[2016.06]連載 小松亮太のタンゴ場外乱闘 #1 編曲残酷物語
文●小松亮太 text by RYOTA KOMATSU
小松亮太さんの著書『タンゴの真実』が発売されたことを記念して、過去の月刊ラティーナに連載した記事を掲載致します。
「30歳代近辺の読者と年齢も近く、実力も知名度もある亮太さんにぜひ新連載を」というお話をいただいた。タンゴに纏わる、なるべく今まで語られて来なかったこと(裏話から専門的な音楽論、個人的体験記から与太話まで)を中心に一生懸命書かせていただこうとは思うが、そもそも冒頭に挙げた坂本 悠さん(本誌スタッフ)の言葉にある「知名度」はさておき、僕の「実力」の方は実際どうなのだろう。
「タンゴについて講演を」とか「解説を」といった有り難いオファーをいただく度に、いつも心の隅っこに葛藤がある。バンドネオンだのタンゴだの、世界の音楽人口の0.001%にも届かないマイナージャンルで生きている僕は、本当は世の手厳しい批評にさらされることもなく、ぬるま湯に浸かっている井の中の蛙ではないのか。
仮にも一国の、いちジャンルの代表のような顔をしてモノを言うだけの、僕にしか持ち得ない「強味」というものを何か形として示せないものか。
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