[2021.10]【シリーズ:ブラジル音楽の新しい才能⑤】 マジュール(Majur)
e-magazine LATINA によるブラジルのポピュラー音楽の中で頭角を現し始めた新しい才能を紹介するシリーズです。レポートは、ブラジル人音楽ジャーナリストのヂエゴ・ムニス。今回は、ブラジルの音楽的表象性を歌う2人の歌手を紹介します。
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文●ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)
マジュール(Majur|左)とイラン(Hiran|右)と満面の笑みのカエターノ・ヴェローゾ(中央)
2015年以降、リニケル(Liniker)やパブロ・ヴィタール(Pabllo Vittar)などが登場したことで、LGBTI+(Lesbian, Gay, Bisexual, Transvestite, Transgender, Intersexなどの呼称)のアーティストたちが、ブラジル音楽シーンの中で認知度を高め始めています。
その中でも特に活躍の場を広げているマジュール(Majur)とイラン(Hiran)は、作曲や映像作品の面で多様性をもたらし、カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)やマリア・ベターニア(Maria Bethânia)、イヴェッチ・サンガロ(Ivete Sangalo)といった有名な音楽家のファンも獲得しています。
ブラジルのポピュラー音楽史の壁を壊しながら、すでにその歴史に名を刻み始めている2人のアーティストを紹介します。
※ イラン(Hiran)編は近日公開します。
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Majur
身長1メートル95センチ。パワフルな歌声と迫力あるルックスで、3年ほど前からブラジルで注目を集め始めたマジュール(Majur)。歌手であり作曲家であり、最も将来性のある才能のうちの1人だと考えられているマジュールは、サルヴァドール郊外で生まれ育ち、5歳のときに、サルヴァドール・ユース・シンフォニー・オーケストラの合唱団に参加しました。
黒人であり、ノンバイナリージェンダー(自分が1つの性別のみには属さないと認識している人々)であることを認識しているマジュールは、夜のサルヴァドールで演奏するためのバンドを結成し、プロとしてのキャリアをスタートしました。
アフリカ系、R&B、ファンク、ソウル、MPBのリズムをミックスしたマジュールは、食の地区でありボヘミアンな地区であるバーハ地区のバーで歌っていましたが、2018年にリニケルのコンサートに出演し、人々の関心を集めるようになりました。
同年に、カエターノ・ヴェローゾがマジュールのファンであると公言。また、2019年、パブロ・ヴィタールも参加したラッパーのエミシーダ(Emicida)のトラック「AmarElo」で、パワフルなヴォーカルを披露したことで、認知度は更に高くなりました。
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