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[2023.4]KaZZma Canta GARDEL

文●吉村 俊司 Texto por Shunji Yoshimura

現在日本で最も活躍している男性タンゴ歌手のひとりであるKaZZma。様々なアーティストと共演して多くの公演をこなしており、最近では2021年のタンゴ・ケリード公演、2023年の小松亮太公演の二つの『ブエノスアイレスのマリア』に出演して強い印象を残した。その彼が最新アルバムで取り上げたのは歌のタンゴの王道、カルロス・ガルデルの作品。伴奏は福井浩気(ギター)と清水悠(ギタロン)のDuo Criolloである。

KaZZma, Duo Criollo『Canta GARDEL』


収録されているのはガルデル作曲、アルフレド・レ・ペラ作詞の代表作ばかり(③のみマリオ・バティステーラ共作)。それらに対し、KaZZmaは真っ向勝負の正統派アプローチで向き合う。様々なタンゴを歌ってきた経験が培ったフィーリングをベースに伸びやかで朗々とした歌声を響かせつつ、低音域では時折仄かな色気が漂うあたりが何とも魅力的。ガルデルに敬意を表しつつもことさらガルデルのスタイルに寄せるようなことはせず、現代に生きるタンゴ歌手KaZZmaとして歌い、表現している。

そして注目すべきは伴奏のDuo Criollo。ガルデルの時代から歌とギターの組み合わせは最もベーシックな歌のタンゴのスタイルであり、もちろんここでも伝統に従ってザクザクとコードで刻まれるリズムも聴かれる。一方でそれだけではない、いわばアップデートされたタンゴギターのスタイルがここにはある。特に③「場末のメロディ」での単音フレーズの多用や⑤「君去りし夜」での隠し味的に使われているブルース的な音使い、さらにこれらの曲でのリズム面でのアプローチはかなり「攻めた」印象を受ける。他にも美しいオブリガートやコードワーク、さり気なく挿入される別の曲の引用など聴きどころは多い。

実はKaZZma自身もギターは相当な腕前であり、ギター伴奏による歌のタンゴの新たな可能性についてはKaZZmaとDuo Criolloの双方に強い想いがあるのではないかと想像する。そして、そのようなアプローチにも揺らぐことのないメロディーの美しさに、ガルデル作品の時代を超えた普遍性を再認識する。そんなアルバムである。

(ラティーナ 2023年4月)

本作はラティーナオンラインでも発売中!

◆ライブスケジュール
 ・4/29(祝・土)開演15時 エル・チョクロ

 ・5/28(日)OPEN14:00 1st15:00 2nd16:10  大塚GRECO

KaZZma ~Canta GARDEL~レコ発ライブ!
KaZZma/vo
福井浩気g
清水悠g

¥3800(季節の一品付き)


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