アルバムを発表、中央アジアのホーメイ国際フェスティバルにも出演し「現代的な解釈でのホーメイ」というノミネーションで受賞もしている。その後は、各国のフェスにも出演、今日ではロシアだけでなくその周辺国でも知られた存在となっている。
 本作のタイトルは「The Hitching Post(馬などの動物をつないでおく支柱)」を意味する。その支柱はトゥヴァや他の遊牧民すべてにとって中心的な場所であり、他の場所に移すべきではなく、常に揺るぎないものとされている。自分たちの音楽についても、トゥヴァの伝統を守り常に揺るぎないものとしていくことをこのアルバムで表現している。
 トゥヴァ共和国の民族音楽をベースにした現代的な音楽を、伝統的な民族楽器と現代的な楽器で演奏、そこに彼らの特徴的なヴォーカルが重なり、まさに芸術作品と言える音楽となっている。
 MVでは、大地を切り裂くようなドラムで始まり、彼らが育ったトゥヴァの大自然の中、疾走感溢れる映像が、彼らのパワフルな音楽、自然を表現するホーメイと見事に融合している。アルバムジャケットにも表現され、MVの最後に現れる支柱が、まさに揺るぎないものとして登場するのがとても印象的。自然のエネルギーを感じる作品だ。

(ラティーナ2022年1月)

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