[2022.01]Best Albums 2021 ④
2021年ベストアルバムを選んでいただきました!
(カタカナ表記のものは国内盤として発売されています)
●宇戸裕紀
白状しますと、年間50日間信州の山に籠っておりましたので新譜はほとんど聴いておりません。ですが聴く枚数が少なければ少ないほど、耳を傾けるべき1枚とじっくり対峙し、楽しむこともできるのです。まるで山の頂という何もない場所でゆっくりと淹れた珈琲を呑む時の様ですね。さて2022年ウルグアイではMusicasión 4 1/2(クアトロ・イ・メディオ)リリースから50年ということでオマージュ・ライヴ、トリオ・ベンタナの噂の最新作、Nair Mirabratのセカンドアルバムがリリースされそうなので腰を抜かさないように準備して参ります。
① Eli-U Pena / El Aire es Libre
② Judit Nedderman / Aire
③ Rita Payés, Elisabeth Roma / Como la Piel
④ 笹久保伸 / Chichibu
⑤ Juan Ibarra / Naumay
⑥ ミゲル・ヒロシ / オニリコ・オリノコ
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008342613
⑦ Silvina Gómez / Volátil
⑧ Sofia Gabard & Sestrum / Membrillo de Japón
⑨ V.A. / Amigo Lindo del Alma
⑩ クララ・プレスタ / パーハラ
●清川宏樹
コロナ禍で迎えたピアソラ生誕100周年。「アンサンブル音楽」の極致であるタンゴはリモート録音なども難しく、やはり厳しい時間が続く印象は否めない。ただそんな中でも10枚の選択を悩むほど、世界各地からタンゴ、そしてバンドネオンの新たな魅力を引き出す作品が出てきたことは純粋に嬉しい。アルゼンチン、フランス、そして日本からタンゴの解体と再解釈に挑んだ、先鋭的で美しい作品①②③と、現代の天才たちが王道に真正面から取り組む輝きに満ち溢れた大作④⑤、そしてタンゴから自由になったバンドネオンの響き⑥⑦。タンゴ/バンドネオン以外では、各楽器の音色や旋律の優しさを余すことなく収めた⑧、共演歴は長いはずだが今までで最も抽象的でスリリングな録音⑨、そして誰もが抱いたコロナ禍での心の葛藤に向き合い、知性であたたかく寄り添った⑩が特に印象的だった。
以下、番号は順不同
① Diego Schissi Quinteto / Te
② Louise Jallu / Piazzolla 2021
③ 三枝伸太郎 / TRIO
④ SONICO / Piazzolla – Rovira: The Edge of Tango
⑤ Quinteto Revolucionario / 100 Años
⑥ Yamandu Costa, Martin Sued, Luis Guerreiro / Caminantes
⑦ Santiago Arias / Evocación de carnaval
⑧ 江藤有希 / memor
⑨ André Mehmari, Antonio Loureiro / Matéria De Improviso
⑩ KIRINJI / Crepuscular
●鈴木一哉
タンゴとその関連領域に限定して個人的に注目したアルバムを選んだ(順不同)。リリース様態の変化を反映し、フィジカルな盤が出ていないアルバムも含めているが、収録時間が30分に満たないものはフル・アルバムとは見做さずに除外したので、Cristian Zárate & Ernesto Snajer / Los Que Nunca BailanやMarianela Villalobos / PIAZZOLLA LADO Bなどは個人的に愛聴したけれど選考対象外とした。ここでは、アルバムとは別に、書籍でのベストとして小松亮太『タンゴの真実』を挙げておきたい。小松にしか書けない濃密な内容の連続はまさに圧倒的で広い読者のもとに届いてほしい。ピアソラ生誕100年関連では、柴田奈穂の奔走により実現した『ブエノスアイレスのマリア』の上演が最高の体験だった。フォルクローレでは、個人的に偏愛するエドゥアルド・ラゴスへのトリビュート作品Varios Artistas / El Agrícola Urbano: Homenaje a Eduardo Lagosが、マノロ・フアレスやカルロス・アギーレらの参加を得てリリースされたが、フォルクローレ革新の源流として再認識されると嬉しい。
① José Colangelo y Franco Luciani / Tangos improvisados
② Pablo Estigarribia / Horacio Salgán piano transcriptions
③ 三枝伸太郎 / Trio
④ Diego Schissi Quinteto / Te
⑤ Koh Sangji / El Gran Astor Piazzolla
⑥ Paralelo 33° / HORA CERO
⑦ SONICO / The Edge of Tango
⑧ Nestor Fabian & Julián Hermida / A Mores
⑨ Cristina Vilallonga & Victor Hugo Villena / Al final
⑩ Bernardo Monk Orquesta / Mago: Viaje al Universo Gardel
●武田吉晴
2021年によく聴いたものをまとめてみたところ南アフリカ音楽が多かった。特に①のSaul Madiopeの「Motherland Jazz」はとても気に入っていて、日本ではまだあまり知られていないようなので大推薦。⑤のKeenan Meyerや⑦のMalcolm Jiyane Tree-Oなども含め、近年の南アフリカジャズは本当に面白く、どんどん盛り上がりそうな気がしています。②のManjakani(インドネシア)、③のEnji(モンゴル)⑩のArooj Aftab(パキスタン)など、アジア的なボーカルと深遠なアレンジが絶妙で印象的でした。それと2021年は大ファンの歌手⑧のMsaki(南ア)や⑨のHaydée Milanés(キューバ)の新譜も出て、内容も素晴らしくて感無量です。
① Saul Madiope / Motherland Jazz
② Manjakani / Saura
③ Enji / Ursgal
④ Ignacio Maria Gomez / Belesia
⑤ Malcolm Jiyane Tree-O / Umdali
⑥ Boubacar Badian Diabate / Mande Guitar African Guitar Series Volume 1
⑦ Keenan Meyer / The Alchemy of Living
⑧ Msaki / Platinumb Heart Open
⑨ Haydée Milanés & Miriam Ramos / Ella y Yo
⑩ Arooj Aftab / Vulture Prince
●二宮大輔
今年の収穫は何と言ってもNetflixのイタリア・ドラマ『サマータイム』だった。青少年の恋愛群像劇でドラマ自体にそれほど熱中することはなかったが、主人公の女の子がことあるごとに耳にするイヤホンから流れる音楽には思わず聞き入ってしまった。サンレモ音楽祭にも出演を果たしたヒップホップ・ユニット③Coma_Coseに気鋭のSSW⑤Giorgio Poi、そして『サマータイム』を通して初めて知ったミラノの若き女性シンガー④VV。なんとこのドラマのサントラが、イタリアのインディーズシーンを知る上で最良の作品集になっている。個人的には動画配信やサブスクプションに両手を挙げて賛成できないが、こうなってくると、その可能性に注目せざるを得ない。いっぽう日本のものはネット上で見つかりにくい作品ばかり選んでしまった。⑩は即興で多数のバンドに参加するオルタナティブなマンドリン奏者の独奏集カセットテープ。注目しています。
① FULMINACCI / TANTE CARE COSE
② CIMINI / PUBBLICITÀ
③ Coma_Cose / Nostralgia
④ VV / VERSO
⑤ Giorgio Poi / Gommapiuma
⑥ MORBICI / Anche le scimmie cadono dagli alberi
⑦ 本日休演 / MOOD
https://newfolkjp.stores.jp/items/60113d43c19c456eb8f3de2a
⑧ AUX / エネルギーカルマ理論
⑨ yatchi / Night Cultivation
⑩ Jin Nakaoka / 集奏獨ンリドンマ
(ラティーナ2022年1月)
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