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[2022.10]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉞】ブラジルを代表する料理を囲んで — Feijoada completa
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
中村安志氏の好評連載「シコ・ブアルキの作品との出会い」と「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」とは、基本的に毎週交互に掲載しています。今回は、ブラジル国民が愛してやまない代表的煮込み料理フェイジョアーダに関する曲の登場です。ブラジルでは、土曜日の午後、誰もが必ず口にしてきた料理です。
これも、外交官として長くブラジルに滞在した中村氏だから書けるエピソードです。お楽しみ下さい。
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ブラジルに馴染みのある方が必ず思い浮かべる代表的料理といえば、豚の臓物や干し肉などと黒豆をじっくり煮込んだフェイジョアーダ (feijoada)でしょう。ホームパーティーに招かれた土曜の昼下がり、皆で食べ始めたはいいものの、美味さにつられてすっかり重くなったお腹を抱え、ハンモックで昼寝させてもらい、気づいたら日が暮れていたことがありました。ずっしりときますが、大鍋とおつまみを囲み鼓腹撃壌、時を忘れさせてしまう食べ物です。
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シコの1978年のアルバムChico Buarqueの中の最初の曲は、このフェイジョアーダのフルセット版(ラーメン等でいえば、サイドメニューも揃った「全部入り」)を作る情景を歌ったFeijoada completaという歌です。サンバのリズムで彩られ、合間にホイッスルも鳴ります。ブラジルのごく普通の家、気が向いたからフェイジョアーダを作って仲間と騒ごう、テーブルセッティングなんか要らない、地べたに座って食べようではないかと、準備を進めるさまを、主人公が妻に向かって気ままに語る形で、明るく描写していきます。
歌詞では、このフェイジョアーダの材料として、腸詰め、干し肉、ベーコンなどが挙げられますが、多くの場合、豚の尻尾、耳、豚足などのコラーゲンたっぷりの素材が加わり、多彩な具材が入ったものがよく好まれます。街のレストランでは、癖のある具材毎に黒豆と煮込んだ別々な鍋が用意され、客は自身の好みに応じ自分の更に取り分けるといったシステムをとっている店もあります。
つけあわせにピッタリな豚皮の揚げ物(トヘズモ)は、沖縄のアンダカシーにも似て、パリパリと快適な食感と塩味で、ビールが進むおつまみ。ご飯には、キャッサバの粉に味付けをして煎ったファロッファや、消化を助けるとも言われるケールの葉っぱを細切りにし、ニンニクなどと炒めたものを添え、暑い中で食欲を高める赤唐辛子を油に溶かしたものを好みで加えます。そして薄切りのオレンジで、酸味も。玉ねぎのみじん切りとトマトをベースにした、ヴィネガー入りソースも載せれば、更に美味。
お酒は、サトウキビ焼酎を潰したレモンと砂糖と混ぜ、氷でぎゅっと冷やすカクテル「カイピリーニャ」。これに使う焼酎のカシャッサは、この歌の中では、uca(ウッカ)という俗語で登場しています。
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