[2022.9] ドリ・カイミ & モニカ・サウマーゾ インタビュー前編 「ブラジルへの愛の宣言」
文:ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)
ドリ・カイミとモニカ・サウマーゾの作品に共通しているのは、鳥、川、海、奥地、星空…といったものに代表される「ブラジル」です。アルバム『Canto Sedutor』で2人を結びつけているのも、この伝統的なブラジル音楽という同じ橋です。アルバム『Canto Sedutor』は、Biscoito FinoからデジタルプラットフォームとCDでリリースされました。
異なる世代のMPBの2つの声を組み合わせるというアイデアは、女性歌手のモニカ・サウマーゾによるものでした。
「ドリは、私がパンデミック中に行ったプロジェクト《Ô de Casas》に参加してくれました。とても美しい共演になったと思ったので、ドリをアルバムのレコーディングに誘いました」と、モニカは言います。
モニカからの誘いは受け入れられて、2021年にサンパウロのスタジオ・モンチヴェルヂ (Estúdio Monteverdi|※アンドレ・メマーリのスタジオ)で、5日間でのレコーディングが行われました。ドリは、アルバムのレパートリーを選ぶ役割をモニカに託し、結果的に、ドリが作詞家のパウロ・セザール・ピニェイロ(Paulo César Pinheiro)と共作した楽曲群の中から、14曲が選ばれました。
『Canto Sedutor』のプロデュースは、テコ・カルドーゾ(Teco Cardoso)が務め、録音のために素晴らしい演奏家が集合しました。チアゴ・コスタ(Tiago Costa|ピアノ)、シヂエル・ヴィエイラ(Sidiel Vieira|アコースティック・ベース)、ネイマール・ヂアス(Neymar Dias|ヴィオラ・カイピーラ)、ルリーニャ・アレンカール(Lulinha Alencar |アコーディオン)、ブレー・ホザーリオ(Bré Rosário|パーカッション)、アドリアーナ・オルツ(Adriana Holtz|チェロ)、ヴァナ・ボック(Vana Bock|チェロ ※チェロの2人は「Duo Imaginário」より)というチームです。また、テコ自身がフルートを演奏し、ドリ・カイミはギターの演奏だけでなく、アレンジも担当しました。
e-magazine LATINAは、このアルバムの制作過程をより詳細に伝えるために、ドリ・カイミとモニカ・サウマーゾへの特別インタビューを行い、2人に、音楽、ブラジル、新しい世代、芸術について話してもらいました。ロング・インタビューなので、前編・後編に分けてお送りします。
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出会い、パウロ・セーザル・ピニェイロ、ブラジルの伝統音楽、政治
⎯⎯ あなたは、最初にドリ・カイミの音楽を最初に聴いた時のことを覚えていますか?
モニカ・サウマーゾ ドリ・カイミが誰なのかを知る前から、彼の音楽を耳にしていました。なぜなら、彼は「Sítio do Picapau Amarelo」「Tenda dos Milagres」「Modinha para Gabriela」といった私の身体の一部となったテレビ・ドラマで音楽を担当し、その中で、アレンジし、作曲し、歌っていました。音楽を勉強し始めた時、サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)の2枚のアルバムと出会いました。『O Som Brasileiro de Sarah Vaughan』『Brazilian Romance』です。それらのアルバムに、ドリの楽曲が収録されていました。でも、当時、ドリはロサンゼルスに住んでいて、ドリのアルバムをブラジルで見つけるのは難しいことでした。サラ・ヴォーンのアルバムに夢中になっているちょうどその時に、ドリがブラジルにコンサートをするためにやってきました。アルバムに収録されている曲をライヴで聴いて、私は狂喜乱舞しました。私は必死で彼のレコードを探すようになったのです。
⎯⎯ ドリ、あなたはどうやってモニカ・サウマーゾの作品を知りましたか?
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